因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

流山児★事務所公演 『新宿オペラ 由比正雪』

2019-06-25 | 舞台

唐十郎作 流山児祥演出 公式サイトはこちら Space早稲田 30日終了 
 由比正雪は江戸時代前期、徳川幕府転覆を計画した実在の人物であるが、出自には諸説あり、謎が多い。本作は、1968年の新宿騒乱に象徴される若者たちの圧倒的な熱量と、それが受け止められない閉塞感、虚脱感が混在した当時の世相を反映したものだ。流山児祥は、51年前の
本作初演に小さな役でデヴューした。昨年の『腰巻お仙 振袖火事の巻』から半年、上演を前に大久保鷹、流山児祥と「由比正雪」史跡を歩き、大島渚監督作品「新宿泥棒日記」上映のイベントも行われ、満を持しての開幕だ。

 すでに衣裳、かつらをつけた役者陣が観客誘導を行い、小さな劇場はたちまち満員となる。穴倉のような劇場での「唐十郎の唯一の革命時代劇」(公演リーフレット/流山児挨拶文より)は、むせかえるような濃厚な熱気と、冷たい刃のような鋭さを併せ持つ不思議な作品だ。劇には4人の正雪が登場し、怪奇もののような正雪誕生からその死まで、金井半兵衛、丸橋忠弥など実在の人物(といっても正雪と同じく不明なところが多い)、夜鷹たちが目まぐるしく交錯し、狭い空間も何のそのの本格的な殺陣による大活劇が展開する。

 流山児は喧嘩を売っている。半世紀前の若き自分に、作者の唐十郎に、必死で戯曲に食い下がり、稽古中から生傷が絶えないであろう劇団員たちに、客席に。その喧嘩腰は劇場に留まらず、まだ舞台を見たことのない観客にまで及ぶ。前述の朝日新聞の記事には、「自分なんてつまんないぜ。諦めることはない。自分が変われば社会も変わる。冒険を恐れず、街に開けた演劇を一緒にやろうぜ」と檄を飛ばしている。街とのつながりという視点で唐十郎作品に触れるのはこれがはじめてかもしれない。テントのようにラストの屋台崩しの無いSpace早稲田での唐十郎作品は、観客が舞台に触発されて自ら心の扉を壊し、街のなかに飛び出すことでさらに広がり、深まるのではないだろうか。

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