因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

劇団東演 朗読劇『月光の夏』

2007-08-17 | 舞台
*毛利恒之原作・脚本 鈴木完一郎演出 公式サイトはこちら 北沢タウンホールの公演は15日で終了 9月26日まで全国を巡演
 8月15日12時に開演するお芝居をみるのは、これがはじめてではないか。太平洋戦争末期、佐賀県鳥栖市の小学校に2人の青年が「ピアノを弾かせて欲しい」とやってくる。彼らは特攻隊員で、沖縄への出撃を前に好きなピアノを思い切り弾きたいと訪ねてきたのだ。劇は彼らの最後の演奏を見守った小学校教師の回想で始まる。戦争が終わり、青年のひとりは生きていた。しかし・・・。

 案内のチラシには 「4人の俳優とピアニストが織りなす『新機軸のドラマリーディング』」とあった。舞台中央にグランドピアノが置かれ、劇中、ピアニストによるベートーベンの「月光」の演奏もある。4人の俳優は手に台本を持ったリーディングの形式を取り、1人が複数の役を演じる。しかし台本に目を落として読むところはほとんどなく、台本を離して普通に演技する場面もあり、入念な稽古がはいっていることが感じ取れる。若い命を散らせたものはもちろん痛ましいが、生き残ってしまったものの人生も同じくらい辛いものであった。せっかく命が助かったのに、死んだ戦友への申しわけなさで頑に心を閉ざしていた男性が再びピアノに向かい、新しい一歩を踏み出すまでが丁寧に描かれている。再演を重ね、全国を巡演する。平和と鎮魂を訴える力作である。

 
 この国に生きるものとして大切な日に、『月光の夏』に出会えたことは幸運であった。戦争を知らないものが戦争を知る方法はいろいろある。書籍、映像ドキュメンタリー、映画や舞台、体験者に話を聞く。そこで得たものをどう活かすかは、自分が決めなければならない。終演後原作と、少し迷ったが戯曲も購入した。題材が重すぎることもあるし、作り手側の真摯な姿勢が非常に強く感じられる舞台なので、簡単によかった感動したとまとめるのは申しわけなく、しかし本作がリーディング形式を取っている点や俳優とピアニストの共演など、考えたいところもある。

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