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新国立競技場 会計検査院 JSC 破産寸前 暗雲  

2018年11月09日 06時39分40秒 | 新国立競技場

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(7)
新国立競技場の行方に暗雲
破産寸前日本スポーツ振興センター(JSC)



出典 新国立整備スケジュール 2018年10月12日 JCS


筆者撮影  2018年10月31日


出典 新国立整備スケジュール 2018年9月18日 JCS


出典 新国立整備スケジュール 2018年9月18日 JCS



JSC 794億円の資金不足に 五輪大会開催後の改修計画に見通し立たず
 新国立競技場は、2019年11月末の完成に向けて、順調に工事が進み、2017年度中に地上躯体工事が完了し、現在は屋根工事、内装仕上工事等に着手している。
 新国立競技場の整備は日本スポーツ振興センター(JSC)が実施しているが、スタジアム本体の工事だけではなく、周辺整備や設計・監理に加えて、旧競技場の解体工事、埋蔵文化財調査、計画用地内に所在する日本青年館・JSC本部棟移転、新国立競技場の通信・セキュリティ関連機器や什器の整備など幅広い業務を担う。JSCは2013年度から2017年度までの支払額はすでに計738億余円に達した。五輪大会開催後の改修計画は頓挫寸前である。
 
 2016年7月、安倍首相が旧整備計画の白紙撤回とゼロベースでの見直しが指示し、JSCはすでに締結結していた旧整備計画での設計、工事、監理等に係る21契約のうち、白紙化以前に履行を完了していた13契約を除く8契約の契約を解除した。
 この結果、白紙化以前に完了していた支払額が約29億3988万余円(13契約)、契約解除の精算が約34億9416万円(8契約)、契約解除の伴う損害賠償が約4億2526万円(3件)、合わせて約68億5930万円が、白紙撤回でまったく「無駄遣い」となった。

 新たな建設計画を策定するにあたって、国、東京都、JSCは、これまで曖昧だった新国立競技場の総経費の分担を定めた。
 まず総経費の対象を、スタジアム本体・周辺整備工事や設計・監理費、1590億円と旧競技場の解体工事費55億円の合計1645億円とした。
 1645億円から、JSCが行う上下水道工事費27億円や東京都が負担する道路上空連結デッキ整備費37億円を除き、1581億円を3者の分担対象経費とした。
 1581億円の内、国はその2分の1の791億円を負担し、東京都は4分の1の395億円を負担、残りの395億円については、JSCが所管するスポーツ振興くじの売上金額の一部を財源として充てるとした。
 395億円を負担するためにJSCは、totoの売り上げから特定業務勘定(新国立競技場の建設費勘定)に繰り入れる上限を、売り上げの5%から10%に引き上げ、その一方で、totoの収益から国に納付する国庫納付金の割合を3分の1から4分の1に減らすという救済措置が与えられた。
 国の負担額791億円のうち、359億円は、これまでに国JSCに拠出した国の運営費交付金や政府出資金で、JSCは特定業務勘定に入れて積み立てていた資金を充当する。残りの432億円は、totoの収益から国に納付する国庫納付金の割合を3分の1から4分の1に減らすというJSCに対する救済措置に伴う国の負担金だ。
 新国立競技場整備の財源は、スポーツ振興くじの売り上げの一部、395億円とJSCへの救済措置分、432億円を合わせて827億円をスポーツ振興くじに頼るという結果となり、新国立競技場の総経費の半分以上が、スポーツ振興くじ、「toto頼み」ということになった。




出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院
  
 東京都の負担見込額395億円については、29年度末時点では協定書等は締結されておらず、東京都からの支払も行われていない。JSC法によれば、費用の額及び負担の方法はJSCと東京都が協議して定めることとしており、支払等の期限は定められていない。JSCや東京都によると、今後JSC法に基づいて協議を進めて支払われるとしているが、29年度末時点ではJSCへの入金時期や入金方法等は未定となっている。
 また、JSCは2017年度に五輪特定業務勘定から国立代々木競技場の耐震改修等工事に必要な費用として約7296万円、ナショナルトレニンセンター(NTC)の拡充整備のための用地取得等に係る費用として46億余円を支出している。
 JSCは、こうした支出で、29年度中に資金が不足したことから、スポーツ振興くじ勘定から五輪特定勘定へ50億1000万円の資金を融通した。そして2017年度の決算に当たり五輪特定勘定からスポーツ振興くじ勘定へ「返済」するために民間金融機関から同額の融資を受けた。

 JSCによると、新国立競技場の五輪特定勘定の収入は2020年度までは毎年、110億円程度の収入がある。また2019年度には東京都から分担経費負担額と道路上空連結デッキの整備費用の残額の約431億円が支払わられるとしている。
 一方、第Ⅱ期業務では、Wi-Fi設備、監視カメラ、入場ゲート等の通信・セキュリティ関連機器整備を約27億2715万円で整備したり、国立代々木競技場の耐震改修等工事を実施したりして、支出が膨れ上がり、その結果2018年、2019年の2年度で794億円の資金不足に陥ることが見込まれている。
 JSCは、スポーツ振興くじ勘定などからの資金の融通はこれ以上不可能なことから、2018年4月に311億円を民間金融機関から長期借入金として借り入れた。
 311億円については2023年度までに返済する計画だが、今後借り入れる予定の400億円以上の借入金の返済については、返済が始まる2024年度以降はスポーツ振興くじからのJSCの収入が売上金額の10%から5%に戻され、収入が減少するので、返済期間は長期にわたり、難航することは必至である。
 この収支の見通しはまだ不確定で、想定どおり毎年度110億円程度の収入があるかもまったく不明である。また、東京都からの支払が想定どおり2019年度中に行われるかはまだ未確定だ。JSCの財務状況は、新国立競技場の重い負担で「破産寸前」である。
 こうした状況の中で、巨額の経費が必要とされる2020東京大会開催後の「球技専用」スタジアムへの改修工事計画は頓挫寸前に陥った。
 

出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院


 JSCは、大会終了後に国際サッカー連盟ワールドカップが開催可能にするために、陸上競技用のトラック9レーンを取り外したスペースやスタンドの上部に観客席を増設し、約8万席のスタジアムにして、サッカーやラグビー競技開催することで、観客が「臨場感」溢れた観戦が可能な球技専用スタジアムに改修する計画を打ち出している。また民間事業者へ管理運営業務を委託するコンセッション方式を導入し、民間事業者ノウハウと創意工夫を活用してボックス席の設置などホスピタリティ機能を充実する方針も打ち出している。大会終了後にすみやかに改修を行い、34年後半以降の供用開始を目指すことなどとなっている、 しかし、29年度末時点では財源や工事の内容、スケジュールについては何も決まっていない。国も改修計画の方針は決めたが、肝心の経費はどのくらいかかるのか、財源をどうするのかを明らかにしていない。
 新国立競技場を球技専用の新たなスタジアムに改装するためにはまた巨額の資金が必要となる。一体誰が負担するのだろうか。そもそもその巨額な投資額の採算は合うのだろうか、疑念は深い。現状でも「赤字」は毎年、約24億円だ。
 

出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院


 また新国立競技場の運営管理方式として、2019年中ごろを目途に民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」(公共施設民間委託方式)のスキームを策定し、公募を行い、2020年秋頃を目途に優先交渉権者を選定することしてしている。
 しかし、優先交渉権者の公募に際しては、新国立競技場の図面等を示した募集要項等を公表して民間事業者を募る必要があるが、セキュリティ面の問題から資料の公表は大会終了後の2020年10月頃まではできないというネックがある。
 2020年秋頃の優先交渉権者選定は絶望的だ。
 そもそも新国立競技場の運営を請け負う民間事業者がいるかどうか、疑問が大きい。

 さらに新国立競技場の完成後は維持管理費(点検・清掃費用等の保全コストやエネルギー費用の運用コスト、長期修繕費)、毎年約24億円が必要とされ、民間委託が開始するまでの期間は所有者であるJSCが毎年24億円の赤字負担をしなければならない。
 JSCはこの赤字に持ちこたえることができるのだろうか?




(参考資料 「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院) 




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2018年10月23日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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