よわまって歩けば遠いかがやきのあれは連翹、さわがしい花
こなぐすり畑に蒔いてほほえんでスガワラさんはきれいだったな
ある午後は菫のように泣きながら蟻をつぶしていた 懸命に
享年は百とふたつき 草色の干菓子を置いていってしまえり
季節から実を幾度もとりくずし土の古びはふかぶかとして ※ルビ「実」じつ
球根に凝るちからのきわまりをあるいは花と呼んでいるのか
濁りなく咲くものたちよ苦しくはないのかそんなふうに光って
土褒めの春のひなたを選りながらお前いつまで犬でいられる
嗅ぎ飽きてそのままねむるいきものよ憶えておいてそれがわたしだ
ゆく春の濡れたひかりをかきまぜて風には風のさびしい遊び