JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「死滅の谷」

2018-08-21 | 映画(DVD)
「フリッツ・ラング監督特集」

「死滅の谷」1921年 独 監督:フリッツ・ラング サイレント HD
DER MUDE TOD/DESTINY

死神から恋人を返してもらうため、命の蠟燭が消えんとする三人の運命を変えようとする娘は・・・。時代や場所を超えて繰り返される愛の物語をオムニバス形式で描く。舞台となるアラブ、イタリア、中国のエキゾチックな映像や幻想的な特殊効果も見もの。



死生観に関する哲学的要素を含みながらも、十二分に娯楽エンターテイメントになっている。
生命を蠟燭に例えるあたり、落語の「死神」を髣髴とさせ元ネタなんかな?と思ったがそうではないらしい。当然アジャラカの呪文も寝台の回転も出てこない。

死神役者ベルンハルト・ゲッケの存在感(死神の存在感があるってのも変だが)いい目をしていて、ちょっと緒形拳ぽくてカッコいい。
微動だにしない死神に「彼氏を返せと」とすがる娘の、いかにもサイレントならではのオーバーアクションも良い感じだ。
この死神が仕事に疲れきっているという設定。

娘に恋人の死を受け入れさせようと見せるオムニバス的なアラブ、イタリア、中国のEP。結局これ無くても良いのではと感じなくもないのだが、そこはフリッツ・ラング監督が1921年にあって映像の可能性を遊び心たっぷりに楽しんで作ってる感じでとても良い。





絵的にはアラーの信仰で中央にくるくる回転する人々を取り囲む群衆のグルーヴ感が楽しい。
EPの中では特殊効果をふんだんに使った中国の魔術師の段が一番興味深く、魔術師の弟子が恋人同士で隙あればチュチュしてるのが微笑ましい。小っちゃい兵士たちの登場でちゃんと何人かが蹴躓くギャグ入れ込んでくるのも最高です。



3話見せても恋人の死を受け入れられない娘に対し、「在る生命を捧げよ」との課題に、老人、乞食、病人たちに生命をもらおうとするが一分一息たりともやらぬと断られる。ここで若い男の死を悼み、「代わってあげたい」と噂話していた老人たちが、娘に生命を要求されると脱兎の如く逃げ出すんのいいよね。
結局、火事場に残された赤児の生命を差し出そうとするところで、自分の行為に気づく娘。
ただ、落ちが弱いんだよな。治まるべきところに治まる感じで驚きがない。ハッピーバースデーと祝ったり、くしゃみが出たりしないんだ。
落語では噺家の皆さんが何故か落ちをいじりたがる「死神」この映画にもいい落ち考えてあげて欲しいもんだ・・・
だから、落語の「死神」とは関係無いってーの。




シネマヴェーラ渋谷

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