因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

板橋ビューネ2015 Cプロ『Guernica』&『gravity』

2015-10-14 | 舞台

*公式サイトはこちら サブテレニアン 13日まで 札幌バージョンは10月17-18日 札幌市のアトリエ阿呆船にて楽園王、テアトロ・マアルイin風蝕異人街、雲の劇団雨蛙、FAP’S企画の公演あり
 AプロBプロにつづくCプロには、フェルナンド・アラバールの作品が並んだ。いずれも2014年に活動を開始したばかりの劇団である点も興味深い。

7度 『Guernica』 伊藤全記演出
 会場に入ると、「ようこそ、いらっしゃいませ~♪」と山口祐一郎ばりの美声のお出迎えが。「足元、お気をつけくださいませ~♪」。いささか苦手な趣向である。
 スペイン内戦で爆撃にあった老夫婦の物語。妻が瓦礫に埋もれているために、お互いのすがたが見えないという設定だ。夫は懸命に妻を助け出そうとすることはするのだが、すでに二人はこの世ではない別のところにいるようでもある。当日リーフレットの配役表をみると、夫は青年/ファンチュウ、妻は花1、2、3と記されている。青年は、おそらく何らかの意図や意味を持たせたのであろう、特殊な発語をする。それに対する花たち3人は、顔の上半分を花で覆い、表情が見えない。そして野菜の入ったボールの置かれたスタンドの元にうずくまり、サラダ菜やにんじんを手づかみで食べながら、奇妙なメロディで歌うように台詞を言う。観客を出迎えた男性は、「アーティスト」と配役されており、劇中ずっとパソコンを操作しながら、ときおり歌ったり。

 この趣向が原作の意図を伝えるために必要で的確であるのか、客席が
たしかな手ごたえを得られたかどうかは、何とも言えない。伊藤全記は当日リーフレットの「ご挨拶」において、本作の背景となったスペイン戦争だけでなく、戦乱の絶えないこの世の現状に対し、劇中夫がつぶやく「進化」ということばを取り上げ、「人間は果たして進化しているのでしょうか?」と問いかける。題名にもなったピカソの『ゲルニカ』、井の頭線とJR線の連絡通路に掲げられた岡本太郎の巨大絵画『明日の神話』を例にひき、「演劇なら何ができるか」を考えたのだという。
 その答が今回の舞台に明確に結実しているかどうか、前述のように筆者にはまだ理解がとどかないところが多々ある。だが伊藤全記と7度が模索しているものが何なのかをもっと知りたいと思う。この劇団の上演スタイルに、しばらくは違和感を持つかもしれないが、ある意味で慣れることもあろうし、表現やスタイルに左右されない、突き抜けた本質を見据えようとする観劇姿勢が鍛えられる可能性もあるからだ。

★EgHOST 『gravity』 
 アラバールの『ファンドとリス』、『祈り』をベースに、西荻小虎が作・演出した。告白しておくと、筆者はいずれも未読の不勉強である。少し調べてみると、
前者はアレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画『ファンド・アンド・リス』がよく知られており、「成就しない愛の物語」であり、アラバール自身と最初の妻のことがモチーフになっているとのこと。後者は若い男女の会話劇のなかに、人間の善悪、宗教に対する失意や空虚が描かれたもの。
 今回は一転、舞台は現代の日本になり、パン屋のおばちゃん、清掃の青年、病院勤めの女性、警官などが登場し、アラバールの名前も作品名もまったくかすりもしない。こういう趣向に気楽になれず、それどころか逆に困惑してしまうのは、今回Aプロ、Bプロとつづけて観劇してきた一種の「成果」であるとも。

 公演パンフレットに記載の劇団紹介に「硬質な身体表現と奇抜な上演スタイル」とあるが、これはむしろ7度のことではないかと首を傾げるくらい、今回の『gravity』はこれまであまた見てきた小劇場演劇の雰囲気のものであった。アラバールをよく知る方であれば、『gravity』の舞台からさまざまなものを受けとめ、考察することができるのかもしれないが・・・。

 以上で3日間の板橋ビューネ2015の観劇が終了した。ヘアピン倶楽部以外はすべて初見の劇団であり、劇団名、主宰のお名前も寡聞にして存じ上げぬ方ばかりである。いずれもこれまでの舞台を見のがしたのが残念であり、同時にこれからはできるだけ足を運び、その歩みを知りたいと思える劇団に出会えたことは、大変な幸運であった。

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