因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

東京乾電池4月の月末劇場『フーミンアイス/命を弄ぶ男ふたり』

2009-05-03 | 舞台

 公式サイトはこちら 新宿ゴールデン街劇場 4月30日で終了。

 竹内銃一郎の『フーミンアイス』で幕開け。冷蔵庫と小さなテーブルのある部屋で若い女が二人(モリナガ/太田順子 グリコ/深堀絵梨)してボールの中身をかき混ぜている。一人は片手に黒い手袋をしている。義手なのだそうだ。毎日アイスクリームを手作りし、それを食べないと眠れないのだと。もう一人は久し振りに彼女を訪ねてきた友人なのだが、二人の間柄や過去については、多少台詞によってわかるところもあるが、細かいやりとりや二人の様子によって少しずつ明かされるわけでもなく、謎めいた不条理劇の味わいがある。

 劇的に盛り上がるところもなく、いささか唐突な結末を迎える。俳優にとってはしどころの難しい作品ではないかと思う。本作だけを取り上げて考えるのは少し難しく、今月末上演予定の同じく竹内銃一郎作『伝染』に向けての助走になる予感がする。

 2本めの岸田國士『命を弄ぶ男ふたり』は、これまで別のカンパニーで2回みたことがある。線路に身を投げようとする眼鏡男と包帯男が、互いの境遇をめぐって議論を戦わせた揚句、死なずに引き揚げる話である。舞台は夜更けの線路わき、屋外で起こる話であるが開放感はなく、どこか外界から隔離された小さな空間のなかで男たちがじたばたしている印象があり、たとえば『驟雨』や『屋上庭園』のように、日常的な空間で現実的な言葉のやりとりを丁寧に積み重ねるものとは異なる雰囲気の作品である。どこか現実離れしており、寓話的でもある。それだけ作る側にとってはどんな舞台美術にするかという段階で、力量やセンスが試されることでもあり、同時にさまざまな遊び心や冒険的試みも可能であると想像する。

 これで3回めの『命を弄ぶ男ふたり』になったわけである。それぞれに工夫をし趣向を凝らせた舞台だったが、何度みても捉えどころがなく、男たちの事情はそれぞれに重たく複雑なものがあって二人とも真剣そのものであるのに笑いを誘う。かといって笑って済ませるには変にあとを引く感じがあって、毎回すっきりしない。月末劇場版はABC3組の俳優の組み合わせで上演されており、自分がみたのはB組(包帯男:伊東潤、眼鏡男:有山尚宏)であった。演じる俳優によって印象が変わる可能性を探る面も確かにあるが、逆に多少のことでは変化しない戯曲の手強さのほうが強く感じられ、しかもそれが何かを実感できず今回も残念な心持ちに。

 2本合わせても上演時間は50分くらい、ものたりなくて帰り道に伊勢丹に迷い込み、帰省のお土産と称してあれこれ散財してしまった。いやこれは自分の責任か。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本語を読む その2『さらば... | トップ | 稽古場プレヴュー公演 しず... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事