因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

文学座『岸田國士傑作短編集』

2011-11-04 | 舞台

*岸田國士作 西川信廣演出 公式サイトはこちら 紀伊國屋サザンシアター 13日まで
 このところ舞台をみたり戯曲を読んだり、触れる機会の多い岸田國士の作品(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13)を、いわば「本家本元」の文学座が上演する。
 海水浴を楽しみに海辺の旅館にきたが連日雨に降り込まれて退屈する夫婦の会話劇『明日は天気』、姉夫婦の家に、新婚旅行先からただならぬ様子で妹が駆け込んでくる『驟雨』、避暑地の別荘に逗留する高級官吏の一家が小間使いの娘に翻弄される『秘密の代償』の3本立てだ。

 サザンシアターの奥のいっぱいに、クリムトの『接吻』をモチーフにした壁画のような舞台美術が組まれ(奥村泰彦)、中央の演技エリアは芝居の設定にあわせて旅館や洋間、おもてのあずまや、寝室などに変わる。『秘密の代償』では、劇中に舞台転換が何度もあるが、転換の手さばきはまことに速やかで自然である。

 自分は前よりの席で俳優の表情の細かい変化も堪能できたが、客席が前後に長いサザンシアターの後方座席ではどうだったであろうか。俳優の声量や演技が劇場に合わせて大きめになっているとはほとんど感じなかったからよけい、もう少しこぢんまりした劇場で俳優の息遣いや眉の動きひとつまでじっくりみつめたいものである。

 ずいぶん前になるが、俳優座プロデュース公演の久保田万太郎作品に出演していた名越志保を思い出す。以前女中として働いていた商家を久しぶりに訪れた。そこの女主人と語らい、「この座敷でいっしょに食事をしよう」と誘われたのに、「奥さまと同じ席ではもったいない」と、女主人にお辞儀をし、膳を抱えて立ちあがり、いったん膳を置いて座って襖をあけ、そこでまたお辞儀をして退出する・・・という動作をゆっくりと、惚れ惚れするほど美しく演じていたことを思い出す。現代の生活様式ではもうみることができない、従ってすることもできない控えめで慎み深い所作の数々である。
 その名越さんが今回の『驟雨』では実に堂々たる奥さまになっていて、文学座女優筆頭の本山可久子さん(この家の家政婦役。何と贅沢な配役か)に「早く支度して頂戴」と命令しているのに少しびっくりいたしました(笑)。

 岸田國士の作品をひとつみるたびに他の作品へのつながりがさまざまに想像できて、とても興味深い。今月の「古典戯曲を読む会」が楽しみになってきた。

 

 

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