因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

劇団肋骨蜜柑同好会第11回公演『ダブルダブルチョコレートパイ』ビター篇

2019-08-06 | 舞台

フジタタイセイ脚本・演出 公式サイトはこちら 千歳船橋/APOCシアター 12日まで1,2,3,4,5,6,7,8
 昨年から劇団肋骨蜜柑同好会と主宰のフジタタイセイの活動は大変な勢いだ。作・演出の公演が
12月1月にあり、しかも1月公演は3つの座組による松竹梅トリプル上演。3月は盟友・窪寺奈々瀬との二人芝居、4月は「さよなら平成記念イベント」を走り切り、6月の日本のラジオ公演『カケコミウッタエ』で、フジタは主演を務めている。

 そして今回の『ダブルダブルチョコレートパイ』だが、改めてチラシを見るに、これは実に大変な企画なのである。ミルク篇とビター篇の二通りの座組が交互上演を行う。単純に言えばミルクは男優、ビターは女優が出演し、合わせると20名を超える。因幡屋は本日ビター篇を観劇して驚いたのは、物語がミルク篇とリンクしていることだ。

 舞台は近未来。宇宙船に乗った人々の様子が描かれる。船は男性と女性別々になっており、わずかに電話のやりとりができるだけだ。船の権利者というのが大銀行の頭取で男性側、その元妻である華道家元が女性側の船にそれぞれ乗っている。乗客の顔ぶれはさまざまだが、頭取や家元の家族や部下的な者がいることもあって、互いの力関係や立ち位置は微妙である。

 上演中ゆえ詳細は書けないが、女性ばかりが乗っているビター篇を見ながら、同時に女性たちの会話や電話のやりとりから、男性側のミルク篇の話も絡んでくるという複雑な構成なのである。フジタタイセイは、新作2本の戯曲を書いて演出し、しかもそのどちらにも出演している。俳優としての出番は少ないものの、どのような経緯で執筆したのか、稽古の段取りはどのように行ったのか等々、フジタ自身はもちろんのこと、座組の俳優、スタッフ方の労苦は想像を絶する。

 物語冒頭、シャンパングラスを持って船内ロビーにやってきた女性たちは「はじめに言葉があった」と、新約聖書のヨハネによる福音書を語り始める。彼女たち、あるいは彼らが乗った船はノアの箱舟のようでもあり、ビター篇にはクリスチャンの哲学者が乗っており、さらに深読みすれば、サブタイトルの「ビター篇」の文字が「編」ではなく、聖書の「詩篇」の「篇」から取ったのかとも思わせる。

 上演時間は95分だが、つぎつぎに登場しては捌けていく10人の女性たちの名前や職業、背景を把握すること、SF風の設定を飲み込むことがいささか難儀だったこともあり、じゅうぶんに受け止められたとはいいがたい。しかし終演後、上演台本(2本とも収録で1000円はお値打ち)を購入。帰りのバスのなかで矢も楯もたまらず、食いつくように読んでしまった。さきほど見たばかりの舞台の印象、台詞などが音を立ててこちらに迫ってくる。これはもう、ミルク篇も見ないわけにはいかない。

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