因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ドラマツルギ2011 劇団エリザベスmeet's& 劇団印象

2011-06-09 | 舞台

 公式サイトはこちら タイニイアリス 26日まで
「思わぬ手法、研ぎ澄まされたドラマツルギーによって観客の心を突き刺すことができる創り手の発見」を謳うフェスティバル。期間中5つの劇団が剣の腕前を競う。1回の公演で2劇団がおよそ70分の作品を連続上演する。セットチェンジのため、途中15分の休憩あり。
 意欲的なフェスティバルの幕開け、次の2劇団の舞台を観劇した。

*『ワールドエンド、スーパースター。』
 K.r.Arry(劇団エリザベス)作 楢原拓(チャリT企画)演出 24日まで
 通り魔やテロの情報が錯綜し、果ては透明人間が周囲の人々を次々に消していく。
 見えないものに翻弄される男女3人。 
*『人涙(じんるい)』
 鈴木アツト(劇団印象) 作・演出 (1,2,3,4 5,6,7,8,9,10) 25日まで
 レーシックの手術を受けた女性。眼科医が実は○×で、見えないものまで見えはじめた。

 日替わりで2劇団ずつ上演するため、大掛かりな舞台美術は組めず、小道具のたぐいも限られる。70分の枠は短編というには長いが、いろいろなことを盛り込むには短い。メッセージをどこまでどのように絞り込むか、劇作家の手腕が試される。
 初日の2本について、物語の設定をじゅうぶんに納得させるには説明不足だったり、話の流れが強引、あるいや整合性を欠いたりするところがあったり、俳優の演技がまだ硬く、劇ぜんたいのリズム、出演者どうしの呼吸が整っていないところが散見するが、ほころびや妨げにはならず、どちらも楽しめる。公演期間が長いこともあり、これからどんどん変化し、練り上げられるだろう。

『ワールドエンド、スーパースター。』
 震災後の首都圏の混乱や原発事故による放射能汚染の恐怖を想起させるが、最初に登場する男女2人はどこかふざけているし、途中からやってくる男性が真実をすべて背負っているようでもない。現実の事件や震災の影響で揺れ動いたと想像される心象をあからさまに反映させず、距離をおいてあるところに好ましい印象をもった。挿入される出会い系サイトの「小笠原課長」を、もっと有機的に絡ませる中編作品にならないだろうか。

『人涙』
 ファンタジックな設定は劇団印象の得意とするところだが、その設定と現実に生きるものが舞台上で交わるときに生まれる痛みや悲しみが、昨年あたりから少しずつ増しているように思われる。子どもをもつことに戸惑う男性の混乱を描いた『父産(とうさん)』や、盲目の少女が犬の演技をしている韓国人女優と切ない会話をかわす『匂衣(におい)』など、これまでの鈴木アツトの舞台がゆるやかにつながって本作への流れを作っていると自分には感じられた。
 俳優陣は劇作家の思いを確実に立体化する実力があり、本作から今度はどんな劇世界を描かれるのか、早くも次回作への期待を抱くのである。

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