*矢野靖人構成・演出 公式サイトはこちら アトリエセンティオ SENTIVAL!2012参加作品 27日まで (1,2,3,4,5,6)
shelfが目指すもの、上演までのプロセスについては主宰の矢野靖人のブログに詳しい。
年に2回春と秋のアトリエセンティオ通いは数年前から恒例になった。
夜の北池袋。銭湯を通り過ぎ、美容室の店内にヘッド(というのか、マネキンの頭部のようなもの)が並んでいるのをみると、ああセンティオへ行くのだと実感し、そしてこのあたりでいつも道に迷ってセブンイレブンから引き返すのだった。
開演15分まえに開場、なかに入ると俳優陣はすでに板付き、早くも張りつめた空気が漂っているのも恒例だ。それでも客席は適度に華やぎ、リラックスしているのが不思議だが、shelfの活動に共感し、応援する方々の作りだす雰囲気だろう。
1年前の[untitled]に引き続き、複数のテキストを集めて再構成するものだ。戯曲だけでなく、演説や小説やエッセイなども含まれる。紙面にある言葉のかずかずが俳優の肉体と肉声を通してどのように変化し、劇世界を構築するのか。
主軸はソフォクレスのギリシャ悲劇『アンティゴネ』だが、アーシュラ・K・ル=グウィンの『左ききの卒業式祝辞』も強い印象を残す。ほかにはイプセンの『人形の家』、太宰治の『かすかな声』、保坂和志の『魚は海の中で眠れるが鳥は空の中では眠れない』、伊丹万作の『戦争責任者の問題』の計6点によって構築されている。
当日リーフレット記載の矢野靖人の「ご挨拶にかえて」に、自分たちがどのような方向性でどんな舞台を作ろうとしているかが非常に理路整然と明晰に記されており、大変わかりやすい。
頭と心で理解して舞台に臨んだところ、これがなかなかに手強く、そうそうにつまづくことになった。俳優の強度や緊張感は並大抵のものではなく、とくに川渕優子はいつもながら圧倒的にすばらしく、終幕になって再度語られる卒業式の祝辞には胸をうたれる。
戯曲だけでなく、小説や演説が使われても構わないが、やはり1本筋の通った「戯曲」に取り組む舞台がみたい。自分は「テキスト」ということばを適切に使えないのだが、それは「戯曲」が作り手によって「テキスト」に変容したときの違和感のためであり、戯曲とテキストを同等のことばとして使うことには抵抗がある。
戯曲、俳優の存在、それに観客が加わって、ほかのどこでも体験できない舞台空間が生まれること。これが自分がshelfの活動に探し求めるものなのだ。
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