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2018FIFAワールドカップ  視聴率 フォックス スペイン語放送 テレムンド フォックスの悪夢

2018年07月09日 20時45分28秒 | 2018FIFAワールドカップ
Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会


▼ 瀬戸際のFox 一次リーグ初戦の視聴者数は44%減
▼ 背水の陣 史上最大の放送計画
▼ ワールドカップの視聴率は意外に好調
▼ 牽引車はスペイン語放送のTeremondo
▼ 米国のサッカー人気を支えているのは、米国内のスペイン語人口の増加
▼ スペイン本国抜いて米国が世界2位に
▼ Foxの英語放送も、視聴率は回復傾向
▼ 決勝リーグに入り、視聴率は好調を維持


瀬戸際のFox 一次リーグ初戦の視聴者数は44%減
全米の視聴率調査会社のNielsenのデータによると、2018年のFIFAワールドカップの一次リーグ・第1戦では、米国のテレビ視聴数は2014年ブラジル大会に比べて約44%減少した。
 2018FIFAワールドカップの放映権を核としたのは、Fox(英語放送)とNBCユニバーサルのTelemundo(スペイン語放送)(NBC Iniversal/Comcastが所有)、その双方とも同じように下落している。
 Foxの平均視聴者数は188万人で、2014年ブラジル大会のESPN/ABCの平均視聴者数は355万人で大幅に減少している。
 Telemundoの中継の平均視聴者数が187万人で、4年前のUnivision(スペイン語放送)の視聴者数は330万人だった。


出典 2018‎年‎6月‎22‎日 Bloomberg

 2つのネットワークは、2011年、ESPN/ABC(英語放送)とUnivision(スペイン語放送)と放送権獲得を巡って熾烈な争いを演じ、 12億ドル(約1320億円)という巨額の放送権料を支払って、2018ロシア大会と2022カタール大会の放送権を獲得したが、今、激しい逆風に直面している。
 最も深刻なダメージは、米国チームがロシア大会の出場権を逃したことである。またロシアの米国タイムゾーンは、2014ブラジル大会のタイムゾーンに比べて条件が悪いのもマイナス要素だ。

▼ Telemundo
アメリカ合衆国 フロリダ州 マイアミに本部のあるスペイン語専門放送局。
NBC Universalの傘下で、親会社は全米で最大のCATV企業、Comcast。
 スペイン語放送の競争相手はUnivision。

 スポーツメディア・コンサルタントのChris Bevilacqua氏によると、2018FIFAワールドカップ 中継は、視聴者の急速なテレビ離れの影響を受けている可能性もある指摘している。
 テレビ離れの原因は、視聴者のケーブル・テレビからNetflixやamazon、huluなどのインターネット・動画サービス(OTTサービ)に向かう流れが加速したことに加えて、Youtubeなどのソーシャルメディアの普及とされている。
Bevilacqua氏は「この数値は必ずしもショックではない。こうした流れは米国内のネットワークに当然起こるだろうと誰もが予想していた」とした。

 Fox Sportsの戦略担当の副社長、Michael Mulvihill氏は、「テレビ離れはインターネット・動画サービス(OTTサービス)の視聴者にも当てはまるだろう。パブリック・ビューイングやバーなどで視聴者が見るようになっているのでそれに期待している」とした。

 米国のチームが予選で敗退したことで、FOXは広告主に保証した視聴者数を20%も下げ、ブルームバーグは広告売上額の予測を約2,000万ドル(約22億円)下方修正した。
 Fox SportsのMulvihill氏は、いまのところは広告主からの反応は肯定的だとしたが、同社は12人のキャスターのうち4人だけをロシアに派遣し、他の8人がロサンゼルスのスタジオから中継に参加するスキームに切り替え、経費削減を図っている。
FoxとTelemundoは、出場しない米国チームに代わって、メキシコやブラジルなどの南米チームに注目し、スペイン語系市民の視聴者の獲得に乗り出している。
 一次リーグの最初の16試合でフォックスが最も多くの視聴者数を獲得した試合は、ブラジル対スイス戦で、6月17日の日曜日の午後(東海岸)に、400万人の観客を獲得した。
 もっとも、4年前のブラジル大会では、ESPNが放送した米国対ガーナ戦は970万人の視聴者数を記録していた。
調査会社の副社長、Lia Silkworthは、Telemundoを最も注目されているスペイン語ネットワークとしてランク付けして高い評価を与えている。

出典 World Cup Ratings Are a Complete Nightmare for Fox and Comcast
2018年6月22日 Bloomberg


背水の陣 史上最大の放送計画
 Foxは2018FIFAワールドカップ ロシア大会の放送に際して、野心的な計画を立てていた。米国の予選敗退が決まった2週間前、Foxは「前例のない」放送計画を発表し、2014ブラジル大会でABCが放送した試合数を大幅に上回る全64試合を中継し、合計350時間の番組制作を行うことを明らかにした。
 「これまで4大会のワールドカップに比べて最高のサービスを保障する」と胸を張り、「サッカー人気は引き続き米国内で高まっていて、米国内の視聴者は、米国以外の多くの国々の試合に興味を持っている」と強気だ。
 Foxは、モスクワの象徴的な赤の広場に2階建ての最新鋭のサテライト・スタジオの建設を計画している。
ちなみに2014ブラジル大会では、ESPNとESPN2は54試合を放送した。

 しかし米国チームが出場を逃したことで、2018FIFAワールドカップ の視聴者が減少する可能性が高い。さらにモスクワと米国東海岸は7時間の時差があり、熱心なサッカーファンは引き付けるが、一般のカジュアルな視聴者を獲得するのは困難だと予想されている。
 「タイムゾーンの影響は大きく、最初は一般のカジュアルな視聴者を得るは難しいので明らかにFoxにとってはダメージだ。しかし、全体としてはそれほど大きなダメージではないだろう」と広告アナリストのBrian Wieser氏は楽観視している。
2014年ブラジル大会は、米国の視聴者にとってライブ中継を見るには、はるかに便利で、東海岸からわずか1時間の時差で楽しむことができた。
 ニールセンによると、男子ワールドカップ決勝戦で、ドイツがアルゼンチンに勝ち優勝杯を手にした試合は、視聴者数は平均で1732万人を記録した。
 また、たとえ米国がモスクワ大会の出場したにしても、昨年の大統領選挙でロシアが干渉したという疑惑の捜査が進められている中で、ワシントンとモスクワの緊張関係はロシア大会の人気に水を差すだろう。
Foxは、極めて厳しい状況の中で、視聴者数を確保し、莫大な放送権料に見合う広告料収入を確保しなければならいという難題に直面する。

ワールドカップの視聴率は意外に好調 牽引車はスペイン語放送のTeremondo
 米国チームが出場しないモスクワ大会は、米国内での中継番組の視聴率は惨憺たる結果に終わると予想されていた。しかし、一次リーグが終わって、予想外に視聴率は健闘している。
 その牽引車はメキシコの活躍である。6月17日、一次リーグの初戦で、メキシコは2014年ブラジル大会の覇者、ドイツに1-0で勝利するという大金星を上げた。
 この試合を放送したFoxのFS1チャンネルは450万人の視聴者を獲得し、NBCユニバーサルのTelemundo(テレムンド・スペイン語放送))チャンネルの視聴者数は650万人を記録し、1994年以来、最も多くの視聴者(米国の試合を除く)を獲得した。
この視聴者数は、2014年ブラジル大会の米国対ポルトガル戦をESPNが中継した際に獲得した1,732万人視聴者には及ばないが大健闘したと言っても良い。 
 日本を含めどこの国でも同じだが、自国のチームの試合の視聴率はまったく別格だから比較しても無意味だ。
6月22日、メキシコは、一次リーグの第2戦で、今度は韓国に2-1で勝利したが、この試合でスペイン語放送の歴史のなかで最も視聴者を集め、Telemundoも“勝利”したようである。
 この試合で、メキシコ代表のエース・ストライカー、エルナンデスは、自らの持つ最高得点記録を書き換え、50得点とした。メキシコはドイツ戦に続き2連勝し、決勝リーグへの進出を決めた。
 NielsenのデータとAdobe Analyticsのデジタルデータによると、Telemundo、Telemundo Deportes.com、Telemundo Deportes En VivoとNBC Sportsアプリ全体で、この試合の合計平均視聴者数は720万人を記録した。
 Telemundoのテレビだけの平均視聴者数は660万人で最高記録を塗り替えた。
 またTelemundo Deportesのデジタルサービスでは、合計10億分のライブストリームを配信し、Telemundo Deportesにとってマイルストーンとなった
 さらに同時ライブストリームは665,000記録し、NBC Sports Digitalの歴史のなかで、スーパーボウル以外で最大の視聴者数を記録した
また平均分視聴者(Average minute audience:AMA)は574,000人で、過去最高のスペイン語放送のAMA視聴者数を記録した。
 Telemundoの経営陣はこの結果に大いに満足しているという。


米国のサッカー人気を支えているのは、米国内のスペイン語人口の増加 スペイン本国抜いて米国が世界2位に
 Telemundoの好調さの要因は、米国内のスペイン語圏の国からの移民の増加で、サッカー人気を支える原動力になっている。その中心になっているのはメキシコからの移民で、ヒスパニック系と呼ばれる米国市民である。
 米国のスポーツ・ビジネスの専門家は、「米国はサッカー国家か? 明らかにYesだ」と述べ、「米国への移民の増加で、20代、30代、40代の若者たちにとってサッカーは第1位のスポーツになった。スポーツ界に“嵐”が起きている」と指摘している。
2015年7月4日、 スペインに本部がある非営利機関「セルバンテス文化センター」は米国がスペイン語人口でメキシコに次ぎ世界2位に浮上したとの新たな報告書を公表した。
 米国でスペイン語を母国語とする人口は約4100万人、バイリンガル人口は約1160万人、スペイン語人口は合計5260万人となったとした。
 報告書は米国勢調査局や他の国々のデータに基づいてまとめたとしている。
 スペイン語圏の国は、世界第一位がメキシコで、総人口1億2200万人、続いてスペインで総人口は4770万人、コロンビアが4620万人となっている。
 いまや世界で第二のスペイン語圏の国は、米国なのである。
 さらに、報告書では、米国勢調査局の数字を引用し、現在は米国の総人口は3億1890万だが、その内、米国のスペイン語人口は2050年までに1億3280万人に達し、メキシコも抜いて、世界第一のスペイン語人口を抱える国になると予想した。 
米調査機関ピュー・リサーチ・センターの最近の報告書によると、米国内のヒスパニック(中南米系)人口の昨年の伸び率は2.2%と減速したものの、総人口の17.4%を占めた。1995年から2000年にかけての平均増加率は4.8%、10年から14年にかけては2.2%だった。
 伸び率の鈍化は、メキシコを中心にした中南米諸国からの移民減少が要因と指摘した。
 トランプ大統領は、メキシコ移民に対して厳しい姿勢を示し、メキシコ国境3200キロ沿いに「国境の壁」を建設すると公約し、アメリカ下院は2017年7月、メキシコとの国境沿いに「壁」を建設する費用16億ドル(約1780億円)を含む歳出法案を可決している。また、メキシコ国境から不法入国した移民を逮捕し、訴追・収監するという「ゼロトレランス」(不寛容)政策を始めた。トランプ政権は11月の中間選挙に向けて、強硬姿勢を保つことは間違いない。
(出典 2015年7月4日 CNN)

Foxの英語放送も、視聴率は回復傾向
 6月17日のドイツ - メキシコとブラジル - スイスの試合は、序盤戦でFOXのスポーツ専門CATVチャンネル、FS1が、最も多くの視聴者を獲得し、ワールドカップ中継は、ゴルフのUSオープンの中継と相まって、ESPNのメインチャンネルよりもユニーク・ビューでFS1が上回った。
2018年6月28日、一次リーグの11日間を通じて、2018年のFIFAワールドカップのFOXとFS1の試合を次のように総括した。

・一次リーグの平均視聴者数は、過去4回のワールドカップの31%アップした。(米国の試合を除く)
・モスクワ大会と同じタイムゾーンで開催された2010年のワールドカップ・一次リーグの平均よりも+ 20%アップ(米国の試合を除く)した。

 6月23日のポーランド対コロンビア戦で、コロンビアが3-0の勝利した試合は、日曜日に最も視聴者数を得た試合で、Foxの放送ネットワークとデジタル・ストリーミングの合計視聴者数は455万5000人、 Foxの放送ネットワークだけで438万4000人の視聴者を獲得した。米国の試合を除いた2010年の一次リーグ平均よりも+ 135%、米国の試合を除いた2014年の一次リーグ平均よりも+ 69%高い数字を記録した。
Fox SportsのMulvihill氏は予想以上に、2018FIFAワールドカップ は強力なコンテンツだったとしている。
 一次リーグの最初の段階では、過去4回の大会での平均視聴者数と比較して32%増加(過去4大会の米国の試合を除く)したとしている。

 一次リーグで最も視聴者を獲得したのは、6月23日に放送したドイツ 対スウェーデンの試合で約540万人(ストリーミングを含めると約564万人)の視聴者を集め、1990年以来、米国で最も視聴されている英語放送の中継番組(米国戦を除く)になった。
この試合の世帯視聴率4.2%(テレビ視聴率12%)を記録した。
 また6月22日のメキシコ対韓国戦では、フォックス・スポーツは464万6000人(IPテレビでは443万3000人)の視聴者を獲得した。メキシコの大健闘は、米国チームに代わって、視聴者を引き付けている。
しかし、Foxの中継制作体制は、経費節減で、ロシアにサッカー中継のキャスターを派遣せず、米国内のFoxのスタジオで放送を行ったのである。 “penny-pinching”、“しみったれた”二流のスポーツ中継だと厳しい批判が浴びせられている。
 さらにFS1の夜間のハイライトショーも批判を浴びている。アルゼンチンのフェルナンド・フィオーレをキャスターに起用したが、番組の流れを悪くしていると評判が悪い。プレミアリーグのNBCSNのスタジオショーに比較してお粗末すぎるとされている。

 Fox Sportsの戦略担当副社長のMike Mulvihill氏は、「視聴者数の低水準の数字は心配してない。我々はワールドカップの最初の8日間のパフォーマンスに“かなり満足”している。特にFS1のケーブルテレビで見ている視聴者数の数字に満足している」と語った。
Foxは、モスクワ大会の全体の視聴率に対して強気の姿勢を示し、スペイン語放送のパートナーのテレムンドもこれからさらに回復するだろうと楽観視している。   
F oxは「空が落ちている “sky is falling” panic”」というパニックモードにはなく、決勝ラウンドを、期待を持って迎えるとした。

決勝リーグに入り、視聴率は好調を維持
 6月30日、決勝リーグ戦1回戦、ウルグアイがポルトガルに勝利した試合を放送したフォックス・スポーツ(Fox or Fox Sports 1)は、680万人の視聴者を獲得し、2018年ロシア大会で最大の視聴者数を得た。
また世帯視聴率でも、4.4%(テレビ視聴世帯は12%)記録した。(DEADLINE Hollywood 2018年7月2日)
ちなみにテレビを設置している世帯数は全米で1億1960万人(2017/2018年)である。 
もっとも、2014年ブラジル大会の決勝ではドイツがアルゼンチンを1-0で勝ち優勝杯を手にした試合では、ABCは1732万人の視聴者数を獲得し、この記録はいまだに破られていない。
 サッカー中継全体で見ると、2015年の女子ワールドカップでチームUSAが日本に勝利した試合で、2540万人の視聴者数を獲得し、米国で最も視聴されたサッカー中継(英語放送)となっている。
 米国チームの試合は、他の試合に比べて圧倒的な視聴者数を誇る。
 米国チーム抜きのモスクワ大会のダメージは大きいことに変わりはない。
 総額約12億ドルの巨額の放送権料を支払って、獲得した2018FIFAワールドカップ 、FoxとTelemundoにとってどんな結果がでるのか、大いに注目される。





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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2018年7月8日
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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