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東京オリンピック レガシー 負のレガシー 負の遺産 White Elephant ホワイト・エレファント Legacy

2018年11月09日 06時28分23秒 | 東京オリンピック

東京オリンピック レガシー(未来への遺産)
次世代に何を残すのか?




東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011千億円支出 組織委公表の倍以上に膨張 会計検査院指摘
「1725億円」は五輪開催経費隠し 検証・国の会計検査院への反論 青天井体質に歯止めがかからない




2020年東京オリンピック・パラリンピック
“レガシー”の実現こそ最優先の課題だ

 国際オリンピック員会(IOC)は、オリンピック競技大会を開催するにあっって、“Legacy(レガシー)”という理念を強調する。
 「レガシー」とは、単にスポーツの分野だけでなく、社会の様々な分野に、“有形”あるいは“無形”の“未来への遺産”を積極的に残し、それを発展させて、社会全体の活性化に貢献しようとするものである。 
 その背景には、毎回、肥大化する大会規模や商業主義への批判、開催都市の巨額の経費負担などへの危機感がある。
オリンピックは、単に競技大会を開催し、成功することがけが目的ではなく、開催によって、次世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略が求められる。
 2020年東京五輪・パラリンピックでは、直接経費だけでも「1兆3500円」(予備費を入れると1兆6500億円)、東京都のインフラ整備などの五輪関連経費が「8100億円」、会計検査院が指摘した国の支出が「8000億円」、合わせて「3兆円」の巨費が投入される大イベントである。「3兆円」のレガシーを一体どんな形で実現しようとしているのか?   大会開催で「負のレガシー」(負の遺産)を残すことは決して避けなければならない。残された時間はあと2年を切った。




東京都 五輪関連経費 8100億円計上 開催経費総額は2兆円超
 2018年1月、東京都は新たに約8100億円を、「大会関連経費」として計上すると発表した。これまで公表していた「大会経費」の1兆3500億円、これで五輪開催経費は総額で約2兆1600億円に達することが明らかになった。
 「大会関連経費」の内訳は、バリアフリー化、や多⾔語化、各種ボランティアの育成・活⽤、教育・⽂化プログラムなどや都市インフラの整備(無電柱化等)、観光振興、東京・⽇本の魅⼒発信などである。
 問題は、膨張した五輪開催経費を削減するためのこれまでの東京都、国、組織委員会の取り組みが一瞬にして消え去ったことである。“コンパクトな五輪”の約束は一体、どこにいったのだろうか。
 未だに明らかにされていない国の“五輪開催経費”も含めると3兆円は優に超えることは必至だろう。
 依然として五輪開催経費の“青天井体質”に歯止めがかからない。

  国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪の肥大化批判に答えるために「2013 OLYMPIC LRGACY」を採択した。巨額な開催経費の負担に耐え切れず立候補する開催地がなくなるのではという危機感があった。
 そのポイントは、「開催費用を削減して運営の柔軟性を高める」、「既存の施設を最大限活用する」、「一時的(仮設)会場活用を促進する」、「開催都市以外、さらに例外的な場合は開催国以外で競技を行うことを認める」などである。 
 そして2020東京大会を「アジェンダ2020」を最初に適用する大会と位置付けている。2020東京大会は「世界一コンパクト」な大会を宣言している。その意気込みはどこにいったのか?



五輪開催経費 1兆3500億円 350億円削減 組織委
 2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は12月22日、大会経費について、今年5月に国や東京都などと合意した経費総額から更に350億円削減し、1兆3500億円(予備費を含めると最大で1兆6500億円)とする新たな試算(V2)を発表した。
 施設整備費やテクノロジー費など会場関係費用については仮設会場の客席数を減らしたり、テントやプレハブなど仮設施設の資材については海外からも含めて幅広く見積もりを取り、資材単価を見直したりして250億円を削減して8100億円とし、輸送やセキュリティーなどの大会関係費用については100億円削減して5400億円とした。
 開催経費の負担額は東京都と組織委が6000億円、国が1500億円でV1と同様とした。
 2016年末のV1予算では1兆5000億円(予備費を含めると最大で1兆8000億円)としたが、IOC調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮を求めており、組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。



東京都の五輪施設整備費 1828億円 413億円削減
 2017年11月6日、東京都は新たに建設する8つ競技会場の整備費は合計1828億円で、これまでの2241億円から413億円削減すると公表した。

 五輪施設整備費は、五輪招致後の策定された当初計画では4584億円だったが、舛添元都知事が経費削減を行い、夢の島ユース・プラザ゙・アリーナA/Bや若洲オリンピックマリーナの建設中止を行うなど2241億円に大幅に削減している。
 2016年夏、小池新都知事は、五輪施設整備費の「見直し」に再び乗り出し、「オリンピック アクアティクスセンター」(水泳)、「海の森競技場」(ボート/カヌー)、「有明アリーナ」(バレーボール)の3競技場は、合計2125億円の巨費が投じられるとして再検討に取り組んだ。とりわけ「海の森競技場」は、巨額の建設費に世論から厳しい批判を浴び、「見直し」対象の象徴となった。
 小池都知事は都政改革本部に調査チーム(座長上山信一慶応大学教授)を設置し、開催計画の“徹底”検証を進め、開催費総額は「3兆円を超える可能性」とし、歯止めがなく膨張する開催費に警鐘を鳴らした。そして3競技場の「見直し」を巡って、五輪組織員会の森会長と激しい“つばぜり合い”が始まる。
 一方、2020年東京大会の開催経費膨張と東京都と組織委員会の対立に危機感を抱いた国際オリンピック委員会(IOC)は、2016年末に、東京都、国、組織委員会、IOCで構成する「4者協議」を開催し、調停に乗り出した。
 「4者協議」の狙いは、肥大化する開催経費に歯止めをかけることで、組織委員会が開催経費の総額を「2兆円程度」としたが、IOCはこれを認めず削減を求め、「1兆8000億円」とすることで合意した。しかし、IOCは“更なる削減”を組織委員会に強く求めた。
 小池都知事は、結局、焦点の海の森競技場は建設計画は大幅に見直して建設することし、水泳、バレーボール競技場も見直しを行った上で整備することを明らかにし、「アクアティクスセンター」(水泳)は、514~529億円、「海の森水上競技場」(ボート/カヌー)は 298億円、「有明アリーナ」(バレーボール)は339億円、計1160億円程度で整備するとした。

 今回、公表された整備計画では、小池都知事が見直しを主導した水泳、バレーボール、ボート・カヌーの3競技会場の整備費は計1232億円となり、「4者協議」で公表した案より約70億円増えた。
 「アクアティクスセンター」では、着工後に見つかった敷地地下の汚染土の処理費38億円、「有明アリーナ」では、障害者らの利便性を高めるためエレベーターなどを増設、3競技場では太陽光発電などの環境対策の設備費25億円が追加されたのが増加した要因である。
 一方、経費削減の努力も見られた。
 「有明テニスの森」では、一部の客席を仮設にして34億円を減らしたり、代々木公園付近の歩道橋新設を中止したりして23億円を削減した。
 この結果、計413億円の削減を行い、8つ競技会場の整備費は合計1828億円となった。
 五輪大会の競技場整備費は、当初計画では4584億円、舛添元都知事の「見直し」で2241億円、そして今回公表された計画では1828億円と大幅に削減された。

 新たな競技場の整備費が相当程度削減されたことについては評価したい。
 しかし最大の問題は、“五輪開催後”の利用計画にまだ疑念が残されていることである。
 海の森競技場では、ボート/カヌー競技大会の開催は果たしてどの位あるのだろうか。イベント開催を目指すとしているが成果を上げられるのだろうか。
 「アクアティクスセンター」は、すぐ隣に「辰巳国際水泳場」に同種の施設があり過剰な施設をどう有効に利用していくのか疑念が残る。
 さらに8つの競技場の保守・運営費や修繕費などの維持費の負担も、今後、40年、50年、重荷となってのしかかるのは明らかである。
 小池都知事は、膨張する五輪開催経費を「もったいない」とコメントした。
 8つの競技会場を“負のレガシー”(負の遺産)にしないという重い課題が東京都に課せられている。











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リオデジャネイロ五輪開会式 Rio2016

破綻 リオデジャネイロ五輪の“レガシー”
 <2016年8月に開催されたリオデジャネイロ五輪では、日本は過去最多の金12、銀8、銅21の計41個のメダルを獲得し、テレビ中継にくぎ付けになった。
 そのリオデジャネイロで、半年足らずで、オリンピック施設の崩壊が急速に始まっている。開催都市が掲げたレガシー・プランは一体どこへ行ったのだろうか。
 「宴の後」は、冷酷である。
 リオデジャネイロ五輪の競技場は、マラカナン地区(4競技場)とコパカバーナ地区(選手村、4競技場)、バーラ・ダ・チジュッカ地区(オリンピック・パーク 15競技場)、デオドロ総合会場(9競技場)の三つに地区に32の競技施設が整備された。
 市や大会組織委員会は、オリンピック開催後のレガシーについて、開催都市や国は、長期にわたってレガシーの恩恵が残されると宣言していた。
ニューヨーク・タイムズの報道によると、オリンピックパークにあるいくつかのスタジアムの入り口は板で封鎖され、ネジなどがグラウンドに散乱し、ハンドボールの競技場は鉄製の棒でふさがれている。IBC(国際放送センター)は半壊状態、練習用の水泳プールはゴミや泥にまみれていると伝えている。
 リオ五輪のシンボル、開会式と閉会式が開かれたマラカナン・スタジアムでは今では芝生が枯れて茶色になり、観客席は数千席も壊されてしまい、100万ドル近い電気代が滞納状態になっている。
 1900万ドル(約21億円)で建設したゴルフコースは、今ではプレーをする人はいなく、打球の音よりも鳥の声がけたたましく聞こえているという。 採算が合わず管理会社が即時撤退する可能性が浮上している。
 リオ市郊外のデオドロ地区は、主会場に次いで2番目に多くの五輪施設がつくられた。カヌーのスラロームコースは、スイミングプールとして一般に開放された。しかし、昨年暮れから一般の利用は止めている。
 選手村の計31棟の高層宿舎ビル(17階建て、計3604戸)は、五輪後、高級マンションとして売却されるはずだった。ところが、実際に売れたのは全体の10%に満たない。
 リオデジャネイロ市は「ホワイト・エレファント(white elephant=維持費がかかるだけの無用の長物)にはならない」と公約していた。 
 テコンドーやフェンシングの競技場は五輪後、学校の校舎に改装することになっていた。他の二つの競技場も別の場所に移築し、四つの学校として再利用する計画だった。しかし、どれもまだ実現していない。
 リオ市は五輪後、オリンピックパークの運営を民間に任せるためのオークションを開いた。だが、入札に加わった会社は一つもなかった。このため運営経費などの財政負担は、結局、中央政府のスポーツ省が担うことになった。
 競技場施設の荒廃が進む背景には、開催都市や国の深刻な財政的危機がある。
 レガシーを実現するための新たな支出がまったく不可能なのである。レガシーの実現にはさらに追加経費が必要ことを忘れてはならない。

新設競技場 維持管理は次世代の負担に 東京大会のレガシーは?
 東京大会の競技場や施設では、新国立競技場、オリンピック アクアティクスセンター、海の森水上競技場、有明アリーナ、葛西臨海公園、大井ホッケー競技場、武蔵野森総合スポーツ施設などが整備される。
 五輪開催後、施設をレガシーとして維持するためには、維持管理費や修繕費、大規模改修費などの後年度負担が確実に生まれる。入場料収入や施設使用料で採算をとることができれば問題ないが、結局、公費負担をせざるを得ないだろう。次世代の「負のレガシー」になる懸念が生まれる。

 1964年東京大会のレガシーは、東海道新幹線、首都高速道路、地下鉄日比谷線、そしてカラーテレビだったとされている。
 そして2020年東京大会のレガシーとしてクローズアップされているのは「世界最先端のICT社会の実現」である。2020年をターゲットに、スマート都市、AI/IoT社会の実現、自動走行自動車、ロボット、自動翻訳機、4K/8K、AR/VR、第五世代移動通信5Gなど国、企業、研究機関が総力を挙げ取り組んでいる。
 いずれも次世代の日本の経済基盤を支える大黒柱で、世界各国に後れをとることは許されないだろう。
 1964年東京五輪では、大会開催を契機に日本の高度成長を確かなものにした。
 2020年東京五輪では、確実に少子高齢化を迎える次の時代の安定成長を確かなものにするレガシーを残すことを期待したい。

2017年7月1日 (月刊ニュメディア 8月号 加筆)





クローズアップされた“負のレガシー(負の遺産)”

 「“負の遺産”を都民におしつけるわけにはいきませんので」
 小池都知事は、こう宣言した。

 2016年9月29日、東京五輪・パラリンピックの開催経費の妥当性を検証している東京都の「都政改革本部」の調査チームは、大会経費の総額が「3兆円を超える可能性がある」とする報告書を小池百合子知事に提出した。都が整備を進めるボート会場など3施設の抜本的見直しや国の負担増、予算の一元管理なども求めた。
 これに先立ったって、 東京五輪・パラリンピックの関係組織、大会組織委員会や東京都、国、JOCなどのトップで構成する調整会議が午前中に、文部科学省で開かれ、小池都知事は、調査チームのまとめた調査報告書を報告した。
会議で小池都知事は、「改革本部の報告書については、大変に中味が重いものなので、それぞれ重く受け止めていると思う。これまでどんどん積みあがってきた費用をどうやってコストカットし、同時に、いかにレガシーを残すか、そういう判断をしていきたい」と述べた。
 これに対し、森組織委会長は「IOCの理事会で決まり、総会でも全部決まっていることを、日本側からひっくり返してしまうということは極めて難しい問題だろうと申し上げておいた」苦言を呈した。
 小池都知事は、「“負の遺産”を都民におしつけるわけにはいきませんので」と応じた。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催経費は、「3兆円超」とされている。これだけ巨額の経費を使い開催する東京五輪は、レガシー(未来への遺産)にしなければならないのは疑問の余地はない。決して、負のレガシー(負の遺産)として次世代に残してはならいのは明白だ。大会が開催されるのは、オリンピックで17日間、パラリンピックで13日間、合わせてもわずか30日間に過ぎない。五輪開催後のことを念頭に置かない施設整備やインフラ整備計画はあまりにも無責任である。
 日本は、これから少子高齢化社会がさらに加速する。2040年には総人口の36・1%が65歳以上の超高齢者社会になる。また人口も、2048年には1億人を割って9913万人となり、2060年には8674万人になると予測されている。五輪開催で整備される膨大な競技施設は果たして次世代に必要なのだろうか? また新たに整備される施設の巨額の維持管理費の負担は、確実に次世代に残される。毎年、赤字補てんで公費投入は必至だろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪の肥大化批判に答えるために「2013 OLYMPIC LRGACY」を採択して、開催都市に対して、大会開催にあたってレガシー(未来への遺産)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けた。
 リオデジャネイロ五輪の直前の2016年7月に、大会組織委員会では、「東京2020 アクション&レガシープラン2016」を策定した。
「スポーツ・健康」、「文化・教育」、「復興・オールジャパン・世界への発信」、「街づくり・持続可能性」、「経済・テクノロジー」の5つの柱をあげて、取り組みを進めている。
 しかし、最も肝要な施設整備を巡るレガシー(未来への遺産)については、ほとんど記述がない。新国立競技場を始め、競技施設の相次ぐ建設中止、整備計画の見直しなど“迷走”と“混乱”が深刻化している中で、「アクション&レガシープラン」どろこではないだろう。膨れ上がった開催経費の徹底した見直しを行うべきという都民や国民の声に、どう答えるかが、“レガシー”を語る前提なのは明らかだ。“美辞麗句”の並んだ「アクション&レガシープラン」には“虚しさ”を感じる。
 「世界一コンパクト」な五輪大会を宣言した意気込みはどこにいったのか?
 「都政改革本部」の調査チームの大胆な“見直し”提言で、再び、クローズアップされた“レガシー(未来への遺産)”を、もう一度、考える直すタイミングであろう。
 大会開催まで、後4年を切った。


“肥大化批判” IOC 存続の危機
 国際オリンピック委員会(IOC)もその存在を揺るがす深刻な問題を抱えている。オリンピックの“肥大化”批判である。巨額な開催経費の負担に耐え切れず立候補する開催地がなくなるのではという懸念だ。五輪大会の存続すら危ぶまれている。問われているのは国際オリンピック委員会(IOC)だ。
 2022年冬季五輪では最終的に利候補した都市は、北京とアルマトイ(カザフスタン)だけで実質的に競争にならなかった。2024年夏季五輪でも立候補を断念する都市が相次ぎ、結局、パリとロサンゼルスしか残らなかった。

 2013年、リオデジャネイロの国際オリンピック委員会(IOC)総会で、ロゲ前会長と交代したバッハ会長は、オリンピックの肥大化の歯止めや開催費用の削減に取り組み、翌年の2014年の「アジェンダ2020」を策定する。
 「アジェンダ2020」は、合計40の提案を掲げた中長期改革である。
 そのポイントは以下の通りだ。
* 開催費用を削減して運営の柔軟性を高める
* 既存の施設を最大限活用する
* 一時的(仮設)会場活用を促進する
* 開催都市以外、さらに例外的な場合は開催国以外で競技を行うことを認める
* 開催都市に複数の追加種目を認める 
 そして2020東京大会を「アジェンダ2020」を最初に適用する大会と位置付けている。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピックの存在をかけて改革に取り組む瀬戸際に立たされているのである。

「3兆円」は「モッタイナイ」!
 「3兆円」、都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用だ。これまでオリンピックを取り巻く最大の問題、“肥大化批判”にほとんど向きあわないないままで、開催準備を進めてきたツケが表面化したのある。
 2020東京大会の開催にあたって最も重要なポイントは、次の世代を視野にいれた持続可能な“コンパクト”なオリンピックを実現することである。
 「アジェンダ2020」はどこへいったのか。国際オリンピック委員会(IOC)は、2020東京大会を「アジェンダ2020」の下で開催する最初のオリンピックとするとしていたのではないか。 招致委員会が世界に宣言した「世界一コンパクな大会」はどこへいったのか。
 開催費用を徹底的削減して次世代の遺産になるレガシーだけを整備すべきだ。今の日本に世界が目を見張る壮大な競技施設は不要だし、“見栄”もいらない。真の意味で“コンパクト”な大会を目指し、今後のオリンピックの手本を率先して示すべきだ。
 日本は超少子高齢化社会が突入する。1964年の東京五輪とは“時代”が違う。その“時代認識”を踏まえた東京オリンピック・パラリンピックでなければならない。
 「3兆円」は「モッタイナイ」!



“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革”
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル



「五輪開催の負担に苦しみ続けている長野」
 長野五輪の開催都市、長野市はもともと堅実な財政の自治体とされ、1992年度には約602億円もの基金を蓄えていた。長野市は、五輪開催に向けてこの基金を取り崩し、それでも足りない分を、市債を発行して開催経費をまかなった。
長野市の市債発行額は1992 年度に127億円だったが、1993 年度には 406億円と 3 倍強に膨れ上がった。1997年度末、市債の発行残高は1921億円に膨張した。この借金は市民1人あたり約53万円、1世帯あたり154万円にも上った。長野市の借金の償還ピークは2002年前後で、償還額は年間約230億円にも達した。以後、約20年間、長野市は財政難に苦しみながら、借金を払い続け、ようやく2017年度に完済するとしている。
 さらに長野市には整備した競技場施設の維持管理の重荷がのしかかっている。長野市は、エムウエーブ、ビックハットなど6つの競技場施設を、約1180億円を拠出して整備した。しかし、競技場施設からの収入は約1億円程度でとても施設の維持管理費をまかなうことはできない。毎年、長野市は約10億円の経費を負担し続けている。競技場施設を取り壊さない限りこの負担は永遠に続くだろう。そして、2025年頃にやってくる大規模修繕工事では、さらに巨額の経費負担が発生する。
 そのシンボルになっているのが長野オリンピックのボブスレー・リュージュ会場として使用された“スパイラル”、長野市ボブスレー・リュージュパークである。
 “スパイラル”はボブスレー・リュージュ・スケルトン競技施設として長野県長野市中曽根に建設された。コースの全長は1,700m、観客収容人数は約1万人、101億円かけて整備された。“アジアで唯一のボブスレー・リュージュ競技の開催が可能な会場”がそのキャッチフレーズだ。
 しかし大会開催後は維持管理費の重荷に悩まされている。コースは人工凍結方式のため、電気代や作業費など施設の維持管理に年間2億2000万円もの費用がかかる。ボブスレー・リュージュ・スケルトン、3つの競技の国内での競技人口は合わせて130人から150人、施設が使用される機会は少なく、利用料収入はわずか700万円程度にとどまる。毎年約2億円の赤字は長野市や国が補填している。
 そして建設から20年経って、老朽化も進み、補修費用も増加した。長野市の試算では、今後20年間で、施設の維持管理で約56億円が必要としている。
 長野市では、平昌冬季五輪までは存続させるが、大会終了後は、存続か廃止かの瀬戸際に立たされている。
 一方、長野県も道路などのインフラ整備や施設整備に巨額の経費を拠出した。それをまかなうために県債を発行したが、県債の発行残高は1997年度末で約1兆4439億円、県民一人当り約65万円の借金、1世帯あたり約200万円の借金とされている。借金額は長野県の一般会計予算の規模より大きくなってしまった。
 長野県が借金を完済するのは平成36年度(2025年)、 長野五輪開催から約30年間、払い続けることになる。
 長野五輪の教訓は、一体、どう活かされているのだろうか?

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)第一号か?
 2020年東京大会のキャッチフレーズは「DiscoverTomorrow(未来をつかむ)」である。
 新国立競技場の建設にtotoの財源を充当する方針が進められているが、totoは、地域スポーツ活動や地域のスポーツ施設整備の助成や将来の選手の育成など、スポーツの普及・振興に寄与するという重要なミッションがある。Totoは“スポーツ振興くじ”なのである。仮にtotoを財源に1000億円を新国立競技場の建設に拠出するとしたらtotoの創設精神に反するのではないか?
 オリンピックの精神にも反するだろう。IOCの“レガシー”では、開催地は、大会開催をきっかけに国民のスポーツの振興をどうやって推進していくのかが重要な課題として問われている。東京大会の“レガシー”は、どこへいったのだろうか?
 東京大会コンセプトは「コンパクト」、繰り返し強調しているキーワードである。過去からの資産を大切にしながら明日に向かって進んでいく都市の姿を世界に伝えていくとしている。
 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会での2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致演説は何だったのだろうか。
 新国立競技場が“負のレガシー”のシンボルになる懸念が拭い去れない。

 “レガシーはお金の問題でなく「心」の問題”とする発想も余りにもお粗末だ。美辞麗句だけが並んだ“レガシー・プラン”は無意味だろう。
 次世代に大きな負担を残す五輪開催はもう止めにしたらどうか。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックを“負のレガシー”にしないためにも。




レガシー(Legacy)とヘリテージ(Heritage

 レガシー(Legacy)の単語の意味は、「遺産」、「受け継いだもの」とされ、語源はラテン語の“LEGATUS” (ローマ教皇の特使)という。「キリスト教布教時にローマの技術・文化・知識を伝授して、特使が去ってもキリスト教と共に文化的な生活が残る」という意味が込められているという。どこか宗教的なニュアンスのある言葉である。また、legacy は,財産や資産などや、業績など成果物的なものも言う。遺言によって受け取る「遺産」という意味にも使われる。
 一方、heritage は,先祖から受け継いでいくものというような意味の遺産で,「(先祖代々に受け継がれた)遺産」などと訳されていて、お金に換算したりしない「遺産」をいう。「世界文化遺産」とか「世界自然遺産」は“Heritage”を使用している。
 また、“Legacy”は、「負の遺産」(Legacy of Tragedy)という意味でも使われ、“legacy of past colonial rule”=「植民地支配の『後遺症』」とか、“legacy of the bubble economy”=「バブル経済の名残」とかマイナスの意味が込められた表現にも使用され幅が広い。
 レガシー(未来への遺産)は、正確には“Positive Legacy”と“Positve”を付けて使用している。


登場したオリンピック“レガシー”
 国際オリンピック員会(IOC)は、毎回、オリンピック競技大会を開催するにあっって、“Legacy”という理念を強調する。
 ここでは「未来への遺産」と訳したい。
 この“Legacy”(レガシー)という言葉は、オリンピック100年にあたる2002年に定められた「オリンピック憲章」の中に、新たに掲げられた。

<第1章第2項「IOCの使命と役割」>の14.
・To promote a positive legacy from the Olympic Games to the host cities and countries.
・「オリンピック競技大会の“遺産”を、開催都市ならびに開催国に残すことを推進すること」

 「レガシー」とは、オリンピック競技大会を開催することによって、単にスポーツの分野だけでなく、社会の様々な分野に、“有形”あるいは“無形”の“未来への遺産”を積極的に残し、それを発展させて、社会全体の活性化に貢献しようとするものである。開催都市や開催国にとって、開催が意義あるものにすることがオリンピックの使命だとしている。

 その背景には、毎回、肥大化する開催規模や商業主義への批判、開催都市の巨額の経費負担、さらにたびたび起きる不祥事などへの批判などで、オリンピックの存在意味が問い直され始めたという深刻な危機感がある。

 その反省から、IOCは、開催都市に対して、単に競技大会を開催し、成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求めるようになった。


レガシー(“未来への遺産”)の理念は
 IOCは2013年に、“Olympic Legacy”という冊子を公表した。
 その冒頭に、“What is Olympic Legacy?”というタイトルで、“Legacy”(“未来への遺産”)の理念が記されている。


IOC “Olympic Legacy Booklet”


▼A lasting legacy
 The Olympic Games have the power to deliver lasting benefits which can considerably change a community, its image and its infrastructure.
As one of the world’s largest sporting events, the Games can be a tremendous catalyst for change in a host city with the potential to create far more than just good memories once the final medals have been awarded.

▼持続的」なレガシー(未来への遺産)
 オリンピックは、社会のコミュニティを変え、イメージを変え、生活基盤を変えていく持続的な“恩恵”を与える力がある。オリンピックは世界で最も大規模なスポーツイベントとして、力強いパワーを秘めており、メダル獲得の素晴らしい記憶よりはるかに大きな意味を持つ社会の変革を生み出す“刺激剤”なのである。

 さらに、“Legacy”(“未来への遺産”)の具体的な指標として「5つのタイプ」を挙げている。

・Sporting Legacy         スポーツ・レガシー(未来への遺産)
                          Sporting venues(競技施設)
                          A boost to sport(スポーツの振興)
・Socia Legacy          社会レガシー(未来への遺産)
                          A place in the world(世界の地域)
                          Excellence, friendship and respect (友好と尊崇)
                          Inclusion and Cooperation(包括と協力)

・Environmental Legacy    環境レガシー(未来への遺産)
                         Urban revitalisation(都市の再活性化)
                         New energy sources(新エネルギー)

・Urban Legacy          都市レガシー(未来への遺産)
                         A new look(新たな景観)
                         On the move(交通基盤)
・Economic Legacy       経済レガシー(未来への遺産)
                         Increased Economic Activity(経済成長)

ロンドン・オリンピックのレガシー
 2012年ロンドンオリンピックの開催にあたって、ロンドン市とイギリス政府は次のようなレガシー・プランとアクション・プランを策定した。

ロンドン市が発表したレガシー・プラン、
▼ロンドン市民がスポーツする機会を増やす、
▼ロンドン市民の新たな雇用、ビジネス、ボランティアの機会を増やす
▼東ロンドン中心部の変革
▼持続可能な大会の実現と持続可能な地域社会の発展
▼ロンドンを多様性、創造性、おもてなしのショウケースとする

イギリス政府が策定したアクション・プラン、
▼ イギリスを世界有数のスポーツ大国に
▼ ロンドン東部地域を再開発
▼ 若者世代を活性化
▼ オリンピックパークを環境に配慮した持続可能な生活モデル地域に
▼ イギリスの創造性、協調性、生活・観光・ビジネスのしやすさを世界にアピール

 そして、2013年にイギリス政府とロンドン市の合同報告によれば、
▼スポーツのある健康的な生活
▼ロンドン東部の再生
▼経済成長
▼地域社会を一つに コミュニティー
▼パラリンピック
 以上をロンドン・オリンピック開催の主な“成果”として上げている。



A joint UK Government and Mayor of London report
FACTSHEET LONDON 2012 FACTS & FIGURES NOVEMBER 2012





破綻したTOKYO 2020 招致ファイルのレガシー
 2013年1月7日、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、14項目から成る招致ファイルを国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。
  “DISCOVER TOMORROW”というキャッチフレーズを掲げたこの招致ファイルの冒頭には「ビジョン、レガシー及びコミュニケーション」と章を設け、4ページに渡って大会開催についての基本姿勢を記述している。


東京2020オリンピック・パラリンピック招致ファイル

 その中で「物理的なレガシー」として、施設整備やインフラ整備で首都東京の再活性化を唱えている。
「11の恒久施設」を整備すると宣言しているが、「夢の島ユース・プラザ・アリーナA」は建設中止、「国立霞ヶ丘競技場」は“迷走”に“迷走”を繰り返し当初計画は白紙撤回、「海の森水上競技場」、「オリンピックアクアティクスセンター」は膨れ上がった整備費で、見直しを迫られた。「ポジティブなレガシー」として立候補ファイルに挙げられている競技会場のほとんどすべてが、“混迷”する東京五輪のシンボルになってしまった。
 以後のレガシーファイルでは競技会場関連の記述は消えた。

▼ 物理的レガシー: 東京の新しい中心の再活性化(招致ファイルの抜粋)
 東京の新しい長期計画と完全に一致して、2020年東京大会は東京に有益な物理的レガシーを残す。
2020年東京大会は、新設または改修された競技やエンターテイメントのための会場や施設、新たな緑地を地域にとって重要なポジティブなレガシーとして提供する。それらのレガシーには次のものが含まれる。
・ 2020年東京大会に向けて国立霞ヶ丘競技場、海の森水上競技場、夢の島ユース・プラザ・アリーナA及びB、オリンピックアクアティクスセンターなど、11の恒久会場が整備される。
・ 国立代々木競技場、東京体育館、日本武道館など、1964年オリンピック大会時の施設を含む15の主要コミュニティ・スポーツ施設が改修される。
2020年東京大会の競技会場のうち、21会場は東京の新しい中心となる再生された東京ベイエリアに設置され、主要スポーツエンターテイメント・イベント用の新しい施設とともにレジャーエリアを備える。
 新たに建設される2020年大会の選手村の一部は、大会後、国際交流研究、イベント、共同プロジェクトのためのハブの役割を果たす国際交流プラザとなり、ここには国内外の文化、スポーツ、教育関連の機関が拠点を置くことが検討されている。
 また、重要な国際的レガシーとして、東京にイベント及びスポーツ技術・科学機関を創設することが検討されている。この機関は国際交流プラザに拠点を構える可能性がある。同機関はスポーツやイベントのプレゼンテーション、会場、レガシーの国際的な研究ユニットとなり、オリンピック・ムーブメントやスポーツとイベント・セクターが常に変化を続ける技術や持続可能性の要請に遅れをとらないための一助となる。


大会開催基本計画で示されたアクション&レガシープランの基本理念
 2015年1月23日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会(森喜朗会長)は、東京都内で理事会を開き、大会開催基本計画案を承認した。
 基本計画では、開催開催のスローガンとして““DISCOVER TOMORROW”を掲げ、大会ビジョンの3つのコンセプトして、「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」を示し、アクション&レガシー」の基本理念を明らかにした。そして「2020年は市場最もイノベーティブで、世界にポジティブな変革をもたらす大会」を目指すとした。

■ 全員が自己ベスト
・万全の準備と運営によって、安全・安心で、すべてのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、自己ベストを記録できる大会を実現。
・世界最高水準のテクノロジーを競技会場の整備や大会運営に活用。
ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の「おもてなし」で歓迎。

■ 多様性と調和
・人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。
・東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。

■ 未来への継承
・東京1964大会は、日本を大きく変え、世界を強く意識する契機になるとともに、高度経済成長期に入るきっかけとなった大会。
・東京2020大会は、成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく


アクション&レガシープランの基本理念 2020年東京大会組織委員会

 この基本理念に基づいて、(1)スポーツ・健康(2)街づくり・持続可能性(3)文化・教育(4)経済・テクノロジー(5)復興・オールジャパン・世界への発信-を5つの柱とし、地域スポーツの活性化やスマートエネルギーの導入、東日本大震災の復興状況の世界への発信などに取り組むとし、アクションプランのロードマップも明らかにした。
 16年リオデジャネイロ五輪開幕前に具体的な行動計画をとりまとめ、東京五輪後にもレポートを策定する方針だ。またパラリンピックを2度開催する初の都市となることから、武藤敏郎事務総長は「共生社会、多様性と調和を大会ビジョンに入れているので、重視したい」と話した。




2020年東京大会組織委員会

アクション&レガシープランの「5本の柱」

▼ スポーツ・健康
(1) 国内外へのオリンピック・パラリンピックの精神の浸透
(2) 健康志向の高まりや地域スポーツの活性化が及ぼす好影響
(3) トップアスリートの国際競技力の向上
(4) アスリートの社会的・国際的地位やスポーツ界全体の透明性・公平性の向上
(5) パラリンピックを契機とする人々の意識改革・共生社会の実現

▼ 街づくり・持続可能性
(1)大会関連施設の有効活用
(2) 誰もが安全で快適に生活できる街づくりの推進
(3) 大会を契機とした取組を通じた持続可能性の重要性の発信

▼ 文化・教育
(1) 文化プログラム等を通じた日本や世界の文化の発信と継承
(2) 教育プログラム等を通じたオリンピック・パラリンピックの精神の普及と継承
(3) 国際社会や地域の活動に積極的に参加する人材の育成
(4) 多様性を尊重する心の醸成

▼ 経済・テクノロジー
(1) 大会開催を通じた日本経済の再生と本格的成長軌道への回復への寄与
(2) 大会をショーケースとすることによる日本発の科学技術イノベーションの発信

▼ 復興・オールジャパン・世界への発信
(1) 東日本大震災の被災地への支援や復興状況の世界への発信
(2) 「オールジャパン」体制によるオリンピック・パラリンピックムーブメントの推進
(3) 大会を契機とする日本各地の地域活性化や観光振興
(4) オリンピック・パラリンピックの価値や日本的価値観の発信


アクション&レガシープラン2016を公表
 リオデジャネイロ五輪の直前の2016年7月、組織委員会では、「5本の柱」に基づいて、2016 年から2020 年までの具体的なアクションプランを記述して、「アクション&レガシープラン2016」として策定し公表した。IOC総会で採択された「アジェンダ2020」の趣旨も具体的に大会運営に反映し、東京2020大会を「アジェンダ2020」によるオリンピック改革のスタートの年にするとしている。
 このプランは、2020年まで毎年夏を目処に更新しながら「アクション」を実施し、2020東京大会終了後、「アクション&レガシーレポート」をまとめる。













アクション&レガシープラン2016 東京2020大会組織委員会

 アクション&レガシープランの策定する重要な視点として、「参画」、「パラリンピック」、「2018~2022年の間の大規模大会との連携」を挙げている。
 「参画」では、各ステークホルダーのアクション(イベント・事業等)に対して「認証」する仕組みをリオ大会前までに構築し、多くのアクションが全国で実施され、できるだけ多くの方々、自治体や団体に主体的に参画してもらい大会の盛り上げを図りたいとしている。
 「パラリンピック」では、障がい者の社会参加の促進や多様性への理解の推進などを推進する。
 「大規模大会との連携」では、大会を単なる一過性のイベントとするのではなく、東京、オールジャパン、そしてアジア・世界にポジティブな影響を与え、レガシーとして創出されることを企図し、2018年平昌五輪、2019年ラグビーワールドカップ、2022年北京(中国)などの大規模スポーツ大会との連携を図る計画だ。

アクション&レガシープランの推進体制 

アクション&レガシープラン2016 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

アクション&レガシープラン2016全文
アクション&レガシープラン2017全文

出典  東京2020組織委員会 


「3兆円」のレガシーをどうする?
 2018年10月17日、幕張メッセで開催されたCEATECで、KEYNOTESセッション、「東京2020大会に向けテクノロジー&イノベーション」が催された。モデレーターは太田弘子氏(政策研究大学院教授)、パネラーは古宮正章氏(東京大会組織委員会副事務総長)、黒田 亮氏(内閣府大臣官房審議官)、栗山浩樹氏(オリパラ等経済界協議会運営員会座長)、テクノロジー&イノベーションの観点から、東京五輪大会のレガシーを議論した。
 政府は、2020東京大会開催に向けて、「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフォース」を立ち上げた。
 2020年の東京大会のアクション&レガシープランでは、①全員が自己ベスト、②多様性の調和、③未来への継承の3つの基本コンセプトを掲げ、「史上最もイノベーティブでで世界にポジティブな改革をもたらす大会」にするという目標を打ち出している。
 タスクフォースでは、「Innovation for Everyone」というキャッチフレーズのもとに、「1964年大会は日本を変えた。2020大会は世界を変える」といういささか力の入りすぎた感があるスローガンを掲げている。そして、 競技観戦・観光を「快適」に楽しむ、「環境」の負荷を低減したクリーンな大会の実現、選手・観客・来訪者の「安全」の確保を柱にした9つのプロジェクトを推進するとした。


2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフォース

 このプロジェクトの責任者の黒田 亮氏は、まず、1964年東京大会のレガシーを①交通インフラ(東海道新幹線、首都高速道路、東京モノレール)、②コンピューターを始めて利用して競技の記録を整理、③衛星放送技術、④国立競技場、代々木体育館などを指摘した。
 そして、2020東京大会のレガシーの基本概念は、“Society 5.0”、すべてのモノがつながるIoT、AI=人工知能、ロボット、多言語自動翻訳、顔認証システム、自動走行車、VR/ARなどの新臨場映像体験、水素エネルギー、イノベーションで様々なニーズをサポートする技術であるとした。
 この9つのプロジェクトは、すべて超高齢化社会に突入する日本の持続的な発展に欠かせないイノベーションで、「世界で最高水準のICT社会の実現」という政府のICT戦略そのものである。2020東京五輪大会があろうがなかろうが、日本の成長戦略にとって必須のICTイノベーション戦略である。ICTやSociety 5.0戦略は、すでに官民あげてオールジャパンで取り組みが進んでいる。これを2020東京五輪大会のレガシーとするのは違和感がある。
 一方、古宮正章氏は、日本ならではの細やかな「思いやり」や「おもてなし」の心を養い、レガシーとして残したいとした。こうした発想の方が、次世代のレガシーを考えるにふさわしい。
 2020東京大会のレガシーを考えるにあたって、競技場施設や交通インフラ、社会資本、テクノのロジーなどの有形のレガシーはさることながら、「思いやり」や「おもてなし」などの無形のレガシーを育む姿勢には大賛成である。“箱物主義”レガシーは前世代の遺物である。
 しかし、筆者にとって最大の疑問は、2020東京大会の開催経費、「3兆円」のレガシーはどうなるのかである。新国立競技場、海の森競技場、オリンピックアクアティクスセンターの“赤字”は、誰が負担するのか。本当に市民のための施設になるのか。
 今回のKEYNOTESセッションを聞いていて、2020東京大会の現実の問題と向き合っていないレガシー論議に虚しさを覚えた。
 要は、「3兆円」のレガシーをどうしてくれるのかである。


どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、“ヘリテッジゾーン”と“東京ベイゾーン”と名付けた選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催するとしていた。「世界一コンパクトな大会」の“公約”を掲げて東京に招致に成功したのである。
 「ヘリテッジソーン」には、現在の東京の首都機能があり、1964年東京オリンピックの際に主要な競技場として利用され、2020年東京オリンピックでも主要な競技場となる国立競技場や武道館、東京体育館、代々木競技場もあるからそう名付けたのであろう。国立競技場は、その“巨大”建物が議論になったが、約1625億円(周辺整備を含む)という巨額の経費をかけて建替えられることになっている。新国立競技場は、オリンピック終了後、スポーツ競技会やイベント会場として利用する計画だが、年間約35億円という巨額な維持費をまかなえる収入が確保できるか疑問視する意見もある。また、完成後50年で必要な大規模改修費は約656億円に上るという試算も明らかにしている。はたして、“レガシー”(未来への遺産)になるのか、それとも“負の遺産”になるのか?
 一方、「東京ベイゾーン」、湾岸地区は、2020年東京オリンピック開催をきっかけに、新たに競技場や選手村を建設したり、既存の施設を改修したりするなどなど、開発・整備を進め、“レガシー”(未来への遺産)にしたいとしているが、膨れ上がった施設整備費で、建設中止や整備計画見直しで、“頓挫”寸前だ。
 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
舛添要一東京都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。
 結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは国民である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピック、あと2年、“混迷”はまだ収まりそうもない。

東京オリンピックの“レガシー”(未来への遺産)は?
 1964年の東京オリンピックの“レガシー”は、「東海道新幹線」、「首都高速道路」、「地下鉄日比谷線」、そして「カラーTV」だったと言われている。東京オリンピックをきっかけに、日本は「戦後復興」から、「高度成長期」に入り、そして「経済大国」を登りつめていく。そして「公害と環境破壊」、「バブル崩壊」。
“レガシー“”(未来への遺産)は“有形”のものだけでなく“無形”のものも求められている。
 日本では、「高度成長」の名残りだろうか、ビック・プロジェクトというといまだに“箱モノ”至上主義の神話から脱却できないでいる。競技場や選手村の建設や交通基盤の整備などの必要性については、勿論、理解できる。
 しかし、膨れ上がった開催経費への危機感から、施設整備やインフラ整備は徹底した見直しが必須の状況で、このままでは東京五輪は“破産”する懸念が生まれている。壮大な競技場を建設して、“国威発揚”を図る発想は、“時代錯誤”なのは明白だろう。大会が開催されるのは、オリンピックで17日間、パラリンピックで13日間、合わせてもわずか30日間に過ぎない。五輪開催後のことを念頭に置かない施設整備やインフラ整備計画はあまりにも無責任である。
日本は、これから少子高齢化社会がさらに加速する。2040年には総人口の36・1%が65歳以上の超高齢者社会、2048年には1億人を割って9913万人となると予測されている。五輪開催で整備される膨大な競技施設は果たして次世代に必要なのだろうか?
 2020年東京オリンピックの“レガシー”(未来への遺産)は、“無形”の“レガシー”や“草の根”の“レガシー”をどう構築するかに重点を置いたらと考える。
 今年2月策定された基本計画では、「オリンピック・パラリンピックの価値や日本的価値観の発信」の項目には、“アクションの例”として、「『和をもって尊しとなす』や『おもてなしの心』など日本的価値観の大会への反映」をあげている。
 こうした価値観を、どのように大会に“反映”させるのだろうか? 言葉だけのスローガンにして欲しくないポイントだ。
 “超高齢化社会”を前提にするなら、壮大な競技施設を建設より、一般市民が利用するプールやグランドなどのスポーツ施設を充実させる方が、次世代にはよほど有益で、“レガシー”になるだろう。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、“レガシー“”(未来への遺産)として、我々は次の世代に何が残せるのだろうか?




ロンドン五輪 東京五輪への教訓 ~周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略~~






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年10月7日 2018年10月20日改



Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
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ジャンル:
オリンピック
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