つい1ヶ月ほど前にLTTEが完全に追放されたというジャフナは
建物の銃弾の傷跡が生々しい
おおお 何か懐かしい
こういうのを見るのはシエラレオネ以来だ
ジャフナまでの空の道のりも実際飛行時間は1時間弱なんだけれど
到着するまでにかかった時間 正味7時間
これもアフリカに戻ったみたいだ
ジャフナ市内は 軍隊とチェックポイントの数は思ったよりも随分少なかったけれど
政府に強制されて掲げる家やお店の玄関のスリランカ国旗が
占領下の植民地みたい
強制ってどれだけ効くもんなんだろう?
でもここの人たちは もう慣れてしまったのかもね
国内避難民キャンプの人たちは疲れと不安が顔にくっきりと残っていて
きっと見た目よりもみんな若いんだと思う
何ヶ月もの間 何度も戦火を逃れて移動して
ようやくLTTEから逃れて
海や川を渡って辿り着いたら
運命共同体の他の360世帯の家族と一緒に
小さなスペースに閉じ込められている
いつになったら帰れるのかとか 先のことは誰もわからない
身一つで逃げてきた人たちには
仕事もないし
家もないし
お金もないし
着る服もほどんどないし
きっとシャンプーもヘアドライヤーもないし
コンピューターも携帯電話も冷蔵庫もないし
何と言っても
外に出られない
私だったら2日ともたない
おまけに親類の消息もわからない
本もないし
納豆もカフェもワインも
iPodもWiiもない
まあ私も上記のいくつかはなしで暮らしているけれど(納豆とWiiだけ。Wiiはしたことないけれど)
要はほとんど何もなくって
どうしたって手に入らない
生理用ナプキンはあるのだろうか
大きい方のキャンプでは
広場に一台置いてあるテレビの前に
大人から子どもまでラジオ体操の子どもみたいにきちんと整列して座って
インドのテレビドラマに釘付けになっていた
他の人たちは 配給のビスケットを手に入れるために並んでいた
小さい方のキャンプは何にもなくって
みんな日陰の地べたに座ってぼぉっとしてた
1日中座って 何を考えるんだろう
並んで座っていた20歳前後のおさげの女の子たちに
毎日何してるの?と聞いたら
案の定「ずっと座っているだけ」とのこと
「図書室とコンピューターが欲しい」と言った
普通だったら大学で楽しく勉強したり
アルバイトしたり 雑誌に夢中になったり
買い物したり
男の子の噂話をしている筈なのにね
お母さんたちは 子どもが病気でも病院に行けないとか
子どもを学校に行かせてほしいとか
ご飯を子どもが受け付けないとか
そんなことを皆小声で訴えていた
あちこちにLTTEか政府のスパイが忍び込んでいるというから
あまり大っぴらに何も言えないらしい
誰も信じられないらしい
どういう風に生き延びてきたのかとか
占領地の中の様子はどうなっているのかとか
つっこんだ話はできないけれど
胸まで川の水に浸かって
家族で 子どもを抱えて逃げてきたと教えてくれたおばあちゃんがいた
写真を撮りたくて撮りたくてむずむずしたけれど
言語道断です
取り上げられはしなかったけれど
一枚でもシャッター切ろうものなら・・・
いろんな真実が隠されている
誰も何も言えない
言ったらいつ新聞記者たちみたいに
永遠に口を閉ざされるかわからないから
皆 息を潜めて生きている
今までもずっとそうだし
これからもそう
ただタミル人として生まれてきただけなのに
そして私は どんなに心が痛んでも
飛行機に乗ってコロンボに帰れるし
イタリアンレストランでワイン飲みまくったり
その気になればフォアグラ食べたり
スパで全身マッサージ受けたり
その気になれば日本にも帰れるし
その気になれば世界一周だってできる
こんなに苦しんできた 苦しんでいる人たちを目の前にして
颯爽とランドクルーザーに乗り込んで
エアコンの効いた車から手を振って去っていくんだ