100年ぶりにパリで五輪が開かれています。そのフランスでかつて20世紀最高の本に選ばれたのが、サンテグジュペリ作の『星の王子さま』でした
▼物語の冒頭、帽子のように見えるけれど、じつはゾウをのみ込んだウワバミという絵が出てきます。最近、この絵は隣国を次つぎとのみ込んでいったナチスドイツを示している、という解釈を知りました
▼『星の王子さま』のウワバミは獲物をのみ込んだ後、半年間、腹ごなしのために眠ります。ナチスの侵略も1938年3月のオーストリア併合から、ほぼ半年ごとに進んでいったのです。9月チェコのズデーテン地方併合、翌年3月同ボヘミア・モラビア占領、9月ポーランド侵攻、翌年4月デンマークとノルウェーに侵入…
▼ほかにも、放置すれば星を覆いつくしてしまう3本のバオバブの木は、日独伊の枢軸国を指していると多くの人が指摘しています。「バオバブをかいた時は、ぐずぐずしてはいられないと、一生けんめいになっていた」(内藤濯〈あろう〉訳)という語り手の言葉には、ファシズムへの作者の危機感が明らかです
▼サンテグジュペリが『星の王子さま』を書いたのは第2次大戦中の43年。40歳を超えパイロット不適格だったにもかかわらず、無理をして軍務につき偵察飛行に出たまま行方不明になりました。搭乗機は2000年にマルセイユ沖で発見されました
▼人生の英知をつめ込み、王子さまの死にいたる物語は、死を覚悟した作者の遺言ともいわれます。きょう没後80周年。
しんぶん赤旗「潮流」より
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