因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

TABACCHIプロデュース「40Minutes」

2014-03-22 | 舞台

*公式サイトはこちら スクエア荏原/ひらつかホール 24日まで
 「演劇界において受賞歴があり、尚且つ勢いのある人気と実力を兼ね備えた3団体(電動夏子安置システム、劇団チョコレートケーキ、JACROW)が、持ち時間40分を使って共通のテーマ「サムライ」というキーワードをどう表現していくのか?」(公演チラシより)という企画だ。
 40分×3劇団=120分を一気にみせ、観客の投票によって選ばれた団体には賞金100万円が進呈されるという、なかなか豪気な試みである。スクエア荏原は客整数360あまり、紀伊國屋サザンシアターに似た雰囲気の立派なものだ。
 参加団体の演目は、上演順に以下のとおり。

劇団チョコレートケーキ (1,2,3,4
 古川健作 日澤雄介演出 『〇六〇〇猶二人生存ス』
 太平洋戦争末期、海軍の特攻兵器として開発されたのが人間魚雷「回天」である。昭和19年9月6日、2人の海軍大尉が訓練中に回天に閉じ込められた。実際に起こった事故をもとに、極限状態に置かれた人間の最後の時間を描く。

☆JACROW (1,2,3,4,5,6,7,8,9
 中村暢明脚本・演出 『刀と天秤(はかり)』
 1997年に起きた「東電OL殺人事件」を芝居にしようとしている劇作家が登場し、彼が進行役となって、事件の真相に迫る。

電動夏子安置システム
 竹田哲士作 中山隼人演出 『召シマセ腹ヲ』
 電動夏子安置システムは今回が初見となった。劇団ウェブサイトによれば、「ロジックコメディ」と称される手法が特性とのことだ。まったく想像のできない劇団名の由来など、主宰である竹田哲士の挨拶を読んでもよくわからないのだが(苦笑)、「哲士」というお名前は、近所の神社の神主さんがつけたという結びには妙に納得できたり。

 保守本流を掲げる「新党もののふ」は、わずか5名の弱小政党である。通常国会の会期中、党幹事長である国防大臣が過激な発言を連発、さらに対立する大臣の公用車と交通事故を起こしてしまう。火消しに躍起になる党事務所に、どうみても中華の出前のような男がいる。

☆『〇六〇〇猶二人生存ス』
 脱出不可能と知った2人の大尉は、この事故を今後の回天の開発に役立てられるよう、遺書がわりの記録を記した。タイトルは午前6時零分、なお二人は生きているという意味である。
 ステージ上手に回天内部に閉じ込められた大尉たち(西尾友樹、岡本篤)がほぼ動かず、下手には回天の整備士(浅井伸治)が立つ。出発前の大尉たちと整備士の会話、敗戦を迎えた日のことなどが交錯しながら、刻一刻と死に近づいてゆく様相を描く。
 こちらまで息苦しくなるような物語だが、2人の大尉はほとんど取り乱すこともなく、端然と死を迎える。しかしそのことが、これから回天に乗りこまんとする後輩たちにどのような影響を与えたかという複雑な投げかけも含むのである。
 死に赴く人と、生きつづけている人が時間と空間を異にしながら交わる様相を、もっとみたい気がした。また今回の劇場は広過ぎたのではなかろうか、3劇団のなかでは残念ながらマイナス面を際立たせてしまった。
 回天の2人の台詞はマイクを通しているように聞こえたが、それでも聞きとりにくいところが多かった。たとえばリーディングというかたちでの上演など、ぜひもう一度出会いたい演目である。

 

 ☆『刀と天秤(はかり)』
 当日リーフレットには3つの劇団主宰の挨拶文や作品説明などが掲載されている。本作については、この作品説明の段階で何度もつまづくことになった。
「(事件をモチーフに)被害者渡邊泰子を描きます」の一節。たしかに殺されたのであるから、彼女は被害者である。しかしこの段階で被害者と括るのは種明かしをすること、舞台をみる観客が想像しようとるす意欲を削ぐことになりはしないか。また同劇団の公演においても、どうようの記述を何度か読んだ記憶があるのだが、被害者の冥福を祈り、事件の早期解決を願うという結びである。実際に起こった事件をもとに演劇をつくるとき、事件に巻き込まれ、関わった方々に対して謙虚な姿勢でのぞむことは大切だ。しかしこの一連の文章を、筆者はすんなりと受けとめることができない。なぜここで言ってしまうのか。
 というのは、じっさいの舞台から冥福の祈り、被害者への供養、解決への願いといったものが感じられないためである。ないからだめだというのではない。なくてもいいのではないかとすら思う。かんじんなのは、実際に起こった事件を作り手がどのようにとらえ、舞台に構築しようとしているのか、何を伝えたいか、訴えたいかである。

 劇中、主人公(蒻崎今日子)は舞台上で何度も衣裳を着替える。そのたびに黒い下着すがたをさらし、ときにはその格好のままで母親と会話したりする。なぜこういう見せ方をするのか。劇の進行役をつとめる劇作家の扱いにも疑問がわく。彼は事件の概要や主人公の家庭環境などを要領よく解説し、「ではこれからその場面をはじめます」と言って袖に引っ込む。「照明さんお願いします」とスタッフに指示を出したり、衣裳を替えて劇中の人物として登場するところもある。舞台上で着替えるとき、客席に向かって、「ちょっと失礼します」と断ったりする。そのひとつひとつに筆者はつまづき、終幕で劇作家が主人公に向き合って、「あなたは幸せですか」と問いかけたのにも著しく興を削がれた。

 作者は演劇において、何をみせようとしているのか。何をしたくて経済効率の悪い演劇をつくっているのかを根本から考え直したほうがよいのではないか。作り手がやろうとしていることと、こちらが求めていることの「ピントのずれ」が大きすぎる。リアルな表現を追求し、濃厚な空気を観客にも体験してほしいなら、劇の構造はもちろん、俳優の演技、人物造形など、さまざまな面において、もっと深い掘り下げ、違う方向から描くことが必要だ。何より作り手はもっと気持ちを抑制して、観客の想像力を喚起させてほしい。

☆『召シマセ腹ヲ』
 40分がもっとも短く感じられた演目である。ドリフターズを連想させるドタバタコントがこれでもかと炸裂する。新党もののふの幹事長の問題発言や対抗政党の大臣との交通事故に愛人スキャンダルが絡み、謎の出前男の正体など、話はなかなか複雑だ。早口の台詞のせいもあり、おそらく正確に理解、把握できなかった。3劇団のなかでは、もっとも会場に適したつくりの演目だっただけに残念だ。

 頼りない3人の政務官が、女性広報官に作らせた想定問答のメモを見ながら会見する場面は圧巻であった。これには広報官の策略があって、会見は大混乱に陥る。最後の最後、与党副幹事長から「きみ、次の選挙にウチから出ないか?」と打診され、広報官が「お願いします!」と最敬礼した瞬間、いや一瞬早かったか、一気に幕を閉じる手並みに舌を巻く。
 この劇団さんはぜひ本公演を拝見したい。
 

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