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エアバスA350-1000

2018-03-28 07:00:59 | 日記

2018年2月14日エアバスの最新鋭機A350-1000型のデモ機が初来日しました。3年前から航空各社が運航を開始しているA350-900型機より7m長いボディで、中東・アジア太平洋デモ飛行ツアー中に羽田に立ち寄ったものです。羽田空港の日本航空の格納庫で報道陣に公開され、当日夜には最終目的地のマニラへ向かいました。

 

A350-1000はこれまでに世界各国の11社から195機の受注を獲得しています。日本の航空会社ではJALがA350-900を18機、A350-1000を13機2013年10月7日に確定発注し、このほかオプションで25機を購入します。A350-900機は2019年から就航する予定で、JALはボーイング777型機と6年程度で入れ換えていく予定です。

世界の民間航空機市場でのエアバス社のシェアは1980年代前半までは20%程度でしたが、1999年に初めてボーイング社を受注機数で上回り、2003年には受注機数・納入機数ともにエアバス社が首位に立ちました。

我が国では1979年東亜国内航空(TDA)がエアバスA300を発注し、1987年には全日空グループ(ANA)がA320neo、1995年にはA321neoも発注しました。しかし大手が保有するジェット旅客機は次第にボーイング社の737747767777・787 に置き換えられて、ANAが保有するA320neoも2008年には一旦すべて退役し、JALが保有するA300も経営破綻により2011年5月末に全機退役して、LCCを除いてはエアバス機は姿を消していました。

長距離の洋上を飛ぶ民間航空路線は長年にわたって4発機や3発機で運行されてきましたが、これには国際民間航空機関 の取り決めで双発機エンジンの1基が停止した際に、60以内代替空港へ緊急着陸が可能なルートしか飛べなかったためです。この規定をETOPS—60と呼びます。

4発機は双発機と比較すると機体の構成が複雑で整備に人手と時間を要し、運航コストが高く、座席数が多すぎて空席を埋め切れず、北米の航空会社は原油価格の高騰もあってコスト面で有利な双発機の運行を望んでいました。一方アジアの航空会社は長距離洋上路線を抱えているため、ETOPSの制約のない4発機を頼りにしていました。

エンジンの信頼性や性能が向上してくるに連れ、双発のエンジンの片方だけでも長時間飛行できるボーイング767・777やエアバスA330などETOPSの条件を満たす新型双発機が出現し、双発機による長距離洋上飛行のルート設定が可能になりました。ボーイング777は最初にETOPS-180の認定を受けた旅客機で、これは同機が搭載するエンジンの信頼性が飛躍的に向上したためです。

エアバスA330に対しては2009年10月に欧州航空安全機関が初のETOPS-240の認定を与えました。2011年10月にはボーイング777、2014年5月にはボーイング787がETOPS-330の認定を受け、2014年10月にはエアバスA350-900もETOPS-300・ETOPS-370の認定を受けています。

「A350-1000」は3機種からなるエアバス「A350 XEB」シリーズの最大の機種です。シリーズ名はA350 XWBですが、個々のモデルは「A350-800」「A350-900」「A350-1000」と正式名称にXWBを含めません。

今回のA350-1000デモ機はビジネス40席、エコノミープラス36席、エコノミー219席の295席で、革新的な客室ブランド「Airspace」を装備し、静かで広々とした客室による比類のない快適性と最先端の機内エンターテインメントサービスを提供します。

 

A350-1000はA350-900とシステムや部品の95%を共通化しています。A350-900と同様最先端の空力性能・新素材技術を導入し、翼の後縁に改良を加え、主脚は6つの車輪を持ち、よりパワフルなロールス・ロイス社製Trent XWB-97エンジンを装備します。A350-1000の初号機は2016年11月24日に初飛行しました。

機体には53%にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用い、全体の70%に最先端材料を使用して軽量化と整備の簡素化を図りました。自重は129tで満席のA350-1000の方が、777-300ERの自重よりも35t少ない軽量化を実現しました。前世代の各競合機種と比較して運航コストを25%削減出来ます。A350-1000の量産初号機は2018年2月20日カタール航空に納入されました。

A350 XWBファミリーはアジア太平洋地域の14社から合計287機の受注を得ていて、世界の合計受注数854機の3分の1を占めます。すでに太平洋地域では、アシアナ航空・キャセイパシフィック航空・チャイナエアライン・香港航空・マレーシア航空・シンガポール航空・タイ国際航空・ベトナム航空がA350-900を運航しています。

 A350 XWBの基本形のA350-900は2013年6月14日に初飛行しました。2014年9月30日に欧州航空安全局から型式証明を取得し、11月12日に米国連邦航空局からも型式証明を取得しました。

A350-900の量産初号機は2014年12月22日にカタール航空へ引き渡され、2015年1月15日にドーハ-フランクフルト線で営業運航が開始されました。2015年9月20日にはベトナム航空のエアバスA350-900型機が、成田に初めて乗り入れています。

エアバス社は世界中を席巻しつつある米ボーイング社の大型双発機777や新型双発機787に対抗できる、787と同等以上の性能の機体の開発を目論見ましたが、A380に開発資源を集中する必要があり新規設計は困難でした。

エアバス社がA330をベースに構想した開発機種の名称が「A350」で、A330に比べて性能・経済性は大幅に改善されましたが、受注がまったく伸びず開発計画は中止に追い込まれました。

現在生産されている「A350 XWB」は、まったく新規に設計しなおした機種です。「エアバスA350 XWB(eXtra Wide Body)」は2006年7月17日ファーンボロー航空ショーで発表されました。

A350 XWBではA300以来使用していた真円の胴体断面をやめ、新たにより太いダブルバブル断面を採用し、ダブルバブルのキャビン部分の半径は2.98mとロッキード L-1011 トライスターと同じで、胴体下半分はLD3コンテナが二列積載できる最小限の断面に絞られて、機体重量の軽減に寄与しています。

複合材製の効率のよい主翼となりライバル787より搭載量が大きく、エコノミー座席の標準配列が9列となって、より多くの乗客を収容できます。キャビン直径の拡大はキャビン天井裏のスペースの拡大をもたらし、コクピットクルー並びにキャビンクルーレストを天井裏に設けることが可能になりました。 

A350-900は314席、A350-1000は350席で、787より大きな機体と新技術を積極的に採用した結果、一回り大きな777の市場でも対抗できる機種です。このエアバスA350 XWBの計画発表直後の2006年7月21日に、シンガポール航空はA350-900型20機の購入を決めました。

2008年8月12日現在でA350 XWBは世界27社から452機の確定発注を受け、ライバルである787と同規模の受注を達成しました。正式契約調印には至っていない発注趣意書発行段階のものも106機あります。

787は主翼の強度不足や、試験飛行中の空中火災などで開発が難航して納期が3年以上遅れたため、予定就航時期が早いはずだった初期のアドバンテージは失われました。

A350 XWB初号機は2013年6月14日トゥールーズ・ブラニャック空港で初飛行し、2014年9月30日にA350-900が欧州航空安全機関の形式証明を取得しています。

A350 XWBのテスト機は2014年1月ボリビアの海抜2,500m、海抜4,000mの高地で補助動力装置(APU)、各種システムのオペレーションを確認し、続いて氷点下2桁台を記録するカナダや、同年6月のアラブ首長国連邦アルアインを拠点に40度を超える気温環境のもとで、エンジンやシステムの挙動をテストしました。

2014年7月19日には最大離陸推力時の離陸中断テストを実施し、最大重量での離陸時の最大スピードでブレーキが確実に作動し、機体を安全に止めることができるのを確認しました。

2014年7月にA350-900の型式証明取得に向けた最終段階で、5号機を使用した路線認定試験を開始し、約3週間かけて北極上空や各大洋を横断、合計で180時間、151,300kmを飛行しました。2014年10月19日には5号機がアジアを巡るデモツアーの一環として羽田空港に飛来し、ソウルハノイバンコククアラルンプールを訪れています。

2014年10月に欧州航空安全機関がA350-900型機に、ETOPS-300及びETOPS-370の認定を与えました。これによってA350-900型機は太平洋と大西洋を含む、世界中ほとんどすべての主要空港間の直行定期便の運航が可能となりました。

これらETOPSのさらなる高度認定に対応する航続距離延長型として、「A350-ULR」が追加設定されました。このタイプはパキスタン国際航空エミレーツ航空などB777-200LR型機を運航している航空会社で、超長距離線用機材の新規需要があったためです。2015年に発表されたULRタイプのローンチカスタマーとなったのはA380と同様シンガポール航空で、航続距離は双発機として最高記録となる予定です。

2017年6月現在の機種別受注数は、A350-800が16機、A350-900が599機、A350-1000が195機で、引渡数はA350-900の41機です。日本の航空会社ではJALがA350-900とA350-1000型機の計31機分を確定発注済ですが、アジア地域ではシンガポール航空が確定発注機数63機を誇っています。

旅客機は重厚長大な4発機のボーイング747や超音速のコンコルドの時代から、エンジン性能の向上と信頼性の向上に伴い、ETOPSの要件を満たした長距離洋上飛行が可能な経済性の高い双発機の時代に替わって来ました。

ジャンボは未だに多くの航空会社で存在感を示していますし各国の政府専用機にも使われていますが、マッハ2.0で飛行した三角翼のコンコルドは2003年をもって全機が退役しました。超音速飛行を追求した美しいデザインは博物館入りした現在も根強い人気を持っていますが、世紀の傑作が忘れ去られていくのは寂しい思いです。

4発機の時代が双発機時代に代わるのは、技術の進歩もあるにせよ、正に、エコノミーを指向するようになった、時代の移り変わりを示す典型的な事例なのかも知れません。

 


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