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東京オリンピック 豊洲市場 築地市場移転 環状2号線 五輪道路 BRT 選手村 陸の孤島 交通渋滞

2018年11月22日 12時29分28秒 | 東京オリンピック

陸の孤島 東京2020五輪大会施設
頓挫する交通インフラ整備 臨海副都都心
環状二号線完全開通は五輪開催後



環状2号線 暫定開通
 2018年11月4日、午後2時過ぎ、環状二号線の豊洲市場-新大橋通汐先橋付近間の未開通区間、2.8キロメートルが暫定開通した。環状二号線は、築地市場跡地内の未完成区間が残されているが、築地大橋を渡った後に、築地川沿いに暫定迂回道が完成した。これで、とりあえず環状二号線は、豊洲から晴海、築地大橋までは完成した環状二号線、築地大橋から汐先橋交差点付近までは暫定迂回道路、汐先橋から東新橋一丁目(日比谷神社前)までは地上暫定道路、築地虎ノ門トンネルに入って虎ノ門までの区間が走行可能になった。しかし、暫定迂回道は片側一車線、新大橋通りや第一京浜の交差点の信号を通過しなければならないため、渋滞発生が懸念される。
 小池都知事は、豊洲市場の渋滞解消のために、予定より1週間前倒して11月4日(日)に暫定開通させることを明らかにしていた。
 築地大橋から暫定迂回道路に入るには急カーブを通過しなければならないため通行量は制限されるため、2020東京大会開催までに、築地大橋から築地市場跡地を通り青果門に至る直線的な地上仮設道路を建設する計画だ。しかし、この地上仮設道も片側1車線のため、臨海部と都心部を往来する膨大な五輪関連や豊洲市場関連車両を処理するのは絶望的である。
 地下トンネルが完成し、片側2車線で虎ノ門まで全通するのは、五輪開催後の2022年になる。







環状二号線暫定開通区間 東京都

東京オリンピック 難題!交通対策 渋滞マップ公表 交通量15%削減で、渋滞・混雑は解消できるか?


豊洲市場開場 交通渋滞で混乱 築地市場解体開始
「日本の台所」として食生活を支えた築地市場は10月6日、83年の歴史に幕を閉じ、11日豊洲市場が築地に代わる中央卸売市場として誕生した。
 環状二号線がまだ開通していないため交通渋滞が予想されていたが、懸念通り、勝どき橋を渡る晴海通りは激しい交通渋滞に見舞われた。豊洲市場では、晴海通りは渋滞しているので迂回道路を通るようにと指導したそうが、豊洲市場からはかなり離れた佃通りやレインボー・ブリッジしか、都心部と結ぶ道路はない。市場関係者も「われわれが危惧していた以上にひどい」と話していて、仲卸からも「お客さんが時間通りに来られない」、「配達が間に合わない」などの声が聞かれたという。(FNN ニュース 10月11日)
 市場関係者は大渋滞に悩まされる毎日が、当分続きそうだ。
 築地市場は解体工事が10月11日から始まり、東京2020大会で選手や大会関係者を輸送するバスや乗用車約2700台分を駐車するための車両基地として整備される。そして、大会開催の最大の懸案課題である五輪選手村や国際放送センター(IBC)や競技施設と都心部を結ぶ環状2号線の未開通分の工事が始まる。






環状二号線築地大橋を通るターレ 築地大橋は開通していないが、東京都は特別措置としてターレを豊洲市場へ移動させた  出典 ANNニュース(10月6日)


「配達が間に合わない!渋滞が課題」 FNNプライム(10月11日)


閉場した築地市場水産物部 10月10日


閉場した築地市場水産物部 10月10日



豊洲市場 10月11日に開場 交通渋滞で混乱必死
 2018年7月31日、小池百合子都知事は、築地市場(中央区)から移転を目指す豊洲市場(江東区)について、汚染された地下水対策のために東京都が実施していた追加の安全対策工事が終了し、「安心、安全な市場として開場する条件を整えられた」と述べ、「安全・安心宣言」を行った。
 そして、翌8月1日、東京都は農林水産相に豊洲市場の開設認可申請を行い、9月10日、農林水産相は中央卸売市場として開設することを認可した。
 これで約30年にわたる議論を経た市場移転が正式に決まった。
 豊洲市場は、計画より2年遅れて、10月11日に開場することが決まった。
  豊洲の汚染問題では、舛添要一知事(当時)が汚染対策終了後の2014年に「安全宣言」をしたが、小池知事が移転を凍結。汚染対策の柱とされた建物の下の「盛り土」がないことが分かり、地下水から環境基準値を超えるベンゼンも検出されたとして安全性に疑念が噴出した。
 東京都は有害物質が揮発して建物に入るのを防ぐために地下の床をコンクリートで覆い、地下水位を下げるポンプの増設をするなどの追加工事を実施した。
 7月30日、都の専門家会議は、追加工事が完了し、安全性について、「科学的な安全は確保されている」との見解を示した。これを受けての小池都知事の「安全宣言」である。
 今回の追加工事費は38億円。汚染対策費は総額で897億円に上っている。今後もコンクリート補修や地下水くみ上げ設備の維持に年間数億円かかるという。
 豊洲の汚染問題のもたらしたツケは大きく、東京都民への重い負担が残された。
 豊洲市場移転と築地市場の再開発は、東京2020大会をターゲットに完成させる予定だったが、その目論見は外れた。
 臨海部と都心を結ぶ環状二号線は、東京2020大会開催時の交通渋滞対策の切り札として、臨海部と都心を結ぶ「信号のないスムーズな輸送」を目指して建設が進められていたが、築地市場の跡地に建設される地下部分の工事が間に合わず、地上仮設道路の「暫定開通」に追い込まれた。
 選手村とメイン会場となる新国立競技場は、5万人近くの選手や大会関係者、メディア関係者が移動するメインの動線だ。その輸送ルートとして環状二号線を整備する計画だった。
 そして選手村の後方には、豊洲市場がある。豊洲市場の開場で市場関係者の車両も加わり、五輪大会関係車両も合わせると収拾がつかなくなる懸念がある。
 東京2020大会の最大の課題は、酷暑対策とならんで交通渋滞対策に絞られた。
 このままでは、首都圏は交通渋滞で麻痺状態になるの必死の様相だ。


環状二号線と築地市場






出典 環状二号線事業概要 東京都第一工事建設事務所

五輪開催時 環状2号線、地下トンネルは断念 地上暫定道路で対応
 2018年6月7日、東京都は豊洲市場への移転が大幅にずれ込んだことで、2020年東京五輪・パラリンピックで五輪のメイン会場となる新国立競技場など都心と選手村やMPC(国際メディアセンター)などを結ぶ「五輪道路」として計画されていた環状2号線を、地下トンネル(片側2車線)での開通を断念し、地上につくる片側1車線の仮設道路で五輪を迎えることを決めた。
 第一段階として、暫定迂回道路を豊洲市場開場の約1か月後の11月4日に、浜離宮恩賜庭園に面した築地川沿いの道路を利用し、臨海部から都心に向かう「上り」の一方通行で開通させる。そして築地市場の青果門を入り口として築地市場跡地を横切り、築地川沿いの暫定迂回道路に接続させる「下り」の片側1車線道路も開通させる。
 しかし、暫定迂回道路は片側1車線でカーブもきつく、スムーズな車両の通行が確保できず、往来する大量の車両で激しい交通渋滞が巻き起こるのは必至で、輸送力は大幅に低下するのは明らかである。豊洲市場関係者の車両の交通渋滞に対応する応急対策にすぎない。
 第二段階は、2019年末までに、築地市場の青果門を入り口として築地市場跡を横切る地上仮設道路を、環状二号線の本線建設エリアの両側に片側1車線で建設し、築地大橋とほぼ直線で結ぶ。第一段階の暫定迂回道路に比べて、きついカーブはなくなり直線の道路となるが、片側1車線であり渋滞は避けられない。これは2020東京大会関連車両の応急措置である。
 しかし、地上仮設道路の大量の車両が殺到しする汐先橋は、交通量の多い新大橋通りとの交差点で、しかも首都高速の出入り口があり、激しい渋滞が予想されるだろう。また都心に向かうには、次に通過しなければならない東新橋交差点はこれも平時から渋滞している第一京浜との交差点で激しい渋滞は必至である。東新橋交差点を抜けると、ようやくすでに完成している築地虎ノ門トンネルの出入り口に到達し、虎ノ門までは地下トンネルで通行できる。
 東京都では築地市場移転後の跡地に建設する地下トンネルの出入り口が完成して、虎ノ門まで至る環状二号線が片側2車線で全線正式に開通するのは2022年になるとした。

 環状二号線は、JR秋葉原駅周辺(千代田区)と江東区有明地区を結ぶ全長約14キロの都道で、この内、築地市場跡地を通る新橋―豊洲間(3.4キロメートル)が未開通の「事業中区間」で、その他の区間は開通している。また3.4キロメートルの未開通区間の内、工事が完了していないのは、築地市場付近の約500メートルだけで、他の区間はすべて工事は完了している。
 環状二号線の虎ノ門から築地市場跡地までの区間は、「築地虎ノ門トンネル」と名付けられた全長約1.84キロメートルの片側二車線の地下トンネルが建設され、築地市場跡地にトンネルの出入り口が建設される。この内、虎ノ門・新橋の区間の1.25キロメートルの地下トンネルの一部が完成し、2018年3月に供用がすでに始まったいる。
 地下トンネルの一部完成で、地上区間も含めて虎ノ門・新橋の区間の1.4キロメートルが開通し、「新虎通り」と名付けられた。
 「築地虎ノ門トンネル」が全通すれば、虎ノ門から晴海の選手村や豊洲まで「信号のないスムーズな輸送」の確保が可能となる。
 環状2号線は、築地市場移転後の跡地に建設する地下トンネルの出入り口で地上に出て、高架道路となり築地大橋で隅田川を渡り、勝どき陸橋や黎明大橋を経て晴海地区に入り、さらに豊洲大橋を渡って豊洲市場に至る。そして東雲運河を渡って終点の有明地区に至り、臨海道路に接続する。
 1993年、環状二号線は、新橋・豊洲までの区間から、新橋・晴海までの区間に延長され、工事対象区間は3.4キロメートルから、4.7キロメートルとなった。豊洲から晴海の延伸区間は工事は完成し、すでに供用が始まっている。
 環状二号線は、2020東京大会開催時には選手や大会関係者、メディア関係者などを輸送する約6000台の車両が往来する臨海部と都心を結ぶ大動脈とする計画で建設が進められ、大会組織委員会ではオリンピック・ルート・ネットワーク(ORN)の幹線に指定している。片側二車線で完全開通していれば、専用レーンや優先レーンの設置も計画され、晴海の選手村と新国立競技場の間は10分、他の都内の競技場のほとんどと20分以内で結ぶ「切り札」であった。
 また10月11日に開場した豊洲市場と都心部を結ぶ幹線としても期待されていた。

 築地市場跡地を通る地下トンネルの建設は、工期がかかる開削工法で地下部分を建設することや、換気装置の設置、地盤工事などで、3年以上は必要とされていた。勿論、築地市場移転が完了しなければ工事は始められない。その築地市場移転が土壌汚染問題で約2年遅れて「2018年10月11日」が決まり、五輪大会開催までのトンネル開通は不可能となった。地下トンネル、片側2車線での全線の開通は五輪大会開催後の2022年に延期された。
 東京都は、その間は、「暫定道路」を整備して、暫定開通させることを決めた。しかし、片側1車線の地上道路で、交通量の多い新大橋通りや第一京浜の交差点を通過しなければならないため、激しい渋滞に巻きまれ、輸送能力は極めて限定的になることが懸念される。

 このため、東京都や大会組織員会では、「交通需要マネージメント:TDM」を行い、全体の通行量を「15%削減」して「休日並み」の通行量に抑える施策を進めている。また特定のエリアや道路への流入を規制する「交通システムマネージメント:TSM」も取り入れて、信号調整や、料金所の流入規制、車線規制など行い、一般車の通行を抑えて交通量の削減を図るなどの対策の検討を進めている。
 しかし、「15%削減」は、強制力を持って実施するもではなく、企業や一般市民に呼びかけて協力ベースで交通量抑制を図る計画なので、果たして「15%」の削減が本当に実現できるのか疑問が残る。
 いずれも渋滞対策の決め手を欠くと思われる。

 環状二号線の内、虎ノ門から豊洲までの2003年に着工した4.2キロメートルの区間で建設費は約1260億円、1キロメートル当たりの建設費はなんと300億円の巨額に上る。「五輪道路」として巨費を投じて整備している環状2号線、五輪大会開催までに完成できず、「五輪道路」の大動脈にという目論見は、事実上、“破綻”した。
 築地市場移転延期で、また一つ、東京五輪準備に大きな失態が生まれている。





第一段階(2018年11月10日ごろ)供用開始 東京都建設局

一足先に環状二号線豊洲市場-築地市場間を走行体験
 2018年10月10日、翌日の豊洲市場開場を前に、移転作業があわただしく行われている中に、築地市場を訪れた。10月10日の午後6時までの期間限定で、豊洲市場への移転作業の便宜をはかるため、築地市場-豊洲市場間に大型バスを使用してシャトル便が運航されていた。コースは、豊洲市場から工事は完成したがまだ未開通部分の環状二号線にはいり、晴海、勝どきを経て、築地大橋を渡り、急カーブで築地川沿いに建設された暫定迂回道路を通り築地市場に至る。
 豊洲から築地大橋を渡るまでは片側二車線か三車線の臨海部と都心部を結ぶ大動脈に相応しい道路が完成していた。この日はシャトルバスだけでなく、市場関係者の車両の通行も、移転作業の便宜をはかり特別に許可され、資材を積んだトラックやVANなどが頻繁に往来し、4日間の最終日を迎え移転作業の最後の追い込みに入っていた。



豊洲市場から環状二号線に入った付近 片側3車線


勝どき高架橋 防音壁に囲まれている


隅田川を渡る築地大橋


築地大橋を渡ると急カーブして暫定迂回道路に


環状二号線は築地市場で行き止まり(築地市場側から築地大橋を見る)


築地川沿いに建設された暫定迂回道路


築地市場と築地大橋、臨海部



“陸の孤島”東京ベイエリア  頓挫する交通インフラ整備
 東京2020大会の競技場や選手村、IBC/MPCが集中する臨海部と都心部を結ぶ道路や鉄道などの交通機関の輸送力不足の懸念が深刻化することが明らかになった。このままでは、一般車両に加えて、約6000台とされる選手や大会関係者、報道関係者の車両で、道路は大渋滞、バスや乗用車、トラックはまったく動かず、「りんかい線」や「ゆきかもめ」は観客で超満員でホームに人が溢れるという光景が繰り広げられるのは必至の様相である。
 築地市場の豊洲市場移転を巡って、汚染対策の柱とされた建物の下の「盛り土」がなく、謎の“地下空間”が広がっていることが明らかになったり、地下水から環境基準値を超えるベンゼンが検出されたりして、豊洲市場の安全性に疑念が噴出し、豊洲市場移転は頓挫寸前の瀬戸際に立たされた。
 仮に予定通り豊洲市場移転が実施されても、予定より大幅に遅れて、築地市場の跡地に建設される環状2号線の完成を2020年五輪開催に間に合わせるのは絶望的になった。 環状2号線は、都心部と五輪競技場や選手村、IBC/MPCなどが集中する東京ベイエリアを結ぶ重要な交通路、「五輪道路」として建設が進められてきたのである。
 開催まであと4年を切った2020年東京オリンピック・パラリンピック、新国立競技場や五輪エンブレムの迷走に続き、膨れ上がった開催経費問題の深刻化、それに追い打ちをかけているのが豊洲市場移転に端を発したこの輸送問題だ。
 東京五輪招致が決まったIOC総会で、安倍首相を始め、猪瀬元東京都知事や五輪招致関係者は、高らかに五輪運営のマネージメント力の高さを世界各国に訴えたが、あれは一体何だったのだろうか。







2020年東京オリンピック・パラリンピック招致ファイル  招致委員会


2020年東京オリンピックの輸送計画について 東京オリンピック・パラリンピック招致本部


交通機関の整備が貧弱な東京湾臨海部
 2020年東京オリンピック・パラリンピック招致にあたって、招致委員会では、競技場や選手村、IBC/MPCの施設を「東京ベイエリア」と名付け、開発途上で用地が容易に確保可能な臨海部に集中させる戦略をとった。東京都は、東京湾に埋め立て地の造成を着々と進め、臨海部には、約7000haと東京区部の約12%を占める広大な土地が生まれていた。その大半がまだ利用されていない空き地で、五輪大会開催をきっかけに臨海部の再開発を一気に加速させようとする狙いがあった。



東京ベイエリア21 東京湾臨海地域の持つ潜在力 東京都都市整備局

 しかし、東京湾臨海部は、まだ開発途上で、公共交通機関や道路の整備が十分になされていない。東京都は、かつて都市博覧会の開催で、開発に弾みをつけることを目論んだが、開催は中止、そしてバブル経済も崩壊し、これまで交通インフラ整備はなかなか進まなかった。
 鉄道については、1988年に月島、豊洲、辰巳、新木場を結ぶ東京メトロ有楽町線が開通、2000年に月島や勝どき駅を設置した都営地下鉄大江戸線が完成、2002年に「りんかい線」が新木場-大崎間で全通、2006年には「ゆりかもめ」が新橋-豊洲間が全通し、交通インフラ整備の整備は徐々には進んでいる。 現存する主な公共交通機関は、東京臨海高速鉄道「りんかい線」と地下鉄都営大江戸線、東京メトロ有楽町線、東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」である。
 しかし、臨海部と都心部を結ぶ道路整備は遅れていた。 

 東京ベイエリアの道路インフラの中核は、東京湾横断する大動脈、首都高速湾岸線である。一日の通行台数は全国の高速道路でNO1、約17万台(辰巳JCT 平成22年)で、成田空港や羽田空港と都心部を結ぶ幹線道路で、乗用車、大型トラック、バスなどで常に渋滞する高速道路だ。
 さらに東京湾臨海部の最南端には東京港臨海道路があり、大田区城南島から江東区新木場まで通行可能だ。
 東京港臨海道路は、城南島から臨海トンネル(全長3.1キロメートル)で、東京湾を渡り、中央防波堤外側埋め立て地に入り、東京ゲートブリッジで、若狭海浜公園に至る。そして新木場で首都高速湾岸線に接続する。
 この二本の幹線道路は都心部と臨海部を結ぶルートではなく、横浜方面から千葉方面に都心部を迂回するいわゆる湾岸バイパスである。
 2018年3月10日、首都高速晴海線(10号線)が開通し、晴海から首都高速湾岸線に接続する動脈が完成した。五輪大会開催期間は成田空港から選手村を結ぶルートとして建設を急いだのである。 首都高速晴海線は五輪大会開催時はともかく、通常時はほとんど通行量のない閑散とした路線だろう。
 しかし、首都高速晴海線(10号線)は晴海が終点で、晴海通りに接続する。隅田川を渡って都心部の環状線に接続される計画はあるが、まだまったく具体化していない。相変わらず都心部と臨海部を結ぶ道路交通網は改善されないのである。
 現状では、臨海部と都心部を結ぶ幹線道路は、墨田川にかかる勝どき橋を通る晴海通りと佃大橋を通る佃大橋通り、そしてお台場経由のレインボーブリッジの3ルートしかない。臨海部と都心部を結ぶ道路は、隅田川や東京湾を渡らなければならないことがネックになっているのだ。佃大橋通りやレインボーブリッジは、都心部に向かうには大きく迂回するので時間がかかるので敬遠される。都心中心部に直結するのは晴海通りだが、通常でも膨大な通行台数でも渋滞の“名所”である。そこで期待されているのが第4のルートの建設で、環状二号線の開通が期待を集めていたのである。


完成した墨田川にかかる環状二号線築地大橋 東京都第一建設事務所

 その環状二号線の開通が、築地市場の豊洲市場移転が2年遅れたことで、五輪大会開催時には間に合わないのは確実になった。
 豊洲市場への移転は、東京臨海部の交通インフラ整備と深くからんでいることを忘れてはならない。築地市場の跡地は、東京ベイエリアに立地する選手村や競技場、IBC/MPCなど施設と都心を結ぶ交通インフラの“切り札”、環状2号線の建設に必須なのである。
 東京都が築地市場の移転を急いだのは“東京五輪”があったのである。


“頓挫”寸前 “五輪道路” 環状2号線
 環状2号線は、JR秋葉原駅近くから都心を半円状に進み、虎ノ門や新橋、汐留、築地市場を経由して、隅田川に架かる築地大橋を通り、晴海地区の選手村、豊洲市場、有明地区の競技会場、東京ビックサイトのIBC/MPCを結ぶ全長約14キロの都道、総工費は1790億円である。東京ベイエリアの五輪施設と都心部を結ぶ重要な交通インフラとされているため、“五輪道路”と呼ばれている。
 東京2020大会のメインスタジアム、新国立競技場や都心部の競技施設と臨海部の選手村やIBC/MPCを結ぶ五輪開催の最重要路線として建設が計画された。
 招致ファイルでは、「環状第2号線は、2020年までに完成し、オリンピックスタジアムパーク、選手村、IOCホテル間を結ぶ大動脈で、大会開催時には、オリンピック・レーンも設置することにより、移動時間を大幅に短縮させる。例えば、選手村からオリンピックスタジアムまでの所要時間は、15分短縮し、10分となる」と公約している。
 しかし、環状二号線は、新橋から築地市場を経て豊洲までの区間(3・4キロ)がまだ未開通である。
 2014年3月、環状2号線の虎ノ門─新橋間(「新虎通り」)、1.4キロメートルが開通した。東京五輪組織委員会がある虎ノ門ビルの脇から「築地虎ノ門トンネル」で新橋に至る区間の部分開通である。新橋から先の築地大橋に至るまで区間は、築地市場の跡地に現在建設中、完成は五輪大会後の2022年である。築地大橋から有明までの区間はすでに完成している。東京都では、未完成の区間を仮設道路を建設して「暫定開通」させて、東京2020大会を迎えるとしている

 環状2号線は、JR神田駅前の神田佐久間町から虎ノ門までは「外堀通り」と呼ばれているが、虎ノ門から臨海部に抜ける部分は通称「マッカーサー道路」と呼ばれている。
 終戦直後の1946年、戦災復興院が、神田佐久間町から新橋まで約9.2キロ、幅100メートルの道路として都市計画決定した。GHQが虎ノ門のアメリカ大使館から東京湾の竹芝桟橋までの軍用道路を要求したという説もあったことから、いつしか「マッカーサー道路」と呼ばれるようになった。  そして「マッカーサー道路」は“五輪道路”となった。
 10月11日に開場する豊洲市場も環状2号線沿いにある。
 環状2号線は、虎ノ門から地下トンネルで新橋、汐留を通過し、築地市場の敷地内の浜離宮恩賜庭園側に地下トンネルの出口を建設して地上に出る。そして高架道路にり、築地大橋で墨田川を渡り、黎明大橋、豊洲大橋を経て、有明で湾岸道路に接続させる計画である。道路の開通のためには、築地市場の移転が条件だ。有明から豊洲までの区間はすでに供用が始まっていて、隅田川の渡る築地大橋など豊洲から築地までの区間の工事はほぼ完成し共用開始を待つばかりである。また汐留から虎ノ門の区間も供用が始まっている。ネックは築地市場区間だけに絞られた。



環状二号線事業概要 東京都第一工事建設事務所


2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国土交通省の取り組み 国土交通省

 しかし東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転が2年延期となり、12月に予定されていた環状2号線の築地―豊洲間(約2・8キロ)の完成は挫折し、暫定開通に追い込まれた。2020年東京五輪・パラリンピックまでに全線開通させ、臨海部と都心部を結ぶ“五輪道路”のメインルートにするという目論見はもろくも崩れ去った。。
 立候補ファイルでは、環状2号線は、五輪開催時の主要輸送道路として、大会関係者の車両専用通行レーン、「オリンピック・レーン」が設置され、晴海に整備される選手村から10分で新国立競技場に行くことができると公約していた。さらに72%の選手が選手村から各競技会場へ10分以内に確実にアクセス可能な快適な輸送環境を提供するとした。
 しかし、片側1車線の仮設道路の暫定開通で東京2020大会を迎えると、「オリンピック・レーン」を環状二号線に設置はすることは不可能になる。片側1車線しかないと、一般車両が通行止めにしなければならい。豊洲市場関係者の車両を始め一般車両の通行量が多いと予想される環状二号線で、一般車両を通行止めにすれば、周辺は激しい渋滞が発生して収拾できなくなるからだ。
 結局、大会期間中は、1車線の道路を、数千台の輸送バスや大会関連車両は、一般車両に混ざって激しい渋滞の中を通行する光景が繰り広げられることになる。競技の開始時間に合わせて、選手や大会関係者、メディア関係者などを適格に輸送することが果たして可能なのだろうか、深い疑念を抱く。
 「10分で選手村から新国立競技場に」という公約は不可能になった。招致ファイルの公約違反がまた一つ増えそうだ。
 環状二号線以外に、東京ベイエリアと都心部を結ぶ幹線道路は、勝どき橋を渡る晴海通りとお台場経由のレインボーブリッジ、佃大橋を通る佃大橋通りの3ルートしかない。
 晴海通りは、通常でも膨大な通行台数でも渋滞の“名所”で、信号も多く、五輪大会関係の車両が加わったらまったく動きがとれない状況が発生する懸念があり、立候補ファイルでは、大会関係者の輸送ルートから外されていた。
 レインボーブリッジは、立候補ファイルでは、環状二号線とともに「オリンピック・レーン」を設置し、臨海部と都心を結ぶ主要輸送道路としていたが、片側2車線のため「オリンピック・レーン」の設置は困難で、大会関係車両は一般車両に混ざって通行になる可能性が強い。
 佃大橋通りは、迂回距離が長くなり、時間短縮につながらず、大会関係者車両の通行ルートからは除外されている。


「オリンピック・レーン」「オリンピック・プライオリティ・レーン」の設置計画 首都高速を中心に広範囲に設定 
立候補ファイル 2013年1月7日


「オリンピック・レーン」「オリンピック・プライオリティ・レーン」の設置計画 都心部と臨海部を結ぶルートは環状二号線とレインボーブリッジ
立候補ファイル 2013年1月7日

 また首都高速道路の渋滞も深刻な問題である。
 選手や大会関係者、メディア関係者の輸送は、首都高速道路に頼らざるを得ない。東京都と大会組織員会では、首都高速道路の渋滞は約1.8倍になると予測している。
 渋滞を避けて円滑な輸送を実現させるためには「オリンピック・レーン」の設置である。招致ファイルでは、首都高速道路の都心環状線全線、4号線、5号線、9号線、10号線、11号線、それに湾岸線の一部、そして中央自動車道路の調布インターチェンジまでの区間などに、2車線の内、1車線に「オリンピック・レーン」を設置する計画だった。
 しかし、首都高速道路は片側2車線だが、ジャンクション区間ではほとんどが1車線となるので、専用レーンは設置できないため、ジャンクション区間は、一般車両に混ざって通行しなければならない。このため、本線に「オリンピック・レーン」を設置しても、ジャンクション区間を先頭に大渋滞が本線上に発生し、首都高速道路全体がマヒ状態に陥る可能性がある。首都高速道路で「オリンピック・レーン」を設置すると、むしろ渋滞に巻き込まれて、悪影響が出ることことが明らかになっている。
 結局、首都高速道路では、五輪大会関係の車両は、ほとんどの区間を一般車両に混ざって通行せざるを得ない。
 残された首都高速道路の渋滞解消対策は、通行量を削減することだある。
 東京都と大会組織員会では、大会期間中の交通量を、全体で「15%削減」することを目標に「交通需要マネージメント(TDM)」に取り組むが、果たして「15%削減」が実現するのか、確実とはまったくいえない。「15%削減」は物流関連、企業、市民などに、協力を依頼するあくまで「お願い」ベースで達成しようとする施策で、強制力を伴う施策ではない。
 また「15%削減」が実現できても、朝夕の時間帯やエリアによっては渋滞が発生する可能性が大きい。
 このため東京都と大会組織委員会では、朝夕のピーク時などには、入り口の閉鎖や車線規制、一部区間の通行止め規制や、東名高速など首都圏外から流入する一般車両を規制する方針も検討している。
 ところが、入り口の閉鎖や車線規制、通行止め、流入規制を行うと大量の車両が一般道路に殺到し大渋滞になることは明らかだ。
 五輪大会開催のために、一般市民の生活に大きな影響を及ぼす交通規制は問題が多い。誰のための東京2020大会なのか、激しい批判を浴びるのは必至である。
 築地市場の移転が2年遅れたことで、東京大会の輸送対策問題に一気に暗雲が立ち込めている。

臨海部交通幹線の“切り札” BRT 本格運行は五輪開催後
 東京都では、環状2号線を利用して、都心から勝どきを経由して選手村、豊洲市場、国際展示場、豊洲に至る地域において、五輪開催時には五輪関係者の輸送力を確保し、五輪開催後は、通勤・通学・観光、企業活動などの需要に対応するために、都心と臨海部とを結ぶBRT整備計画を具体化していた。とりわけ五輪開催後の選手村再開発で誕生するニュータウンの住民の重要な交通インフラにする計画である。
 BRTとは、「Bus Rapid Transit」の略で、連節バスやICカードシステムを導入し、道路改良等により路面電車と比較して遜色のない乗り心地と大きな輸送力の実現が可能だ。またバスを使用するので柔軟性兼ね備えた新しい都市交通システムで、地下鉄建設に比べて整備投資の負担がはるかに少ない。
 BRTは都心部と臨海部を結ぶ新たな交通幹線として期待を集めている。



リオデジャネイロ五輪で導入されたBRT ITDP


都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する基本計画 東京都都市整備局

BRTの運行計画は?
 BRTサービスは、表定速度を現状の都バスの約11kmに対して、倍の速度の約20km/h以上を目標として、運行回数は朝夕のピーク時では最短で3分~4分間隔、地下鉄並みに朝5時頃から夜12時頃までの運行とし、定員130人の連節バスを使用することで、将来的には一日10万人以上の輸送力の確保が可能としている。
 BRTの運行は、虎ノ門や新橋から、勝どき、選手村、国際展示場、豊洲の4路線を開設し、ピーク時輸送力(時間)は、新橋-勝どきで4000人以上、新橋-選手村で3000人~3999人、新橋-国際展示場で1000人~1999人を想定し、1日の輸送力は合計10万人以上を確保、都心部と臨海部を結ぶ主要幹線にする計画だ。
 BRTの都心部の拠点は、虎ノ門である。環状二号線の「築地虎ノ門トンネル」の脇にある虎ノ門ビルズの1階には、面積約1000平方メートルのバスターミナルが設置され、BRTの都心部の拠点となる。バスターミナルには成田・羽田空港シャトルバスの発着や地下鉄日比谷線の新駅、虎ノ門駅(2020年供用開始予定)が直結される。東京2020大会に向けた交通網整備の中核である。


虎ノ門ヒルズの1階に設けられるバスターミナル 森ビル

 BRTの停留所は、都心部には虎ノ門、新橋、東京、銀座(検討中)、臨海部には、勝どき、晴海三丁目、選手村(晴海五丁目)、豊洲駅、市場前駅、有明テニスの森駅、国際展示場駅、東京テレポート駅、東京国際クルーズターミナル(検討中)に設置する予定である。またターミナル兼車庫を晴海二丁目に整備する計画だ。
 2019年春には、京成バスと東京都などで新会社を設立し、2020年度、東京大会前に、プレ運行(第一次)として、第一次運行ルート(虎ノ門-新橋-勝どき-晴海二丁目)を開設する予定だ。新橋-勝どき間の目安所要時間は約10分、使用するバスは、燃料電池バス(単車)と連結バス(BRT)である。
 当初計画では、2019年度にプレ運行を開始するとしていたが1年遅れのスタートである。
 そして2020年東京大会開催時も第一次運行ルートのサービスに留まることが決まった。
 2020年東京大会開催後には、幹線ルート(虎ノ門-新橋-勝どき-市場前-有明テニスの森-国際展示場-東京テレポート)や晴海・豊洲ルート(虎ノ門-新橋-勝どき-晴海三丁目-晴海二丁目-豊洲-市場前)、勝どきルート(新橋-勝どき)が加わり、プレ運行(第二次)を開始する。
 東京ビックサイトへの延伸はイベント開催時に検討するとともに、国際クルーズターミナルへの延伸も今後検討するとしている。
 そして選手村再開発が終わり、環状二号線が完全開通後の2022年以降には、選手村ルート(新橋-選手村地区[晴海五丁目])を開設し、最終的には合計4ルートを運行する計画である。
 さらに銀座・東京駅への延伸も今後検討するとしている。
 運行本数と輸送力(平日ピーク時)でについては、勝どき-新橋間で、プレ運行開始時は、1時間に6本で約600人、しかし運行速度は、一般車両に混ざってい走行するために時速11~15キロメートルとなり、BRTのメリットは発揮できない。
 五輪開催後の本格運行開始時には、1時間に20便(幹線ルート/6便、晴海・豊洲ルート/6便、勝どきルート/2便、選手村ルート/2便 約3分間隔)で、約2000人という運行計画をたてている。環状二号線が片側二車線で完全開通するので、BRTの専用レーンが設置可能で、運行速度は、路線バスの倍の時速約20キロメートルで運行が可能になるとしている。
 連結バスを使用するBRTのスムーズな運行を確保するためには、BRT専用レーンの設置が必須で、BRTの本格運行は、環状二号線の片側二車線の完全開通を待たなければ
ならないのである。
 五輪大会開催時は、環状二号線は片側1車線の暫定開通でBRTの運行に必要な専用レーンの設置は不可能になった。
 肝心の五輪大会開催時には、BRTは目論見に反して、臨海部と都心部の輸送力改善にほとんど役立たないことが明らかになり、五輪開催の輸送対策に痛手となった






プレ運行(第一次)


プレ運行(第二次)


本格運行開始時


BRT停留所


都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する事業計画 東京都都市整備局/京成バス株式会社   2016年4月

選手村は“陸の孤島”?
  環状2号線が開通しないと、都心部と臨海部の道路は大渋滞になるだろう。新たな公共交通機関として期待されているBRTの運行は頓挫する懸念も生まれている。運行は開始できたにしても、大幅なサービス低下は必至である。

 一番の問題は、公共交通機関のない選手村エリアだ。
 晴海地区の埋め立て地に建設される選手村は、工事費約954億円を想定して、14~17階建ての22棟のマンション型の施設を建設する。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。選手村の整備計画は素晴らしい。
 五輪開催時は、選手村の選手や大会関係者は専用バスで移動するので、BRTへの依存度は少ないだろう。
 しかし、五輪開催後の選手村再開発にあたってはBRTの開通は必須である。
 選手村は、大会後、住宅として供給する計画で、住宅棟22棟、超高層住宅棟2棟、商業棟1棟を整備して、約5600戸、1万2000人が暮らすのニュータウンに衣替えする。開発経費は、民間事業者の出資を促し、国や都の財政負担なしに整備する方針だ。
 日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指すとしている
 しかし、このニュータウンは、環状2号線が完成しないと“陸の孤島”になる恐れが大きい。輸送力の大きなBRTの運行が始まらないと1万人を超える市民の足が確保できない。路線バスでは輸送力が追いつかないだろう。

 問題は選手村のニュータウンだけではない。臨海部では、各所でマンション、高層オフイスビル、商業施設の建設ラッシュが続いている。臨海部は、日中や夜間の人口が急激に増加し、輸送力が追いつかなる懸念が大きい。そこでBRTのような新都市交通システムに期待が集まっているのである。
 しかし、環状二号線が片側1車線の暫定道路では、たとえBRTの運行が始まってもBRT専用レーンが設置できず、激しい交通渋滞に見舞われて十分なサービスを維持できない。臨海部の住民にとって悲惨なのは環状二号線が完全開通する2022年までの間である。

問題はさらに深刻 “陸の孤島”海の森公園 
 東京五輪のボート・カヌー競技場が整備される海の森公園は、ごみと建設残土で作られた中央防波堤内側の埋立地で、1230万トンのごみが高さ約30メートルにわたって積み上げられた“ごみ山”だった。
 この土地を東京都は緑あふれる森林公園にして東京湾の玄関口にふさわしい臨海部のランドマークにしようとするのが海の森プロジェクトである。工事は2007年から始まった。広さ約88ヘクタール、日比谷公園の約5.5倍の広大なスペースに約48万本の木々が植えられ、「海の森」にする計画だ。
 この海の森公園の防波堤内の埋立地に挟まれた水路を締め切る形でボート・カヌー競技場施設を約491億円で整備する計画だ。
 しかし、この開催計画には、現状では大きな問題がある。選手や大会関係者、観客の輸送機関の整備である。
 海の森公園は、東京湾の埋めた地の最先端、とにかく都心部から遠い。しかも地下鉄などの鉄道がない。道路は、江東区若洲と大田区城南島結ぶ東京港臨海道路とお台場経由で都心部に至る東京港臨海道路(青海縦貫線)、更に2021年には、有明地区に至る東京港臨海道路(南北線)が、総工費約1100億円の巨費を投じて完成する。この内、東京港臨海道路は、城南島から海の森公園を抜けて、東京ゲートブリッジを通り、若狭海浜公園経由で千葉臨海部につながる。東京港臨海道路は、基本的に大田区や羽田空港、京浜地区から千葉臨海部に抜けるバイパスであり、都心部と海の森公園を結ぶ道路ではない。
 海の森公園と都心部を結ぶ道路は、東京港臨海道路(青海縦貫線)と建設中の東京港臨海道路(南北線)である。しかも、隅田川を渡って都心部に入るには、環状二号線の暫定道路や晴海通り、レインボーブリッジ、佃大橋しかない。
 朝晩に集中する選手や大会関係者、観客などの都心部からの輸送はどうするのだろうか?
 いずれにしてシャトルバスの臨時便で対応する他ないが、湾岸部の激しい渋滞でスムーズな運行は確保できるのだろうか、海の森公園の“陸の孤島”問題は深刻である。
 


海の森水上競技場 出典 東京都五輪準備事務局

臨海部の公共交通機関の大動脈「りんかい線」
「りんかい線」は、大崎駅から新木場まで、全長12.2km、大井町、品川シーサード、天王洲アイル、東京テレポート、国際展示場、東雲の8駅がある東京臨海副都心の大動脈だ。
長さ20メートルの車両の10両編成、1両編成の定員は約1300人である。ピーク時には4分間隔で、1時間に最大15本程度、運転可能としている。現状では、ピーク時には1時間に11本、1日143本が運転されている。輸送能力は、1時間に最大1万9500人、1日で約20万人程度とされている。
 しかし、沿線にはフジテレビや東京ビックサイト、商業施設や物流施設、工場などがあり、朝晩の通勤時間帯は既に相当混雑している。
有明テニスの森や有明BMXコース、有明体操競技場、有明アリーナ、お台場海浜公園、それに東京ビックサイトに設置されるIBC/MPCに行く利用客が多いだろう。
 五輪開催時には、臨海部の主力交通機関になるだろう。




観光客に大人気 「ゆりかもめ」 輸送力には難点
「ゆりかもめ」は、新橋駅から豊洲駅まで、全長14.6km、お台場海浜公園、台場、国際展示場正面、有明テニスの森、市場前(豊洲市場)などの駅がある。
ピーク時には4分間隔で、1時間に最大15本の運行が可能で、1両編成の定員は300人~350人、輸送能力は1時間で最大約5250人程度、1日で約11万人程度とされている。
「ゆりかもめ」の沿線にはフジテレビや東京ビックサイト、有明テニスの森、お台場海浜公園、船の科学館など施設があり、土日・祝日は大勢の乗客で、車体のサイズが小さく、編成も短いので、車内はいつも満杯。地下を走る「りんかい線」とはちがって、高架の軌道を走るゆりかもめは臨海部が見渡せるので、観光客には圧倒的な人気だ。
 五輪開催時には、競技場を訪れる観客を始め、大会関係者やメディア関係者でホームは乗客であふれ、車内は超満員で、いつ乗れるのかわからないような状況が発生する懸念が大きい。とりわけ乗客の集中する朝晩は深刻だろう。
 「ゆりかもめ」は将来の輸送能力増強を見込んで、ホームの延長用に駅周辺のスペースに余裕を持たせてあり、線路の間に駅を伸ばすスペースを残している。現在6両編成を10両編成程度にすることは可能と見られている。それでも輸送力は不足し混雑緩和にはつながらない懸念が残る。五輪競技場集中地域の主力輸送機関としては十分な輸送能力に欠くと思われる。






晴海エリアのアクセス 都営地下鉄大江戸線
 大江戸線は門前仲町、月島、勝どき、築地市場などに駅があるが、沿線に東京五輪の施設はなく、選手村も海を隔てた隣の晴海エリアで駅から遠く、東京五輪開催時の輸送力にはあまり貢献しないだろう。
 2016年9月28日、森組織委員会会長は、突然、築地市場の豊洲市場移転後に生まれる跡地に乗用車約4000台とバス約1000台、合計約5000台の五輪関係車両の駐車場を設けるとテレビ番組で発言し波紋を呼んだ。
 2017年12月26日、東京都はバスや乗用車を収容する車両基地として築地市場跡地を含め、都内や臨海部などに7カ所を整備する計画を明らかにした。
 築地市場跡地は、メインの車両基地となり、バスと車両、計約2700台、江東区若洲にはバス約700台、江東区新砂には車両、約600台を駐車できるようにする。また中央区や港区、新宿区の4カ所は一時待機場として整備し
、車両基地の総面積は約30ヘクタールとなり、その大半が都有地としている。
 東京都では、築地市場跡地には駐車場の他に運転手の食堂、管理事務所なども整備する計画である。
 築地市場跡地に車両基地が整備されることになり、築地市場駅のある大江戸線は輸送関係者の有力な交通機関になると思われる。



辰巳、夢の島のアクセスを確保 東京メトロ有楽町線
  有楽町線は、辰巳地区にあるオリンピック アクアティクスセンターや辰巳国際水江場、夢の島公園のアチェリー会場にアクセス可能な唯一の公共交通機関である。
 しかし、臨海副都心地区の有明エリアや晴海・豊洲エリアにとっては、距離があるため五輪開催時には公共交通機関としての役割はあまり果たさせない。
 江東区では、有楽町線の豊洲駅から、東陽町を経て、住吉駅まで至る地下鉄8号線の建設計画の検討を進め、2010年から江東区では建設基金の積み立てを開始している。全長約2.5キロメートル、総工費約900~1200億円で、一日約20万人の利用客を見込む。しかし、まだ建設開始の見込みはたっていなしい。





オリンピックアクアティクスセンター  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

 次世代へのレガシー(未来への遺産)を目指した臨海副都心開発の目論見も十分な交通インフラが整備されていない限り“陸の孤島”となり、負のレガシー(負の遺産)の象徴になるだろう。
 リオデジャネイロ五輪の準備で、東京大会関係者やメディアは五輪施設の整備の遅れや大会運営の不備、治安の悪さ、政治混乱などネガティブ・チェックを頻繁に報道した。リオデジャネイロの市街地からオリンピックパークを結ぶ鉄道の完成が開会式直前になったことも批判の対象だった。しかし、開幕直前に完成すればまだ上々だろう。振り返って東京五輪の準備状況を冷静に見てみよう。原因はともあれ五輪の交通インフラの要である環状2号線はそもそも五輪開催までに完成しない。五輪大会開催の輸送幹線となる首都高速は、開催時には約1.8倍の渋滞が発生するとして、交通量全体の「15%削減」を掲げ、物流業界、企業、市民に協力を要請し始めているが、「15%削減」が達成できるかどうか、まだ確実ではない。2020東京大会の課題は、暑さ対策と交通渋滞対策に絞られてきた。
 そしてその双方の課題に決め手が未だに見いだせない。
 日本にリオデジャネイロ五輪を批判する資格はない。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと2年を切った。まさに正念場である。




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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年9月28日 初稿 
Copyright (C) 2016 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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