若手総合法務アドバイザーの備忘録

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移転価格税制とタックスヘイブン税制

2016-06-20 13:26:02 | 税務
前回パナマ文書とペーパーカンパニーについてお話ししましたが、今回は国際的な脱税防止策を2つ紹介いたします。

【移転価格税制】
○ 概要
日本の企業が行う国外関連者との一定の取引が、独立企業間価格(適正な価格)で行われなかった場合、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして所得計算を行う制度
関係の強い会社間の取引は、価格を自由に決定できるため、各会社の所得をコントロールできてしまう。したがって、適正な価格での取引があったものとみなして課税することで恣意性の排除をすることを目的としている。


○移転価格税制の対象となる取引
・国外関連者から支払われる対価が独立企業間価格に満たない取引
・国外関連者に支払う対価が独立企業間価格を超える

※どちらも日本企業が損をする取引。つまり日本企業の税金が安くなる取引


○国外関連者とは
外国法人で、日本企業との間に次のいずれかの関係があるもの。
・発行済株式の50%以上を直接又は間接に保有し、又は保有される関係
・同一の第三者に双方の発行済株式の50%以上を保有されている関係
・一方の企業が他方の企業の事業方針を、一部分でも実質的に決定できる関係


○独立企業間価格
通常の取引条件(お互いにパワーバランスがない関係)における取引価格。
恣意性が介入していない価格で、独立価格比準法や再販売価格基準法などの計算方法から取引の実態に即した方法で決定する


【タックスヘイブン税制】
○概要
タックスへイブンで得た所得は、著しく低い税率での課税のみ行われるので、利益を配当とせずに、そのまま運用することも可能です。
このように各国の税率の差を利用し、日本での課税を回避することを目的とする実体のないペーパーカンパニーを設立し、租税回避を行うスキームが横行していたため、その行為を防止する目的で規定された制度がタックスヘイブン税制です。


○制度の内容
税負担が20%以下のタックスヘイブンに存在する外国子会社等の留保所得を、株式所有割合に応じて日本の株主の所得とみなして、日本の株主の所得に上乗せさせ、日本での課税を実行する制度。
全ての企業がタックスヘイブン税制の適用になるわけでもなく、例えばしっかりとタックスヘイブンで事業を行う点に合理的な理由が存在する場合等には一定の適用除外規定が存在する。


○税制の適用となる場合
次の全てに当てはまる場合にタックスヘイブン税制の適用がある。
・外国関係会社の株式を単独又は同族グループで10%以上保有していること
・外国関係会社の本店等所在地国の税負担が20%以下

※外国関係会社とは日本企業や日本の居住者に発行済株式等の50%超を支配されている外国法人


○適用除外基準
タックスヘイブン税制の適用となる場合でも、次の基準を全て満たしている場合には適用が除外されます。
・事業基準…株式の保有等を主な事業としていないこと
・実態基準…タックスヘイブンに事務所等の施設を有していること
・管理支配基準…タックスヘイブンにある子会社が自ら管理運営等を行っていること(組織として独立していること)
・所在地国基準…タックスヘイブンにて主な事業を行っていること
又は
比関連者基準…関連企業等以外との取引が全体の50%超であること


【まとめ】
前回も申し上げた通り、タックスヘイブンで事業を行うことに対して法律上の違反は全くありません。
問題はこれが租税回避に使われだ場合です。
移転価格税制については、適正な価格での取引を行っていればいいのです。
タックスヘイブン税制については、海外の子会社が実態のある独立した企業であればなんの問題もありません。
一般的に租税回避に当たらないかどうか、その価格設定に恣意性が介入しないかどうか、今一度見直しを行ってみてください。

それでは、また。