因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ドラマ・リーディング『パーマネント・ウェイ』

2008-09-06 | お知らせ
*デヴィッド・ヘア作 常田景子翻訳 坂手洋二演出 伊丹市 アイホールで19,20日上演 
 燐光群が上演した『パーマネント・ウェイ』(坂手洋二演出)をみたのは、もう3年近く前になる。国鉄民営化後のイギリスで起きた4件の鉄道事故が題材になっている本作は、シアタートラムの中央に線路が走り、事故で亡くなった人の遺族、生存者、鉄道関係者はじめ銀行家や官僚も登場する。線路の重量感やそれぞれの立場から吐露される生々しい証言の数々は、否応無くその年の春に起こったJR福知山線の脱線事故を思い起こさせる。終始重苦しい空気の中で、渡辺美佐子の表情と声がまさに水路を開くように観客を導く(因幡屋通信22号に劇評掲載)。

 その作品が、事故のあった場所のすぐ近くでリーディング上演されることの意義を考えたい。事故の傷跡はいまだ心身に深く、苦しむ方々が大勢いる。亡くなった人は帰ってこない。この絶対的な現実に対して、演劇は何をなし得るのだろうか。事故の背景にある社会の歪み、多くの人々の思惑が絡む構造的な問題は簡単には解決せず、事故後も新たな苦しみが加わる。その苦しみを演劇は救えるのか。

 今回のリーディング上演にも渡辺美佐子が出演する。演じる側だけでなく、みる方にとってもリーディング公演という形式は逃げ場がなく、いささか苦痛を感じる上演になるかもしれない。しかしひとりでも多くの人が劇場に訪れることを願う。俳優の台詞を聴きながら、それがいつのまにか事故を体験した人の「証言」の重みをもって心に響くことを。投げかけられた言葉を心に重たく抱え、そこからさまざまなことを考え、願わくは何かのアクションを起こすきっかけと勇気が与えられることを。

 

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