因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

劇団フライングステージ第45回公演『アイタクテとナリタクテ 子どもと大人のフライングステージ』

2019-11-01 | 舞台

第45回公演 関根信一作・演出 公式サイトはこちら 下北沢・OFFOFF劇場 11月4日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22 
 劇団うりんこに書き下ろした『わたしとわたし、ぼくとぼく』に続いて、子どもと大人のためのLGBT作品の主人公は、小学6年生の男の子たちだ。小学校最後の学芸会で『にんぎょひめ』を上演することになった。担任の先生が配役の希望を募ると、翔が人魚姫をやりたいと手を挙げる。驚くクラスメイトたち。親友の大河と悠生は、翔の夢を叶えようと協力を申し出るが、悠生は王子さまを演じたいのではなく、「王子さまに会いたい」と言い、大河の家庭には父親がふたりいる。6年2組の『にんぎょひめ』はどうなるのかを縦軸に、大河とふたりの父親との関係性の変容を横軸に進行する1時間と少しの物語である。

 10月23日に早稲田どらま館で同作品の「エンパク★こどもプログラム リーディング公演&トークセッション こどものためのフライングステージ」が行われたが、それからわずか1週間で大きく手を加え、物語の結末にいたる道筋を大きく変更したとのこと。これは「リーディング上演を踏まえて、キャストと話し合って見つけた結末」であるという(当日折込の関根の一文より)

 本作の重要な点は、子どもたちがそれぞれ自分のセクシュアリティを含むアイデンティティというものを、まだよくわかっていないことであり、「わかっていない」ことを言葉にし、互いにそれを認め合うことだ。LGBTのうち、に自分は◎◎であると明確に意識する以前の混沌と混乱、葛藤や右往左往をまるごと受けとめ、「そのままでいい」と包み込む作り手の眼差しである。

 改めて、本作の題名が「アイタクテとナリタクテ」であることを考える。王子さまに会いたいという悠生、人魚姫になりたいという翔。そして父親のパートナーを、校長先生に「お父さんです」と紹介できるようになった大河は、これから誰に会いたいと思い、何になりたいと願うようになるのか。大河たちの未来とともに、この舞台を見る子どもたちのこれからに対する希望に溢れる物語だ。

 これまでセクシャルマイノリティである当事者が中心にあり、そのありようを観客に伝え、強く訴えるという方向性を有していた作品が、当事者から少し距離を置き、LGBTについて次世代への継承を意識したものに変容していることを実感する。それはかつて子どもだった自分の心を見つけ出し、登場人物に投影しながら、もしかしたら悩みを抱えている今の子どもたちの心を受け止め、救うことにつながるのではないだろうか。

 本作のサブタイトルは「子どもと大人のフライングステージ」である。舞台を見た子どもたちが大人を導き、助けることもあり得るだろう。演劇の可能性とともに、人間の持つ可能性を信じたいと思う一日となった。

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