因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

新宿梁山泊創立30周年記念第4弾 第62回公演『少女都市からの呼び声』

2018-03-24 | 舞台

唐十郎作 金守珍演出 公式サイトはこちら 芝居砦満天星 31日まで1,2,3,4
 本作は1985年、唐十郎が状況劇場若衆公演のために書き下ろしたもの。新宿梁山泊では1993年の初演を皮切りに、国内だけでなくフランス・アビニョン演劇祭はじめ、カナダ、オーストラリア、アメリカ、韓国でも上演を重ねている劇団の財産演目だ。自分は今回が初見である。

 天涯孤独の田口が手術を受けようとしている。その体内から取り出された長い黒髪の正体は?田口が迷い込んだ夢の世界には、生まれなかった妹の雪子がいる。兄は妹を連れて逃げたい。雪子をガラスの人間に作り替えようとするフランケ醜態博士との攻防がはじまる。

 物語の輪郭がはっきりしており、流れがよくわかる。上演時間が唐作品のなかでは短めの1時間40分であることも、見る側の心身にとって向き合いやすい。

 雪子は兄の意識の中に存在する妹である。見る人を惹きつける魅力を持ち、それは容姿容貌のみならず、あるときは劇世界を牽引し、かと思うと錯乱させ、翻弄する。コミカルな場面もあり、向き合うのは百戦錬磨のベテランたちとなると、若さゆえの拙さや脆さもあまり許されまいと想像する。若く瑞々しく、それだけに残酷であること。魑魅魍魎の異形のものたちと堂々を渡り合わねばならない。厚かましいほどの度胸と力強さが必要だ。そして雪子役は実年齢が若い女優であることが必須ではないか。

 今回抜擢された清水美帆子は、劇後半に台詞の語尾が聞き取れないところはあったものの、兄が追い求め、フランケ醜態博士が執着し、有沢が翻弄され、その婚約者に嫉妬されるにふさわしい雪子を大健闘していた。

 唐十郎作品がテントで上演される場合、終幕はテントの奥が開き、物語も人々も外界の日常に晒される。その瞬間の感覚はもう何ものにも代えがたい魅力があって、それを味わうためにテントへ通うといってもよいくらいである。しかしながら、芝居砦満天星はその逆だ。天井が低く、狭い劇場は外の世界の音や空気から遮断された穴倉のような空間である。それだけに駅からお寺や墓場を通って団地の地下2階まで降りること、2時間余を異空間に身を置いたあとで、地上に出たときの解放感と、それに矛盾するかのような不安定な心持も、訪れるものを病みつきにさせる。

 本公演の当日リーフレットには『少女都市からの呼び声』初演以来の上演歴が記されている。それを読むと、梁山泊が本拠地の満天星と、新宿・花園神社の特設紫テント、さらに通常の劇場でも公演を行っていることが歴然だ。あくまでテント上演にこだわる劇団唐組との大きな違いであり、唐十郎から生れ出た2つの劇団が、これからどのような歩みを続けるのだろうか。

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