【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【送別の夜】

2007年07月05日 | アジア回帰
 昨夜は、ラーが音頭をとって私の送別会を開いてくれた。

 初めは、ウイワッが私とラーを自宅に招いてくれたのだが、マッサージ学校の実習で疲れきったラーは宿の隣りでのパーティーを主張し、私もそれに同意した。

 食堂でウイスキーソーダを飲みながら、ラーが「あれは好きか?」「これは好きか?」と尋ねるのだが、食物に関する英語を知らないため、なかなか話が通じない。

 ジェスチャーも無茶苦茶なので絵を描くように言うのだが、ラーはなぜか「描けない」という。

 代わりに食堂のおかみがノートに描いたのは、イカとエビだった。

「わたしが市場に行って、食材を仕入れてくるから。今日はバーベキューだよ」

 そんな話をしているうちに、ラーがウイワッに電話をかけろという。

「今夜はこの食堂であなたとゆっくり話がしたい」

 そう言うからウイワッの誘いを断ったというのに、まったく気まぐれな女である。

 何だか話が見えないので、ラーと電話を代わった。

「彼は来れないと言っているけど、きっと来ると思う。あなたはタイ人を知らないけど、わたしはタイ人を知っているから分かるんだ」

 どうやら、ラーとウイワッの間で送別会の主導権争いが繰り広げられているらしい。

 いきさつを見守るしかないなと思っていたら、ラーの読みどおりウイワッがやってきた。

 どういう話になったのか、食堂のおかみと2歳の息子も含め、みんなで市場に食材を仕入れに行くことになった。

 ラーがウイワッと何やら相談しながら、エビとイカの品定めをやっている。

 その合間にも、ウイワッが私に「あれはうまい」「これはうまい」と食材を勧める。

「今日はラーがバーベキューをやると言っているから、ラーの判断に任せてくれないか」

 そう言うと、やっと二人の冷戦に終止符が打たれたらしい。

      *

 ラーが、ココナッツを割って特性のココナッツウイスキーを作ってくれた。

 ウイワットは食堂の台所に入り込んで、タイスキの準備をしている。

 おかみが野菜を刻み、若い旦那がイカをさばいてバーベキューの支度だ。

 いつの間にか、今日のメイン料理はタイスキになり、イカ焼きはサイドメニューになったようだ。

 彼らが交わすタイ語の会話はほとんど聞き取れないが、みんなが私のために一生懸命働いてくれていることだけは分かる。

 うれしいことに、食堂の旦那がタイのような焼き魚をおごってくれた。

 ココナッツウイスキーが腹に染み渡り、タイ人の優しさが胸に染み入る。

 かたわらで、ラーがエビの殻をむしり、むっちりとした身を私に頬張らせてくれた。

 酔ったラーが大いに笑い、そして少しだけ泣いた。
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