函館港イルミナシオン映画祭 会期中広報「イルプレ」

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愛してよ~愛し愛されるための第1章

2004年12月05日 | Weblog
 「愛してるってどういう意味?」キッズモデル,ケイジの口をついて出た言葉にはっとした。意味も分からず「愛」を口にする人,「愛」を求めていても口に出来ない人。
 モデルをすることに情熱を持てないのに母の歓心のためだけにオーディションに通うケイジ,ステージママとして初めてケイジに向き合える母,トップモデルとして不動の人気を誇るタカシが抱える家庭での虐待,あっけらかんとして見えるアキラの心にくすぶる闇。
「母親だから息子を愛して当然だって皆言うけど,誰があたしを愛してくれるの?」母だって,子供だって,父だって愛されたい。
 愛されることを求めていた人々が「愛する」ことを意識したとき初めて相手と向き合い,手を触れることができる距離に届く。痛いほどの現代人の孤独と再生の物語を冷静に,かつ温かく見つめた珠玉の作品が届きました。
 「子供の映画は20代から撮りたくて,そのころは子供が近かったけど40代になって子供が遠くなったからこそ,同じ目線に立って見つめ直したかった。」という福岡監督,主演のケイジ役の役者さんには台本を読ませず,オーディション時からエチュードを繰り返し,またスタッフも10歳の子供に伝わるようにしたのがこういう雰囲気作りにつながったとか。
 劇中では,子供を父親の虐待から守れない辛い立場の母親役を演じた筒井真理子さんは,映画にも出てくるファッションメーカーの企業コンセプトのポスター「あなたは子供を愛する資格がありますか?」を見る直前に,中東紛争地域のテロで息子を2人も失った父親が同じ境遇にある親たちと怒りや恨みをぶつけつつも理解し合い,争いは無益,人間を愛そうと語る姿を見て,戦争や虐待で子供が傷つけられている現状がある一方で,こういう子供を愛そう,みんなを愛そうという大きなテーマのある作品に出られてよかったと語ってくれました。「誰しも疵を持っているけど,誰も悪くない。」自らの命を絶とうとする者にさえも温かな赦しのまなざしを向ける本作は,ちょっぴり日常に疲れて乾いた心のひび割れを潤してくれるはず。
 最後に,インタビューに快く答えてくださった筒井さんが語ってくださったお母様の「愛情をケチっちゃいけない。」という言葉は,きっと世界にあふれる様々な争い事を鎮める魔法の言葉。「愛してよ」と言う前に,つぶやいてみてください。

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