因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

鵺的トライアルvol.2『天はすべて許し給う』

2018-02-10 | 舞台

高木登作1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15マキタカズオミ(elePHANTMoon)1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11演出 公式サイトはこちら コフレリオ新宿シアター 13日で終了。

 デートレイプ・ドラッグを使って、知人の中学生の娘にいかがわしい行為をしていた男性の新聞記事を読んだ。彼は同じような嗜好の男性たちとネットを通じて情報を交換し、さらには盗撮した女性たちの写真を交換していたというから、今回の舞台のように、ストーカー同士の交流サイトがあっても不思議ではない。

 ここまでひどい男がいるのか、いくら何でも極端すぎないかといった、現実と比較して、どこまでリアリティがあるのかということは、もはや問題ではないと思う。現実に同じような性癖の男性が存在するのか、過去に同様の事件があったのか、何かベースにする事柄があったのかといったことはさておき、今、観客の面前にいるのはストーカー行為でしか自分の愛情表現をなし得ない男たちと、彼らに苦しめられ、立ち上がった女たち、彼女たちを助けようとしてはいるものの、実はもっとも厄介かもしれない男、合わせて10人が繰り広げる壮絶な戦いである。受けとめるしかない。

 劇団員、客演陣ともに、俳優としての個性はもちろん、もしかすると性癖まで知った上でのキャスティングではないかと思わせるほどの布陣である。

 特に小劇団の主宰者役の小西耕一。彼はある女優に片思いしている。小劇場界についての視点や、俳優の捉え方についてはもっともなところがある。彼の女性への愛情は純なものであるが、相手は彼に恋愛感情を抱いていない。女性として女優として相手を案じているというあたりの実に複雑な心模様の表現が絶妙なのである。彼があんな劇団に出るのやめなよ、ラゾーナ川崎なんて云々と彼女を説得する場面のぞくぞくするようなおもしろさは言葉にできない。彼はしばしば「あの志穂ちゃんね」と呼びかける。彼はまちがいなく愛情表現として「志穂ちゃん」と優しくちゃん付けで呼んでいるにもかかわらず、聞く方にはこれ以上ないほどおぞましいのである。これは小西耕一という俳優の個性を知り抜いている劇作家と演出家による傑作と言ってもよいほどの造形であり、それに応える小西耕一の力量であろう。

 むろんこれは、小西に対して女優役の堤千穂が心憎いまでの応答の演技をしているからにほかならない。美しさや色気がすべて負の方向に動いており、彼女が美しく、色っぽく魅力的に見せれば見せるほど、頭が空っぽに見えてしまうという、恐ろしいまでの副作用に息を吞むばかりなのである。小西さん、堤さん、こんなこと書いてごめんなさい。非常に見応えがあったということなのです。

 最後に女たちは凶行に及ぶ。この結末には賛否あるだろう。彼女たちが正しいのは確かであるが、こうすることによって男たちと同じ暗黒の領域に踏み入ってしまったことは否めない。まっとうに正義を訴えるものを見たいのではなく、すっきりしないこと、あくまで後味の悪く、暗いところを味わう楽しさを知っているけれども、もしかしたらもうひとつ、別の展開もあり得たのではないか。
 ここまでくると無いものねだりかもしれないが、これほど濃厚で残虐なものを示されてなお、「もっと見たい」と欲深になれるのは、観客として幸せなことだと思うのである。

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