因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

劇団フライングステージ第43回公演『LIFE,LIVE ライフ、ライブ』

2017-11-08 | 舞台

*関根信一作・演出 公式サイトはこちら 下北沢/OFFOFF劇場 12日まで(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17)
  劇団フライングステージは、旗揚げから25周年を迎えた。全作品の作・演出をつとめ、俳優として出演もする関根信一は、当日リーフレットの挨拶文において、一昨年、昨年に続く今年の新作までのいきさつや、新作上演のあいだを縫うように行う1996年初演『陽気な幽霊 GAY SPIRIT』、2005年初演『二人でお茶を TEA FOR TWO』のドラマリーディングについて、これまでの作品を見たことがある人はもちろん、はじめてフライングステージの舞台を見る人にもわかりやすく、思いを込め、しかし決して感傷に流されることなく記している。

 2015年11月に始まった渋谷区と世田谷区の同性パートナーシップ申請(世田谷区は宣誓)をモチーフに、同性婚によってより幸せに生きること、救われる人々を描いた2015年の『Friend,Friens 友達、ともだち』、同性婚がひとつのモチーフにはなっているけれども、そもそも結婚とは何か?という問題を、親とその子どもたちの関係に広げて描いた2016年の『Family,Familiar 家族、かぞく』
 そして両方の作品で登場人物の台詞のなかに登場した「ゲイの行政書士」を主人公に繰り広げられるのが、今回の『LIFE,LIVE ライフ、ライブ』である。

 3作品を振り返ると、題名の形式や登場人物たちの関係性など、「同性パートナーシップをめぐる3部作」の趣である。1作だけでもじゅうぶんに楽しめる独立性を持っているが、続けて3作を見ることができたのは嬉しいことである。人物の名前や関係性、話の流れがいささか混乱することもあるが、観劇の妨げにはならない。

 中盤で、息子がゲイであったこと、それを自分だけ知らなかったことに怒り、受けとめきれずに悩む母と、ゲイの息子が(おそらく)自死した母が語り合う場面がある。ここまで重いエピソードはこれまでの作品でも記憶になく、その母も病を得る。「死」への意識によって、濃厚な作品に変容していることが本作の特徴のひとつと言えよう。

 息子のセクシュアリティへに苦悩する母たちが語り合う場面は、過去作品にも似た場面があった。2011年の『ハッピー・ジャーニー』である。しかし自分の心に沸き起こったのは既視感というより、あのときのふたりの母に再び会えた懐かしさであり、本人はもちろん、家族の悩みは尽きることがないこと、それでも差し伸べられる幾本もの手があることの希望であった。

 終幕、遂に同性婚した男性カップルが、ゲイだと虐待された少年を養子に迎えることになった。その子がはじめてやってくる日、親になるふたりはもちろん、さまざまな流れでつながった人たちほぼ全員が集まり、到着を待つ。玄関のチャイムが鳴った。新しい父親が呼びかける。「コウジくん、こっちだ」。不器用でも精一杯生きる人々の温かな交わりに、新しい仲間が加わる瞬間、本作は幕を閉じる。
 ここで不意に、数年前亡くなったフライングステージの俳優早矢瀬智之の面影が蘇った。少年の年齢については明記されていないが、実際に少年が登場しないからよいのであって、仮に子役だとしても興ざめであろうし、いくら少年や若者役が多かったとは言え、早矢瀬が演じるには無理がある。しかし自分は今日この舞台に彼がいるような気がしたのである。

 劇団の四半世紀の歩みのちょうど半分あたりから、客席に身を置くものとして、ともに歩んだという実感があり、口幅ったいのを承知で言えば、それを大変な幸福であると喜び、感謝しているのである。

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