因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ガラス玉遊戯vol.8 『わたしのゆめ』

2015-12-02 | 舞台

*大橋秀和脚本・演出 公式サイトはこちら 下北沢/小劇場楽園 6日まで (1,2,3,4
 2011年5月初演の作品(劇評サイトwonderlandクロスレヴュー参加)が改訂され、新しい配役と劇場で再演の運びとなった。とある町の小学校。4年生児童の保護者による役員会が開かれようとしている。この学年では、さまざまな職業の人を招いて話をしてもらったり、仕事の実演などを行う課外授業をしている。先日は大工さんが授業を行い、子どもたちはとても喜んだという。つぎはどんなお仕事の人に来てほしいか。子どもたちにとったアンケートの結果は、何と「キャバ嬢」であった。人気ドラマの影響らしいが、水商売の人を学校に招くのは是か非か。父兄、担任教師、教頭、ボランティアの大学生を交えての喧々諤々を描く80分だ。

 前回と同じ配役は大学生のボランティア・美樹役の与古田千晃のみで、あとは新キャストになったからとはいえ、基本的に同じ作品であるものがこうも印象が変容するとは思わなかった。自分は疲れも眠気も吹き飛び、後半やや強すぎる場内の暖房に悩みながらも、緊張をもって見守ることができた。4年半までの初演のとき、自分はいったい何を見て、何を見ていなかったのか。それをずっと考えている。

 初演のチラシを見ると、出演俳優の名前の脇に役名がメモされている。はじめてみる俳優さんが多かったこと、キャバ嬢役の龍田知美と、大工の奥さん役のつついきえ以外の人物に対して、いまひとつ明確な印象が持てなかったためだろう。それが今回はいずれも登場人物と演じる俳優の個性がみごとに合致し、輪郭のはっきりした舞台になった。

 前回公演のとき、父兄数名で保護者会を行い、重要事項を話し合うことに違和感をもったが、再演では保護者の役員会に設定が変更されたことで解消された。また中座した教頭が戻って来たときも「保護者から電話があって」と説明がなされたので、こちらもOK。小さな躓きがさりげなく整えられているところに、劇作家の丁寧な仕事ぶりがうかがえる。前述のように俳優も適材適所で、劇作家の志に寄り添い、よりよい舞台を作り上げたいという心意気が伝わってくる。

 となると、もう少し欲が出てくるのである。劇の後半において、担任教師は子どもたちが書いた名前入りのアンケート用紙を何のためらいもなく保護者たちに見せる。その結果、現役キャバ嬢のシングルマザーが実は・・・という展開になってしまう。教頭は「いろいろ行き違いや不手際があって」と謝罪するが、何が行き違いであり、どこが不手際であったのか、この方は認識しているのだろうか。
 担任教師がアンケート結果としてまとめたものを見せるのならわかるが、「何々ちゃんはこんなこと書いてるんですよ」と見せるのはあまりに無防備であり、見識を疑う。キャバ嬢が実は・・・という展開を作るためとしても、保護者のなかにはキャバクラ好きのセンバさんもおり、つきあいとはいえ夫がときどきキャバクラに行くことに悩むコンドウさんもいる。保護者の何気ないことばであったり、何か別のきっかけで実は・・・とすることは、大橋秀和ならできると思う。また非常に地味で素朴な感じのボランティア大学生がキャバクラのバイトもしているということが、劇中もっと活かすことができそうだ。さらに子どもたちがそれほど夢中になるキャバ嬢のテレビドラマがどんなものか、もう少し知りたいではないか。

 もっと。もう少し。変化と成長を目の当たりにすると、どうしても前のめりになってしまう自分に苦笑しつつ、幸せな初日に出会えたことに感謝した。

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