【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【さて何を喰おうか】

2009年04月30日 | アジア回帰
 
 単身でチェンマイ暮らしをしていた2年前の今ごろと、まったく同様の日常が戻ってきた。

 起居する部屋は、チェンマイ門のすぐそばにある安宿「タイウエイ・ゲストハウス」の8号室である。

 2階の道路寄りにあるこのシングル・ルームのテラスには、蔦草がこんもりと生い茂っている。

 テラスの前面には、若葉をつけた木々が枝を広げ、その向うに隣接する4階建てのビルが、強烈な西日をさえぎってくれる。

 チェンマイ門の脇を走る一方通行の道路からは、ひっきりなしにクルマやバイクの走行音が聞こえてくるけれど、若緑色の蔦や木々を眺めていると、その騒音もさほど気にならない。

     *

 朝7時前後に目覚めると、顔を洗ってすぐに部屋を出る。

 チェンマイ門の前に広がる市場を右に見ながら、直進する。

 顔見知りの商店主たちと挨拶を交わしつつ、托鉢の僧とその前にしゃがみ込んで寄進する人々の隙間を縫うように進み、雑踏を抜けて15分ほど歩くといつもの公園に着く。

 そのまま、公園の周回コースに入り、少しペースをあげてウオーキングを始める。

 このコースは、一周600メートルである。

 コースの内側では、ラジオ体操、太極拳、エアロビクス、サッカーなど、年齢層の異なるグループがそれぞれの運動を楽しんでいる。

 周回コースではウオーキングを楽しむ人がほとんだが、ときに年老いたファラン(欧米人)が、喘ぎながらジョギングをしている姿も見られる。

 コースを2周もすれば、首筋や背中から汗が噴き出し、前夜のビールやウイスキーが次第に抜けていく。

 同時に、腰痛もちの常として腰にだるさを感じるようになり、その腰の具合と相談しながらときに30分、ときに1時間とひたすら歩いたあとに、軽く整理運動をする。

 少し休んだあとで、今度はもときた道を逆戻りだ。

 なじみの豆乳屋で豆乳と揚げ菓子を買い、市場で搾りたてのオレンジジュースをあがなうと、宿に戻ってシャワーを浴びる。

 庭に面した1階の談話スペースで、起き出してきた旅人たちと挨拶をかわし、テーブルに簡素な朝食を広げる。

      *

 午前中は、読み書きをして過ごし、昼時になると近所の食堂に出かける。

 なじみの店は3軒あり、歩くのが面倒なときは宿の3軒隣りのカレン族食堂で、もっぱら水牛のモツスープとモチ米を。

 少し歩きたいときには、「家出」の際に見つけたビルの谷間の食堂で、もっぱら鶏肉焼き飯を食す。

 そして、これらに飽きたときは、10種類ほどの惣菜の中から好きなものが選べる「ぶっかけ飯屋」におもむき、その日の気分で2種類の惣菜を飯にかけてもらう。

 いずれも、20バーツから35バーツ程度の簡素な昼食である。

      *

 午後になると気温がさらに上昇するので、プールにでも出かけたいところであるけれど、いまは、友人のウイワットがプラオに里帰りしているので、それは遠慮している。

 とりたてて用事もない場合は、宿に戻って再び読み書きである。

 だが、クーラーのない部屋ではそれもはかどらず、いつの間にか“昼寝”という仕儀になる。

 目覚めると、すでに西日が2階のテラスをギラギラと照らしている。

 わが部屋への直撃はないものの、やはり暑さに全身をあぶられ、咽喉がビールを求めてやまない。

 そこで、ふらふらした足取りで市場に向かい、ビアレオ(豹印ビール)とつまみをあがない、談話スペースでジョッキをあげる。

 そうこうするうちに、同好の士が集い始め、テーブルの上にはそれぞれの好みのビアチャン(象印ビール)やハイネケンのボトルが並び揃う。

 毎日顔を合わせているので、さほど物珍しい話題もないのであるけれど、ぽつぽつと語り合っているうちに、いつしか日が暮れる。

 空腹を感じると、「さて、今日は何を喰いますか」などと呟きつつ、それぞれが思い思いに夕食の調達に向かう。

 昨夜は、しきりに「冷やしうどん」が喰いたくなったが、どうも芳しい店の名前があがってこない。

 先ごろ、ヴィザを取りに行ったマレーシアのペナンで、安くてうまい中華料理をたらふく喰ってきたというTさんのすすめで、さる日本料理屋に冷やし中華を喰いに行くことにした。

      *

 宿から徒歩1分もかからぬチェンマイ門市場は、実に恵まれた好位置にあるのだけれど、惜しむらくは「食」のバリエーションに乏しい。

 屋台の数も限られ、複数ある総菜屋も連日まったく同じものを並べているので、10日も通えば飽きがきてしまう。

 そこで、これまたTさんの勧めでロータス系のコンビニに出かけ、しばらくは毎日豆腐を買ってつまみにしていたのであるが、近所ではわさびや生姜が手に入らず、豆腐と醤油のみの組み合わせにも飽きる仕儀と相成った。

 次に見つけたのが、直径1センチほどの米だんごに糸を通して焼いたイサーン料理であるが、つまみとしてはかなり優れているものの、やはり連日となると飽きがくる。

 そこで、このところは、豆腐、米だんご、焼き鳥レバー、フレンチフライ、という私にとっての「4種のお手軽つまみ」をローテンションで回している次第だ。

 飲ん兵衛である私にとっての最優先事項は、ビールと「つまみ」の相性であり、これがその日の体調にぴたりとはまると、おのずとその後の「飯」も決まってくる。

 その意味では、昨夜の「フレンチフライ×エビフライ+冷やし中華」という方程式は、なかなか絶妙なものであったと言えよう。

 ちと、大仰に過ぎるが、やはり日々の「飲食」は、単身、安宿で暮らす上での重要事項であることに間違いはない。

     *
 
 さて、腹がくちくなると、自ずとタイ・ウイスキーに手が伸びる。

 好みは、ラム酒という表示のある「センソンSangSom」である。

 単身での夜遊びは好まぬタチなので、同宿の面々とぽつぽつ語らいながら、あるいは池波正太郎の『剣客商売』などをひもときながら、ちびちびやるのが何よりの楽しみとなる。

 昨夜は、夜11時頃に滝のようなスコールが襲い、談話室の天井からの雨漏りを避けながら右往左往するという、愉快な余興も加わった。

 かくして、チェンマイの夜は更け、雨上がりの涼やかな風に包まれて眠りについた次第だ。

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