東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

もぢずり

2018-06-20 15:34:45 | 日々

 陸奥のしのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし我ならなくに   河原左大臣

 小学生の頃まで町内に自動車教習所があって、練習コースの間に植え込みがあったり芝生の分離帯があったりで、普段教習中の敷地内には入れないけれど日曜日の休みの日には誰もいないので柵の隙間から腹ばいに場内に入って、普段気になっていた異空間を探検していました。そして必ず気にして探していたのがこの「もぢずり」の花でした。その当時は遊ぶテリトリーもそんなに広くなくて、その範囲内ではこの「もぢずり」の花に出会えるところは教習所の中だけで、近隣には他に咲いているところがありませんでした。当時の自分にとっては宝石にも勝る美しくて珍しい花に映っていました。ピンク色の花にも増して、花がループして並んでいるのが不思議で宝物にしていた小学館の「植物の図鑑」で調べたら「ネジバナ」と記してありました。

 

 我が家の周りに滅多見かけない花でしたが、ずーっと後になってあるところには咲いているのだと気が付きました。三宅坂の国立劇場の皇居に向けての芝と松の植え込みにも季節になると群生していました。それと荒川放水路の鹿浜橋から上流数百メートルの河川敷にもかなり群生していました。郊外とか地方へ初夏に出かける機会というものが子供の頃にはなかったので大自然の中の「もぢずり」を見たことはないのですが、東京の中では芝を植えこんでいるところに芝に混ざって咲いていることが多いように思います。

花の並び方がグラジオラスにも似ているような感じがしますが、大きさといいほのかな淡い色といい、しげしげと見ないと目立たない小さな花です。

古今集に読まれている歌が当然先で、花の名前は先行の歌のイメージから名づけられたのでしょうか。

歌の注釈だと「信夫地方で採れるしのぶ草で編んだものが文字摺」で「その乱れた模様のように私の心を乱れさせたのは私ではなくてあなただ」とか記されていますね。「文字摺」という編み物に似ている花だから「もぢずり」と呼ばれるようになったというんでしょうね。

福島の駅の北に「信夫山」という山があります。それと我が家は吉田姓ですが亡き父の実家の姓が山と同じ名前なので歌に関係して妙に気になる花ですし、みつけると宝石のように感じる花です。