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スクリバリ事件と米イラン協定離脱の関係   田中宇氏の視点

2018-05-24 18:38:58 | (旧 新) 米国


★英スクリパリ事件と米イラン協定離脱の関係
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 5月18日、英国でセルゲイ・スクリパリが2か月半ぶりに退院した。


父セルゲイと一緒に「ノビチョク攻撃」を受けた娘のユリア・スクリパリは、すでに4月に退院している。だが、2人とも退院後、どこにいるのか全くわからない。


事件後すぐに英政府のメイ首相やジョンソン外相が


「事件はロシアの仕業で、ロシア製のノビチョクが使われた」と断定的に発表したが、その後、英政府はこの断定を裏づける証拠を何も出していない。


 軍事専門家やロシア政府などは


「ノビチョクの1滴に触った人は1分以内に死ぬのに、スクリパリ親子は自宅のドアノブに塗られたとされるノビチョクに触ってから何時間も食事や買い物をした後、街頭で倒れ、その後回復している」


「英政府の断定は矛盾が多すぎる」と言い続けている。


英マスコミは、政府を批判して騒ぐどころか、スクリパリ事件についてなるべく報じないようにしている。

スクリパリ事件に関する政府やマスコミの説明は、全く信用できない。



 スクリパリ親子はおそらく、退院後、英当局(諜報機関)によって、当局の諜報用の隠れ家に軟禁されている


スクリパリ親子が街頭で泡を吹いて卒倒した原因はノビチョクでなく、もっと大したことない何か別の原因だ。


私は事件発生直後に、すでにそのように分析した。


この事件にロシア政府は関係ない。ロシア敵視の濡れ衣として、ロシア犯人説が断定された。




濡れ衣的なロシア敵視は英米の昔からの戦略であり、その意味で英国の世界戦略に合致している。



だが英政府は今回、最初から意図してロシアに濡れ衣をかけようとしたのでない。


意図的な濡れ衣攻撃なら、もっと用意周到にやるはずだ。


英政府は、早々と「ロシアがノビチョクでスクリパリ親子を殺そうとした」と間違った断定をしてしまったので、その後、この断定と矛盾する事実がどんどん出てきた時、


証人であるスクリパリ親子を口封じのため軟禁したり、マスコミに報道を抑えさせたりするしかなかった。


英政府は困窮している。


これは英政府が意図した結果でない。


メイ政権の英政府は、内部もしくは外部の勢力に「はめられた」可能性が高い。


メイやジョンソンは、ウソのロシア犯人説を信じ込まされ、間違った断定を発表してしまった。


英政府が訂正すると、ロシアを優勢にしてしまうので訂正できない。




メイら英政府を騙して「はめた」のは誰か


ロシアや中国といった「敵方」ではない(露中が英政府にロシア敵視の濡れ衣をかけさせるはずがない)。


犯人は味方の陣営にいる。一番やりそうなのは、米国のトランプ政権である。


米覇権放棄・世界の多極型への転換を隠然と進めるトランプたちは、転換を阻止する英国を無力化するために、米英諜報界の一体性を使い、スクリパリ事件を起こしたのだろう。


トランプ陣営傘下の米国の諜報部隊が英諜報界の気脈を通じた勢力を動かしてスクリパリ事件を起こし、メイ政権を騙してロシア犯人説を断言させ、


あとで窮地に陥らせたというのが私の読みだ。



戦後の米覇権の黒幕である英国は、ベトナム戦争やイラク侵攻など、米国がわざと過激で稚拙な戦略をとり、覇権を粗末に扱って覇権放棄を目指すたびに、


それを帳消しにする行動をとり、米国の無茶苦茶な言動に対してうまい説明をつけてやったり、


米国の単独行動に国際協調の衣を着せて国際社会の対米離反を抑えたりしてきた。



英国は軍産複合体を通じて米国の覇権戦略を牛耳ってきたが、米国(米英?)の上層部には、それを迷惑だと考える勢力がいた。


彼らは、覇権戦略を意図的に過激・稚拙にやって覇権を自滅させて英国と軍産を振り落とそうとする「隠れ多極主義」の動きを続けてきた。



トランプは、ニクソン、レーガン、ブッシュとともに、その系譜の中にいる。


これは、米英諜報界内部の戦いであり、外部から実体がとても見えにくい。


だがこの戦いが、戦後の世界史の中枢にある。



米覇権放棄・多極化の見地から言うと、トランプ政権の登場は、英国のEU離脱(英国民をたぶらかして離脱に投票させたこと)と、双子の戦略になっている。



EU離脱決定後(=メイ政権になってから)、英国はEU離脱にとらわれ、国際社会で大した動きができなくなり、トランプがどんどん覇権放棄策をやるのを英国は看過するだけとなった


(トランプを阻止する最大の動きは米軍産のロシアゲートになったが、今年に入り、トランプはロシアゲートの濡れ衣を振り払い始めている)。


EU離脱がなかったら、英国はもっと強くトランプを抑止する動きができたはずだ。




米国(米英?)の覇権放棄・多極化勢力は、トランプに思う存分覇権放棄策をやらせるために、英国をEU離脱の泥沼にはまり込ませた。


そして同勢力は今回、英国をさらに身動きできないようにする追加策として、スクリパリ事件を引き起こしたことになる。


なぜこの追加策が必要だったのだろうか。


スクリパリ事件の発生は

「シリアのグータでアサドの政府軍が市民を化学兵器で殺した」とする、米国の濡れ衣のシリア攻撃が強まったのと時期が近い。


スクリパリ事件もシリアの事案も、濡れ衣作成機関としてOPCWを使おうとする点で共通している。



そのため私は当初、スクリパリ事件がシリア内戦に関連する謀略として起こされたのかと考えた。

だが、どのように関連しているのか見えないままだった。



そのうちに、5月8日のトランプのイラン核協定離脱が起きた。


米国は協定を離脱したが、イランとEU(独仏)、英国、露中といった、イラン協定の他の参加国は協定に残り、米国抜きでイランをめぐる問題


真相は、米イスラエルがイランに濡れ衣をかけて敵視してきた問題)を解決していく構図が維持されることになった。



EUは、イラン問題を超える欧米関係の根幹の問題として


「もう米国には頼れない」「米国を世界の主導役とみなせなくなった」という態度をとり始めた。


トランプのイラン協定離脱とともに、EU(欧州大陸諸国)の対米自立の動きが一気に始まっている。



英国は、独仏EUと同一歩調をとってイラン協定に残留しつつも、欧州の主導役は、英国でなくドイツとフランスだ。


イラン協定の今後の維持に際し、EUはロシアと協調する傾向を強めているが、その流れにおいて、スクリパリ事件でロシアを濡れ衣で敵視して後に引けなくなっている英国は、影響力を全く発揮できなくなっている。


ロシアに敵視の濡れ衣をかけている英国は、ドイツなど欧州大陸諸国も信頼されない。



英国は、米国と同一歩調をとれず、ドイツの対露協調を阻止することもできず、無意味に影響力を失うだけとなっている。


そのため、トランプは伸び伸びと覇権放棄をやれている。




この展開を見て私は、トランプ陣営がスクリパリ事件を起こし、英国を無力化する追加策をやったのは、


米国のイラン協定離脱後、ドイツ主導のEU(欧州大陸諸国)が、英国に妨害されずに対米自立し、欧米間に確実に亀裂を入れ、米覇権の解体を加速するためだったのだろうと考え始めている。


スクリパリ事件でメイ政権が失敗しなかったら、英国は、ドイツにもロシアにも米国にも、もっと影響力を行使できたはずだ。





▼トランプがイランを敵視するほど世界が多極化する


イラン協定離脱後、トランプの米国は、イラン敵視をどんどん強めている。
欧州など国際社会に「米国にはついていけない」と思わせるためだ。


新たな経済制裁は、欧州企業をも制裁対象としうる。


EUは、米とイランの対立が激化したら、イランの側に立つことを決めている(国際法上、イランが正しく、米国が違法だから)。



シリアには、米国とイランの両方の軍勢が駐留している。


米国はシリア政府の許可も取らず、撤退要求を無視して駐留する「国際法違反」だ。


イランは、シリア政府から頼まれて軍事顧問団を派遣しており「合法」だ。



真の目的は、イランを標的にしているように見せて、実のところ、米国以外の国際社会(欧州、露中など)を標的にしている。


喧嘩を売られた国際社会は以前、イラク侵攻のころまで「ご無理ごもっとも」と米国の言いなりになる傾向が強かったが、昨今の米国の衰退加速とトランプの覇権放棄の加速を受け、対米自立を傾向を強めている。


ボルトンやポンペオは、それを加速する役回りだ。実際にイランが政権転覆されることはない。



米国の協定離脱は、国際社会がイランを許す方向の動きにつながっている。そもそもイラン敵視は濡れ衣だったのだから、これは正しい方向だ。



03年に子ブッシュの米国が単独覇権主義を宣言してイラクに侵攻した当時、日本の外交官ら「専門家」たちは「イラク侵攻が濡れ衣に基づく国際法違反であるとしても、もはや大したことでない。


これからの世界で、何が正しいかは、単独覇権国を宣言した、絶対の力を持った米国が決める



米国を非難する国際法や国連など、もはや何の力もない(米国に従属している日本も安泰だ)」と、したり顔で言っていた。



その後、オバマ時代の米国は、国際法を守る風を装う姿勢に戻ったが、トランプになって再び国際法無視を繰り返し、今回は、国際法の側から反撃され、覇権低下に拍車をかける事態となっている。


もはや「専門家」たちは、この事態をわかりやすく解説することすらできなくなっている。



http://tanakanews.com/180523iran.htm







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