因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

パラドックス定数 第20項『東京裁判』

2009-11-22 | 舞台

*野木萌葱作・演出 公式サイトはこちら pit北/区域 23日まで

 2007年に初演され、話題になった作品だ。劇評サイトwonderlandによる「振りかえるわたしの2007」に多くの評者が本作を挙げており、このとき自分の心にパラドックス定数の名が強く刻まれた。以後はこの通り、ほとんど病みつきである(1,2,3,4,5)。今回の再演でようやく話題作観劇の運びとなり、その期待が充分に満たされる嬉しい体験となった。

 極東国際軍事裁判において、被告の弁護人に任命された5人の男たちと検察側、判事たちの丁々発止の1時間35分。しかし5人以外は登場せず。2階部分に判事たちがいて、舞台の二辺を囲む1階客席の片方に検察側がいると見立てる趣向で進む。

 pit北/区域に行くのは初めてであるが、狭くて急な階段を降りたところに受付があり、そこからさらに、足がすくむようなような階段を下りてやっと客席に着く。客席も暗く狭い。いまはもうない渋谷ジャンジャンは地下一階だけだったが、あそこと似た空気を感じた。観劇環境としてはよくないのだが、始まるやすぐ、この作品のためにこの空間が用意されたかのような感覚にどっぷりと浸る。急ごしらえの弁護団は出自もバラバラで、皆それぞれに戦争の傷と影を背負う。

 この題材についてまともな知識がなく、目の前で行われていることのどこまでが史実であり、どこからが劇作家の創作(あるいは願望、空想、妄想)なのかがわからない。自分の視点の弱いことや無勉強(不勉強よりもっとひどい)に打ちのめされる思いだが、なぜかそれも嬉しいのだった。ガツンとやられる感じ。これがたまらないのである。この感覚をもっといろいろな人と共有したい。ノンフィクション好きの家族、歴史に詳しい年配の友人、芝居は嫌いだという親戚。次回は誘ってみよう。そしてこれなら見てみたいと思ってもらえるような劇評を書きたいのだが今の自分には大変に難しく、それだけに「何とかしたい」という気持ちを掻き立てられるのである。

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