若手総合法務アドバイザーの備忘録

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みなし労働時間制

2016-06-22 15:35:29 | 労務
労働時間の例外である変形労働時間制についてお話ししました。
今回はもう一つ労働時間の例外である「みなし労働時間制」についてお話しいたします。

【みなし労働時間制】
近年のサービスの多様化や技術革新などを背景に、使用者の指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難である場合や、労働者の裁量により業務の遂行を委ねたほうが効率的な事業場のマネジメントができる場合など、通常の方法により労働時間の算定をすることが適切でない状況が多く発生するようになりました。
こういった状況でも正しく労働時間の算定ができるように設けられた制度が、みなし労働時間制です。
みなし労働時間制は大きく分けて3種類存在します。
○ 事業場外労働に関するみなし労働時間制
○ 専門業務型裁量労働制
○ 企画業務型裁量労働制


【事業場外労働に関するみなし労働時間制】
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。(労基法38条の2)

この条文を適用するには2つの要件が存在します。
○ 事業場外で業務に従事し、使用者の指揮監督が及ばない業種であること
○ 労働時間を算定するのが困難であること
例えば新聞や雑誌の記者は社外で仕事する時間が圧倒的に長く、またその行動一つ一つについては個人の裁量に任されていることがほとんどです。
このように使用者の指揮監督が及ばない状況で労働をすることを事業場外労働といい、このような場合にはみなし労働時間制の対象となります。


みなし労働時間制を採用している場合、一日中外で仕事をした場合にも、原則的にはその日は所定労働時間労働したものとみなされます。(一部事業場で労働した場合にも同様です。)しかし事業場外労働が、所定労働時間を超えて労働することが明らかである場合には、通常その事業場外労働を行うに必要な時間分労働をしたものとみなして、労働時間を計算します。


【専門業務型裁量労働制】
使用者が専門業務型裁量労働制の対象となる一定の業務について、労働時間として算定される時間等を定めた場合において、労働者を当該業務に就かせたときはその定めた時間労働したものとみなす。(労基法38条の3)


専門業務型裁量労働制の対象とんすることができる業務は厚生労働省において限定列挙されています。
○ 新商品、新技術の研究開発、人文科学、自然科学に関する研究の業務
○ 情報処理システムの分析又は設計の業務
○ 新聞、出版の事業における記事の取材、編集の業務、放送番組の制作のための取材、編集の業務
○ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
○ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー、ディレクターの業務
○ その他厚生労働大臣の指定する業務(公認会計士、弁護士、税理士、システムコンサルタント等)

また専門業務型裁量労働制を採用するためには次の事項を、労使協定にて定めなければなりません。定めたのち、所轄労働基準監督署に届け出ることにより、採用することが可能となります。
○ 対象となる業務の内容
○ 1日当たりの労働時間数
○ 業務遂行の手段や時間配分を使用者が具体的に指示しないこと
○ 健康や福祉を確保する措置を使用者が講ずること
○ 苦情に関する措置を使用者が講ずること
○ その他一定の事項


長くなりましたので、本日はここまでです。
次回は企画業務型裁量労働制についてお話しします。
それでは、また。

ビジネスシーンにおける「契約」とは

2016-06-21 19:49:48 | 法務
契約は日本全国様々な場所で結ばれています。
契約はビジネスシーンでは欠かせない存在です。
そんな契約について、法律的な定義を皆さんご存知ですか。
契約についての基本的な事項をまずは理解しましょう。

【契約について】
○契約とは
契約とは権利義務を確定させるために用いられる当事者間の合意のことをいいます。
契約を行うと法的な拘束力が発生し、片方の勝手な都合で内容を変更したり、契約を解除したりできなくなります。

○契約自由の原則と附合契約
法律には契約自由の原則という基本原理が存在するため、契約内容は当事者同士が自由に決められるというのが原則です。

しかし、契約内容を自由に設定できない契約が一部存在します。これを附合契約といいます。

附合契約とは相手方が作成した条項に対して契約するかしないかの2択しか存在しない契約のことです。
例えば水道光熱費の供給契約や保険会社の保険料などがこれにあたります。
附合契約は消費者の利益に大きく影響するため、様々な機関が関与して契約内容を決定していきます。

【契約の種類】

契約には民法に定められている典型契約(13種類)と民法に定められていない非典型契約があります。
また、契約内容に応じていくつかの分類分けができます。

○有償契約又は無償契約
お金を払うかどうか
○双務契約又は片務契約
お互いに債務を負担するかどうか
○諾成契約又は要物契約
合意だけか物の引渡しか

【契約の具体例】
最後に契約の具体例をいくつか挙げていきます。ビジネスシーンでよく出てくる契約です。

○売買契約
○消費貸借契約
○賃貸借契約
○請負契約
○委任契約
○寄託契約

このような契約はビジネスシーンでかなり頻繁に出てきますので内容をしっかりと見ていきましょう。
ということで、それぞれの契約の詳しい内容は次回以降にお話しします。
それでは、また。

移転価格税制とタックスヘイブン税制

2016-06-20 13:26:02 | 税務
前回パナマ文書とペーパーカンパニーについてお話ししましたが、今回は国際的な脱税防止策を2つ紹介いたします。

【移転価格税制】
○ 概要
日本の企業が行う国外関連者との一定の取引が、独立企業間価格(適正な価格)で行われなかった場合、その取引を独立企業間価格で行われたものとみなして所得計算を行う制度
関係の強い会社間の取引は、価格を自由に決定できるため、各会社の所得をコントロールできてしまう。したがって、適正な価格での取引があったものとみなして課税することで恣意性の排除をすることを目的としている。


○移転価格税制の対象となる取引
・国外関連者から支払われる対価が独立企業間価格に満たない取引
・国外関連者に支払う対価が独立企業間価格を超える

※どちらも日本企業が損をする取引。つまり日本企業の税金が安くなる取引


○国外関連者とは
外国法人で、日本企業との間に次のいずれかの関係があるもの。
・発行済株式の50%以上を直接又は間接に保有し、又は保有される関係
・同一の第三者に双方の発行済株式の50%以上を保有されている関係
・一方の企業が他方の企業の事業方針を、一部分でも実質的に決定できる関係


○独立企業間価格
通常の取引条件(お互いにパワーバランスがない関係)における取引価格。
恣意性が介入していない価格で、独立価格比準法や再販売価格基準法などの計算方法から取引の実態に即した方法で決定する


【タックスヘイブン税制】
○概要
タックスへイブンで得た所得は、著しく低い税率での課税のみ行われるので、利益を配当とせずに、そのまま運用することも可能です。
このように各国の税率の差を利用し、日本での課税を回避することを目的とする実体のないペーパーカンパニーを設立し、租税回避を行うスキームが横行していたため、その行為を防止する目的で規定された制度がタックスヘイブン税制です。


○制度の内容
税負担が20%以下のタックスヘイブンに存在する外国子会社等の留保所得を、株式所有割合に応じて日本の株主の所得とみなして、日本の株主の所得に上乗せさせ、日本での課税を実行する制度。
全ての企業がタックスヘイブン税制の適用になるわけでもなく、例えばしっかりとタックスヘイブンで事業を行う点に合理的な理由が存在する場合等には一定の適用除外規定が存在する。


○税制の適用となる場合
次の全てに当てはまる場合にタックスヘイブン税制の適用がある。
・外国関係会社の株式を単独又は同族グループで10%以上保有していること
・外国関係会社の本店等所在地国の税負担が20%以下

※外国関係会社とは日本企業や日本の居住者に発行済株式等の50%超を支配されている外国法人


○適用除外基準
タックスヘイブン税制の適用となる場合でも、次の基準を全て満たしている場合には適用が除外されます。
・事業基準…株式の保有等を主な事業としていないこと
・実態基準…タックスヘイブンに事務所等の施設を有していること
・管理支配基準…タックスヘイブンにある子会社が自ら管理運営等を行っていること(組織として独立していること)
・所在地国基準…タックスヘイブンにて主な事業を行っていること
又は
比関連者基準…関連企業等以外との取引が全体の50%超であること


【まとめ】
前回も申し上げた通り、タックスヘイブンで事業を行うことに対して法律上の違反は全くありません。
問題はこれが租税回避に使われだ場合です。
移転価格税制については、適正な価格での取引を行っていればいいのです。
タックスヘイブン税制については、海外の子会社が実態のある独立した企業であればなんの問題もありません。
一般的に租税回避に当たらないかどうか、その価格設定に恣意性が介入しないかどうか、今一度見直しを行ってみてください。

それでは、また。

行動経済学(6) 妥協効果と魅力効果

2016-06-17 16:14:14 | 戦略
昨日更新ができず申し訳有りませんでした。
しっかりと更新が滞らないように今日からまた頑張ります。

さて、行動経済学におけるアンカリング効果について前回お話ししましたが、今回はそのアンカリング効果との相性が良い、妥協効果と魅力効果についてお話ししようと思います。
【妥協効果】
妥協効果とは、極端な高クオリティと低クオリティが用意されることで、その中間案を選びやすくなるという手法です。

例えば3000円のコース料理と5000円のコース料理がある場合、どちらのコースを選ぶかは個人差が出ると思います。
しかしここに8000円の豪華なコース料理を入れて3つのコースを提示することで5000円のコースを選びやすくなるというのが妥協効果の特徴です。

これは、豪華なコースにより他のコースの安さが引き立ち(アンカリング効果)、逆に安いコースで失敗したくないという心理(損失回避性)が同時に働くことで起こる現象です。

これを応用して、中間のコースを一番利益率を高くすることにより、利益率の改善が図れたりします。
この妥協効果は特に価格帯が曖昧な商品や店によって価格帯がバラバラな商品に対してより有効だと言われています。


【魅力効果】
もう一つアンカリング効果との相性が良いものとして魅力効果というものがあります。
これは、囮効果とも呼ばれ、確実に劣る商品(囮)を並べて比べてもらうことによって、本当に売りたい商品がとても魅力的に見えるという手法です。
例えば10万円の商品を売りたい場合、その半分くらいの価値のものを8万円くらいで見せます。
すると10万円のものを割安に感じ、購入したくなるというのが魅力効果です。

先に高いものを見せて単価を上げるアンカリング効果とは逆で、明らかに劣っている安いものを同時に見せることで購入させる手法です。
魅力効果も価格帯が曖昧な商品に有効ですので、是非活用してみてください。


職業柄、利益を上げたいお客様は売上アップか経費削減を最初に考えますが、粗利率を上げるという考え方を持つことも重要なことです。
それでは、また。

変形労働時間制

2016-06-16 17:38:10 | 労務
前回、変形労働時間制というものを4つ紹介しました。
今回はそれぞれの制度を詳しくご紹介いたします。
【変形労働時間制とは】
変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって、労働時間の短縮を進めていくことを目的に作られた制度です。
あくまで平均労働時間が1ヶ月の法定労働時間である40時間(特例事業の場合は44時間)を超えない範囲内で、働き方に少し弾力性を持たせるために作られました。

変形労働時間制は次の4つがあります。
・1ヶ月単位変形労働時間制
・1年単位変形労働時間制
・1週間単位変形労働時間制
・フレックスタイム制


詳しく見ていきましょう。
【1ヶ月単位変形労働時間制】
使用者は、労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定等により、1ヶ月以内の一定期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない定めをしたときは、労働時間を超えて、労働させることができる。(労基法32条の2)

つまり1ヶ月以内であればどんな期間でも設定することが可能です。
例えば2週間毎に繁閑が訪れるようなビジネスモデルであれば、2週間で設定することも可能です。


【1年単位変形労働時間制】
使用者は、労働組合又は労働者の過半数を代表する者と書面により一定の事項を定めたときは、1週間当たりの平均労働時間が40時間を超えない範囲内において、特定された週において労働させることができる。(労基法32条の4)

基本的には1ヶ月単位変形労働時間制と同じで、1年以内であれば好きな期間を設定できます。
しかし期間が長い分、特別な要件がいくつかありますので注意してください。

○1日あたりの労働時間は10時間以内にすること
○1週間あたりの労働時間52時間以内にすること
○48時間超の週は連続3回以下にすること(設定した期間が3カ月を超える場合)
○3ヶ月毎に48時間を超える週の初日の数を3回以下にすること(対象期間が3カ月を超える場合)。
○労働日数を1年あたり280日以下にすること(対象期間が3カ月を超える場合)。
○連続して労働させる日数は6日まで(原則)とすること
○1年単位変形労働時間制の期間中に退職、または入社する者については、労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合には、その分の割増賃金を支払うこと

【1週間単位変形労働時間制】
使用者は、小売業、旅館、料理・飲食店の事業で、常時使用する労働者の数が30人未満のものについては、労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、1日について10時間まで労働させることができる。
この場合、使用者は、1週間の各日の労働時間を、あらかじめ、当該労働者に通知しなければならない。(労基法32条の5)


1週間単位の変形労働時間制は主に曜日による繁閑の差が激しいような事業(例えば金土の居酒屋など)について限定的に適用できる制度です。
1日10時間以内、1週間40時間以内であれば、好きなカスタマイズが出来るのが特徴です。

【フレックスタイム制】
使用者は、労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、一定の事項を定めたときは、その協定で清算期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、1週間又は1日あたりの法定労働時間を超えて、労働させることができる。
(労基法32条の3)


フレックスタイム制を採用するためにはいくつか決めなければならない内容があります。
・コアタイム
労働者が必ず労働していないといけない時間帯
・フレキシブルタイム
労働者の選択で働ける時間帯
・清算期間
1ヶ月以内の期間で、労働契約上労働者の労働すべき期間
・清算期間中の総労働時間
清算期間中に労働者が労働すべき所定労働時間

フレックスタイム制であれば、労働時間外というのは1日や1週間単位で判定するのではなく、あくまで清算期間での判定になります。
したがって労働者の自由な働き方の設定や使用者の残業代等の節約に一役買います。



労働時間のカスタマイズにより、労働紛争の回避や余分な人件費の削減に効果があります。
使用者の皆さんは是非見直しをしてみてください。また、就活生はこういった働き方についても判断の材料にしていただければいいかなと思います。

それでは、また。