因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

因幡屋通信66号【梅雨から夏のトピック】

2020-10-21 | 舞台
 続きまして月ごとに心に残った舞台について短くお届けいたします。視聴あるいは観劇直後のブログ記事をリンクしておりますので、ご参考までに。

【梅雨から夏のトピック】
 ~因幡屋観劇覚書~オンラインもリアルも~
☆6月☆
*ロロ×いわきアリオス共同企画『家で劇場を考える』三浦直之作・演出
 稽古場に集えない俳優たちが東京、福島、仙台など、それぞれの場所から
ネットで稽古をするプロセスと本番をオンラインで配信する試み。本作で描かれる「オンライン演劇の開幕を待つ観客たち」は、数か月先のわたしたちの現実になるかもしれない。
*文学座アトリエ70周年オンライン企画vol.3 
 久保田万太郎編 戯曲『雨空』勉強会+発表会 文学座の女優筆頭であり、久保田万太郎の薫陶を直接受けた本山可久子の指導で、若手俳優が大正時代に書かれた戯曲に挑戦する。本山の指摘の鋭く細やかなこと!それに即座に反映できるところもあれば、なかなか応えられないところもあり、その両方から戯曲の魅力が伝わる。成果発表では俳優は和服で画面に登場し、本番さながらであった。劇場での上演が実現することを切に願う。

―7月から劇場の扉が開きはじめました。どこの劇場も観客一人ひとりの検温、手指消毒、制作スタッフもマスクやフェイスシールド装着の徹底対応です。客席での会話を控え、観劇後の面会や歓談も禁止等々、出来得る限りの感染対策を取っての公演は、作り手も受け手いずれも、未だ手探りのただなかです―

☆7月☆
 *燐光群公演 別役実作 坂手洋二演出『天神さまのほそみち』@ザ・スズナリ 別役実が今年3月に亡くなったことを受けて、奇しくも〈別役メモリアル〉となった公演は、別役戯曲の中で「もっとも不条理」と評される怒涛の対話劇である。文学座の初演は四十年前だが、劇中の人々がコミュニケーション不全の果てに暴走してゆく様相は、現在のSNSによる炎上や混乱を予見しているとも。

☆8月☆
*ティーファクトリー 川村毅作・演出
『路上5-東京自粛』@雑遊
川村毅と文学座の小林勝也が2007年に始めた「路上シリーズ」は、新宿の街で浮き草のように生きる村上と田宮とセシルの物語である。東日本大震災を経てコロナ禍の現在とこれから、観客もまた、現実と夢のあわいを漂うのである。
*東京夜光公演 川名幸宏作・演出『BLACK OUT~くらやみで歩きまわる人々とその周辺~』MITAKA “Next” Selection 21st
@ 三鷹市芸術文化センター星のホール
  さまざまな公演で演出助手を務める自分の経験を縦軸に、コロナ禍での創作現場の葛藤を横軸にした私小説ならぬ「私演劇」であり、ドキュメンタリー演劇の顔も持つ。初日から口コミで観客が増え、千秋楽では半数に減らした劇場に入りきれなかった観客がロビーのモニターを見守ったという。繊細だが臆病ではなく、大胆だが不遜ではないしたたかな劇作家の手並みによる新境地。
*Ring-Bong lavo vol.2 山谷典子作 辻輝猛演出
『ああ、母さん、あなたに申しましょう』
 8月28日~31日 @綜合藝術茶房 喫茶茶会記
  母親の胎内に宿った双子の男女には、それぞれ前世の存在があった。不安定で混乱する両親を励まし、この世に生まれ変わろうとする新しい命の幸せを祈る。ちょっとひねりを効かせた輪廻転生の物語は、酷暑とコロナ禍に疲れた心身を慰め、生き返らせる。

【編集後記】◆御礼を兼ねて◆
 8月末日を以て、新宿ゴールデン街劇場さんが閉館となりました。これまで因幡屋通信、えびす組劇場見聞録設置のご協力に心より感謝いたします。
 今回も最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。ご意見ご感想お待ちしております。




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