【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【休日の豚舎デート】

2010年06月19日 | オムコイ便り
 
 朝起きると、なんだか体が重い。

 昨夕、畑用地の土中に埋まっていた大石と格闘したからでもあるのだが、何よりも連日の客の不入りに気が滅入っているのである。

 店が暇だと理屈的には楽なのだが、それなりの準備はあるし、店を開けているとやはりどこかで気が張っている。

 それで客が入らないと、疲れは倍増する。

「今日は休むかなあ」

 弱気になっているところに、ラーが「今日は豚骨がない」と言い出した。

 わざわざ町まで買い出しに行って、元も取れないような客足では仕方がない。

 ラオスから戻ってからは、一度も店を閉めていない。

「うーん、今日もたぶん客は少ないだろう。久々に休むか」

 昨日、次姉の田起こしを手伝いに行って疲れ気味のラーも、否応なく賛成した。

      *

 のんびりと朝飯を食ってから、ふたりして豚の世話に出かけた。

 飼料の配合をラーに任せると、その量が異様に多い。

 私が作る2倍ほどある。

「ラー、それじゃあやり過ぎだ。だから、あんなに糞が多かったんだな。豚はあればあるだけ食ってしまうんだから、こっちでコントロールしないと病気になっちまうぞ」

「だって、あんなにおいしそうに食べてるじゃない。たっぷり食べてるから、ブーちゃんもフーちゃんも、どんどん大きくなってるでしょ」

 ラーが妙な発音の日本語で“ブーちゃん、フーちゃん”と言うとおかしくてならないのだが、ここは笑っている場合ではない。

「そりゃあそうだが、人間と同じで食い過ぎは体に良くない。それに、食い残しをあとで食べると、腹をこわすぞ」

「でも、豚の仕事は食べて寝て太るだけなんだから、問題ないよ」

「・・・」

        *

 抱卵に入った2羽の雌鶏の様子を見てから、また豚舎に戻ると、体がひとまわり大きなブーは食い過ぎたような顔をして床に寝転がっていた。

 だが、フーはまだしつこく食べ続けている。

 おそらく、体の大きなブーが餌を独占するので、餌にありつけなかったのだろう。

 そう思っていると、ブーがまた起き上がって餌に鼻を突っ込んだ。

 すると、フーが激しく鼻面で攻撃を仕掛け、ブーを蹴散らしてしまうではないか。

「なんだ、フーの方が強いのか?」

「そうだよ、体は小さくてもフーちゃんは元気もんなんだから。餌だって、フーちゃんの方がたくさん食べるんだよ」

 多過ぎると思った餌も、ほぼ無くなりかけている。

     *

 私が豚の世話に行く場合、餌やりと糞の掃除で正味20分くらいだ。

 だが、ラーはいつも1時間くらいは戻ってこない。

 どうせ、近所の親戚とおしゃべりでもしているのだろうと思っていたのであるが、今日のラーは餌を無心に食べる豚のそばにしゃがみ込んで、耳のうしろを掻いてやったり、背中をさすったり、何かをしゃべりかけたり、ずっと付きっきりである。

「お前さん、いつもそうやって豚と一緒に遊んでるのか?」

「そうだよ、だからクンターが近づくと逃げ出すけど、あたしが触っても全然平気でしょ」

 そこで、ブーとフーがまた餌争いを始め、水で練った餌が盛大にラーの服に飛び散った。

 いつも、糠だらけになって戻ってくるのは、そういう訳だったのである。

 店をさぼる時間が長いだけ、ブー、フー、ラーの付き合う時間も長くなる。

 これじゃあ、ふたりの観察の度合いが違ってくるのも仕方がない。

 餌代はかかるが、これからはもっと大盛りにしてやることにしよう。

 のんびりした休日の朝、ロマンチックな“豚舎デート”には思わぬ発見もある。

       *

 それにしても、今日はいい天気だ。

 ひと足先に店に戻って、久々の青空にカメラを向けた。

 「洗濯日和だねえ」

 そう言っていたはずなのに、ラーはまだ戻ってこない。

 まだ、豚と遊んでいるのだろうか。

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