ビニールに包まれたままのカウボーイハットを3つ頭に重ねたまま、
当たり前のように飛行機のシートに座っている人がいる。
心の中でツッコミながら、その普通すぎる光景に一人ニンマリ。
2週間ほどの休暇を終え、マイアミからハイチを飛んでいるときの不思議な空間。
これから世俗離れした全く別のワンダーランドへ飛んでいっているみたい。
カリブ海のある島の半分を占めるその国は、
人口わずか1000万人ほどしかいないのに、
世界中の猛者たちが(私を含む。笑)どれだけ必死になってとりかかっても、
何千億円をつぎこんでも、
まったく歯がたたない、
魔物が棲む国。
気が休まらない治安。
スリ、ひったくり、強盗、誘拐。
蔓延するコレラ。外から帰ってくると反射的にまず石鹸で満遍なく手を洗う。
トイレットペーパーはつまるから便器ではなく、となりの汚物入れに。忘れないように。
車が少しでも停まると、子どもたちが窓ガラスに吸い付いて手を出してくる。
機内で税関の申告書が配られた。
前回は印刷機の故障で記入しなくても通れた。
今回は入国カードがないんだって。
飛行機がだんだん下降する。
隣の席のアメリカ在住のハイチ人が窓から外を眺める私の背後からつぶやく。
「Ca a l'air le plus miserable...」
すごく悲惨な光景。
私はこの2週間ほとんど考えなかった仕事のことを考え始める。
スイッチ切り替え。
今後2ヶ月、年内にすべきこと。
もう少し長期的に向かうべき方向。
私のあり方。
なぜ私はここにいるのか。
空港に着くと、baggage claim の相変わらずのカオス。
人と荷物が入り乱れ、必死で自分のを探す。(↓写真)
空港を出ると、視界のすべてが映画みたいに映る、この感覚が好き。
2重の世界を行ったり来たりしている自分が見える。
まるで70年代のベトナム戦争か、90年代のダイヤモンド戦争のシエラレオネに降り立った気分。
ここでは、新商品のキャラメルなんとかラテを試そうとか、
トールサイズ、それともグランデ、とか、
クライマックスシリーズの勝敗の行方とか、
秋色の新色とか、
新しいデパートとか、
パンプスにしようかブーツにしようかとか、
そういうオプションは存在しない。
人々は日々を生きる。
今日骨折って得たお金でご飯を食べて、
明日また食べられるように祈る。
2つの世界を行き来しながらも、
私が心地よく感じることを失わないようにしようと思う。
忙しさにかこつけて、雑に生きないように。
たとえば、いつの間にか省略してした、日本の女の子たちの繊細なお洒落。
アイラインをまつげの間に念入りに引いて、
アイホールにパール入りのアイシャドウを目立たないように塗って、
3色のグラデーションにして。
髪の毛をカールさせたり。
埃っぽい40度の灼熱のコンテナ村でも、
そんな細かい気配りを忘れないようにしながら、
ハイチの魔物と戦うのだ。
毎日のほほんと私は暮らしている事が、とっても幸せな事。今を一生懸命生きなきゃいけないねぇ。なおこがんばれ~!
いつもブログを楽しく拝見させていただいています。
私もちょっと前までラテンアメリカに在住していましたが、今は日本に帰国しています。
おっしゃること、すごく共感できます。
なので、海外と日本を往復するたびに話題になっていることとか気になることとかそういうことがあまりにも違いすぎてスイッチを切り替えるのに多少苦労しています。涙
また再びハイチでのご活躍期待しています。