■「邂逅の森」 熊谷達也 文春文庫 714円 [小説]
【山域】 秋田・阿仁周辺、山形・月山など
大正から昭和にかけて、秋田・阿仁のマタギの生涯を描いた大河小説。
山里の経済的困窮、その一方に山の豊かな恵み。
地形を読み、クマの痕跡をたどり、互いの知恵と生命を賭けた壮絶なやりとり。
旅マタギ、寒マタギ、冬の穴グマ猟、春の山まき猟・・・
そして、男女のおおらかで官能的な営み。家族との葛藤、憎しみ、あふれる愛情も。
生きて、死んでいくということ。
戦争に伴う産業構造の激変にもまれ、山間部の生活が大きく変貌する時代を背景に、
獣を追って野山を駆けるマタギのひとり、ひとりが我らに問う。
失いつつある大切なものはなにか・・・
すべては森が教えてくれる。
書店で手にした偶然の一冊が、知られざるマタギの世界にいざなってくれた。
直木賞 受賞作。
(2013年1月3日 読了) (写真は、クマの足跡:小樽・2007-04-21 春香山)