因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ala CollectionシリーズVol.2岸田國士小品選

2010-01-25 | 舞台

*岸田國士作 西川信廣演出 公式サイトはこちら 新国立劇場小劇場 24日で終了

 ala Collection(アーラコレクション)シリーズは、岐阜県可児市において俳優やスタッフが舞台を制作し、可児市から質の高い作品づくりを全国に発信することを目指すプロジェクトで、今回も可児市文化創造センターでの公演に続いての東京公演である。可愛らしい四つ折りの当日リーフレットには、同センターの館長兼劇場総監督である衛紀生や可児市長山田豊の熱いメッセージが掲載されている。演出の西川信廣は「今回の作品は、東京では出来難くなった芝居の一つです。可児市だから出来た芝居です。可児発の『大人の芝居』をじっくりとお楽しみください」とのメッセージ。可児市民が演出家や俳優を自分たちの町に迎え、市民のサポートによって生みだされた舞台だという作り手側の並々ならぬ思いの数々に、寡聞にて同センターのことを知らなかった自分は戸惑った。

 関東圏、それも東京、横浜を中心にした観劇生活を送っていると、「この劇場ならではの舞台」「この町だからこそできた公演」という感覚が鈍くなっているのかもしれない。その劇場のカラー、企画性が色濃く感じられる舞台なら、昨年終了した「横濱・リーディング・コレクション」がまっさきに思い浮かぶ。何回めの公演であったかアフタートークにおいて、「横浜といっても(東京からみれば)アウェーな感じですね」という発言があり、場内に苦笑いが広がったことを思いだす。

 自分が単純に「岸田國士の作品をみたい」だけで足を運んだことに、少し申しわけないような気持ちもあったが、まずは目の前の舞台に集中する。正直なところ、舞台からは「まさにこれは東京では上演し難い作品だ」という確かな印象は感じなかった。やはりその町の、その劇場に身を置いてこそ感じられる何かがあるのだろう。

 結婚一年めの夫婦が気だるくすごす日曜の昼下がりを描いた『紙風船』は、遠目にも若くは見えない(ごめんなさい、でも嘘は言えない)夫婦(若松泰弘/文学座、麻丘めぐみ)が演じていることに戸惑う。まだまだ新婚と言ってもいいくらいの夫婦が既に互いの存在を重苦しく感じており、しかし相手がいなくなることを考えると恐ろしくなる・・・という矛盾に満ちた日常を描くには少々無理があったのではないか。若松、麻丘の夫婦をみていると、結構な年齢まで独身生活を謳歌してようやく結婚したものの、自分ひとりのペースが抜けきれなくて、夫婦ふたりで過ごす日曜を持て余している様子にみえた。それはそれで興味深いのだけれど。

 お見合いをした娘とその母の会話劇『葉桜』では、音無美紀子が母親を、その音無を母に、俳優の村井国夫を父に持つ村井麻友美が娘を演じる。実のおやこが舞台でもおやこを演じるわけである。この配役もいまひとつピンとこなかった。歌舞伎などの伝統芸能で父と息子、孫が共演するのはまだしも、現代劇において実際のおやこが舞台の設定もおやことして共演することが、その作品において重要か、必要であるかは、もっとシビアに考えなければならないのではないか。むろん今回の配役がどのような事情や過程で決まったのかを自分は知る立場ではない。だいぶ前になるが、同じ新国立劇場小劇場において、寺山修司の『マッチ売りの少女』が上演されたとき、母親を富司純子、娘だとなのる女を寺島しのぶが演じたことを思いだす。実際に母と娘である俳優どうしが同じ舞台にたち、しかも劇中で一方は「わたしはあなたがたの娘だ」と主張し、相手は「そうではない」と拒絶するわけで、特別な演劇的効果を狙ってその配役にしたのか、そして充分に成果をあげていたかは難しい。今回の『葉桜』のように、ひねりのない設定なら尚更であろう。

 さらに3本めの『留守』が終わってカーテンコールのとき、音無美紀子が娘の村井麻友美と手をつないだり、肩を抱いたりしている様子に、微笑ましいというより得も言われぬ「引き感」を持ってしまった。愛する娘が自分と同じ俳優になり、同じ舞台にたてるというのは親にとって感無量、大変な幸せであるだろう。こんなことを考えてしまう自分が狭量で冷たいのかもしれないが、「実のおやこが舞台でもおやこを演じる」ことがウェットに出てしまい、作品そのものの魅力を削ぐことになっていないだろうか。

 きついことを書いてしまった。企画を立ち上げ、上演が実現するまでには想像もできないほどのさまざまな困難があるだろう。しかし自分は現場の、業界の事情を知らず、目の前の舞台しか目にすることができない。だからこそ、「これほどの舞台を作り上げるのに、いったいどんな活動をされたのだろうか?」と関わった方々の労苦や喜びを是非とも知りたくなるような舞台をみたいのである。

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