因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

演劇集団プラチナネクスト第20回公演『居心』

2019-11-29 | 舞台

*加納朋之(文学座)作・演出 公式サイトはこちら 中目黒キンケロシアター 12月1日終了 
 「演劇集団プラチナネクスト」とは、文学座が2009年開設した40歳以上を対象としたシニア向けの俳優養成コース「プラチナクラス」の卒業生が2010年4月、同座の演出家である西川信廣をアドバイザーとして旗揚げしたものである(この夏
『サクラノソノ』を上演した演劇集団「シックスセンス」の母体)。自分は2011年秋に第3回公演『岸田國士 森本薫短編集』を観劇して以来、さまざまなご縁があって今回の公演を拝見することになった。

 題名の「居心」は「いごころ」と読み、ある場所にいる時に感じる気持ち「居心地」と同じ意味があるとのこと。広辞苑には「主として江戸後期から明治期にかけて用いた語」とある。

 暇なときにやりたいことをやり、来たいときに来る。シニア世代の「ゆる~い朗読サークル」(公演チラシより)が、「振り込め詐欺撲滅大会」で披露した寸劇をきっかけに、本格的な演劇に取り組むことになる。心優しく辛抱強い指導者に加え、外部から招いた演出家は非常に手厳しい。容赦ないダメ出しにメンバーたちは自信を無くし、稽古場の空気も次第にぎくしゃくしはじめた…。

 第1幕は登場人物それぞれの背景やエピソードなども織り交ぜながら、芝居作りに苦戦するメンバーの様相が描かれ、休憩ののち第2幕では、本番の舞台の上演が行われる。いわゆる「バックステージもの」であり、特に第2幕は、ときははるか昔にさかのぼり、農耕と狩猟で自給自足の生活を営む村が数十年に一度の深刻な飢饉に見舞われる様子を描きながら、生産性の低い者、役に立たない者を排除しかねない現在の世相を反映させた意欲作である。残念なのは、自分の観劇日、第1幕部分いまひとがつ弾まなかったことだ。集中を欠く鑑賞となり、台詞や場面など見逃したところが少なからずあったと思われる。

 心を打つのは、「お芝居は迷惑かけながら作るのよ。そして精一杯楽しむ!ね」という台詞である。台詞がなかなか覚えられず、迷惑をかけるのが申し訳ないと嘆く女性が、本番をどう乗り切るかが本作のひとつの重要なポイントとなっており、この台詞は演技に思い悩む女性への励ましを越えて、人は一人では生きてゆけず、誰かに支えられ、迷惑かけながら生きてゆくものであり、それをお互いさまと大らかに考え、生きることを精一杯楽しみ、味わおうという人生讃歌のメッセージに転化するのである。

 20人近い座組において、どんな登場人物かを客席に示すための工夫、俳優一人ひとりの個性を活かす配慮が必要であろうし、さらに演出においてもさまざまな困難があったと想像されるが、今回の舞台には困惑する箇所が少なからずあった。しかしここで、プラチナネクストの舞台に初めて足を運ぶきっかけとなった友人(プロの俳優)の「メンバーの方々の芝居をやりたかった!という長年の情熱に憧れる。そういう心意気に触れるのは、自分にとっても佳きことだ」という言葉を、もう一度思い出すのである。そして終演後、喜びに溢れるキャスト、スタッフの方々の笑顔を見ると、すべて吹き飛んでしまう。この清々しさこそ、プラチナネクストの舞台の最大の魅力であり、観劇を繰り返すうちに疲弊し、摩耗する自分の心に、温かな栄養を注いでくれるのである。

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