北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」11月号(2012)

2012-12-03 | 未来

手詰まりになってひとまず裂いてみる魚の腹白くてやわらかい

さびしくて煮て喰うまでのわたくしの今日のふるまいはあからさま

水の面を乱さぬように落ちてゆく人体、それを受けとめる水

手足ならいつでもほどくかんばしい水にこころをすんと吸わせて

液体のようなからだで泳ぐのがよいでしょう あなたもそうなさい

いたましく傷つきたがる白桃を説き伏せながら剥いて、愉しい

ねじれながらどんどんにくむにくんでもにくまなくてもおなじひとりを

夏雲を産んでは乾く海沿いの町であなたとはぐれたかった

こじゅけい、とつぶやきながら糸偏をていねいに書く外つ国のひと

育ちのいい人のとなりでだいじょうぶ(もう大丈夫)秋がはじまる