Another day comes 紫・電・一・閃 ~今日と違うはずの明日へ~

こんな俺でも いつかは光を浴びながら
きっと笑える 日が来るさ ・・・来るまで生きるぜ(生への渇望)

俺が痴漢に出遭い、絶望するまでの下らん話

2014-08-02 23:20:20 | 自分&俗世間との闘い
久々に更新しようと思った日に限ってクッソみたいな出来事があった。
一応胸糞注意。また、俺の行動にイラッとする可能性大。
俺は甘い。甘すぎるのかもしれない。自分にも、他人にも。だけど信じたかった。
俺に残されていた純粋な心は、否定されて然るべきものなのだろうか。


取り敢えず、人間ならば理性の欠片もない痴漢なんて低脳な事すんな、とだけ言いたい。


コンクールの手伝いに行ってきた俺は、日当が聞いた額より遥かに少ないことに少々苛立ってた。
半分以下だ。行き返りで支払われた分のほぼ全額消し飛ぶわけだし。
……そんな下らん事(生活面では重要なのだが)に神経擦り減らしてるぐらいならよかったんだ。


仕事が終わって帰路に就く。普段なら使うはずもない私鉄に乗り、乗換まで10分少々。
乗換場所に着けば客が雪崩込んでくる。そういう時間だった。みんな疲れてる時間でもある。
だが俺が乗った時にはガラリとしていた。少しばかりの静寂だ。
地下鉄ばかり利用していると、二人席とかは珍しいもので、安心できるいつもの8人掛けへ。
無論そこもガラリとしている。点々と寝ている人や、ひとりでスマホをいじる人。珍しい光景じゃない。
荷物だって席の上に置き放題。そんな状態の中、8人掛けの中程に座った俺は、不審な中年に目がいった。
俺と同時に入ってきたにも拘らず座りもしない。フラフラ動き、キョロキョロしている。
酒に酔っている様子もない。かと言って何らかの障害を持っている訳でもなさそう。ではなぜ?

ほんの30秒程度だったが、たったそれだけだったものの、その動きを見た俺が
「まさか」という疑いの目を向けてしまったのは順当だった。
目線の先には、女、女、女。しかもよく見れば寝ていたり、孤立している人間ばかりじゃないか。
嫌な予感というものは当たるもので、他の席が空きに空いているにも拘らず、
俺の斜め前に座りスマホをいじっていたOLの横に滑り込むように座った。
3人座れるところに2人。一人分の間を空け、まるでなにも不自然ではないかのような顔をして。
流石に「えっ」というOLの反応はあったものの、日本人特有の事なかれ主義は、
自らに火の粉など降りかからないであろうという確証のない平穏無事の先入観をもたらす。


中年の動きがおかしい。
OLのスマホの画面を何度も覗き、ジロジロと足を見続けている。確実に尻の方へと左手が寄っていく。
痴漢だ―――――――
いや、そんなこと解ってはいた。認めたくなかっただけだった。
人間としてあるべき理性がぶっ飛んだ冴えない中年が今、目の前で犯罪に手を染めようとしていることを完全に知覚した俺は、
一瞬にして思考を巡らせた。

俺は悪人に対し同情心がある。それは、自らの報われなさ、不甲斐無さを正当化しようとしているだけかも知れない。
だが、後ろ指を指されるような事には絶対にしない。そう自分の暴走を抑えることが出来るからこそ、
世間一般に悪とされる人間の生い立ち、それに至ってしまった経緯に同情が出来る。
「目の前の中年は憐れむべき存在であり、行為を抑止することで愚かさに気付いてもらうことに賭ける」
それが俺の答えだった。

尻にすり寄っていく左手に気付き、不測の事態に驚くOL。
それと同時に手を引っ込め顔を拭った中年。もし触っていたら現行犯として「しょっ引く」覚悟はあった。
だが、自らの答えを信じた俺は抑止に打って出た。
まず、中年は俺にも注意を向けていたため目線合うことがあった。それを利用し、「睨み続ける」。
そして、気付かせたところで「見ていたアピール」。これによって中年は席を立たざるを得なくなった。
席を立った後、気になるのか俺に視線を向ける中年。無論、見続けた。冗談抜きで「理性を取り戻してくれ」と祈り続けた。
周りの目があるという事、
自らの行いがどうしようもなく下劣で低能であることに気付いて欲しかった。


すると、次駅到着アナウンスと同時にドアの前に立った中年。
「ああ、一応抑止は出来たか。問題を先延ばしにしただけかも知れないとはいえ、可能性を繋ぐことは出来たな」
ホッと胸を撫で下ろした俺は、「可能性を繋ぐことが出来た」という安堵感に満たされていた。
目の前で犯罪が起こり、巻き込まれるのを面倒に思った内心もあったかもしれない。
だが、自らの行動に言い訳など不要だと今でも思っている。
自らの賭けを信じ、すべての関係性を最小限に留めた判断だとも思う。僅かな時間で出来得ることはやった。

「同じ駅で降りるのか……はぁ……」と犯罪行為を見ずに済んだという緊張からの解放も手伝って、一気に気が抜けた。
そして到着。切符を探していたためギリギリにドアから出る羽目になった俺は、あの中年が視野にいない事に気付く。
嫌な予感は当たるもの……そうだった。閉まったドア、ホームにいない、人が少し多いとはいえ、あの風体を見失うはずがない。
「まさか」と動き出した電車に目をやると、
満席とは程遠い状態であるにも拘らず、
二人席に一人で座っていた若い女性の横に
強引に座ろうとしているあの中年の姿が――――――

その驚愕の刹那、目が合った。
男の目は本当に飢えていた。



あの中年は恐らく遠くない未来、捕まるだろう。今思えば常習性(計画性)も垣間見られる。
……見てないフリでもして、現行犯として無慈悲に駅員に突き出してやるのが良かったのか?
俺のやったことは結果として無駄だった。愚行だったのだろうか。これは俺の起こした二次災害だとでもいうのか?
真理を知りたい。俺の信じた俺自身の純粋に他人を信じる心は、非難されて然るべきものなのだろうか。




俺のようなメンタルの弱い人間が絶望するには、十分すぎる出来事だった。
最近よく思う。人間ってどうしようもなく最低だと。