【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【母を残して】

2008年06月26日 | アジア回帰
 羽田に着くと、青空が広がっていた。

 福岡で過ごした10日間ほどは、雨かどんよりとした曇り空ばかり。

 気分転換に姉と訪れた玄界灘も、鈍色だった。

 それだけに、久々に見る青空に思わず声が出た。

 だが、気分は相変わらず重い。

         *

 病室のベッドで眠り続ける母を残しての一時帰宅。

 病状にはなんの見通しも立たず、ただ「覚めてくれ」と願うだけの日々。

 鼻孔に差し込んだチューブから胃に流れ込む栄養分だけが、母の命を支えている。

 微熱は、誤って肺に流れ込んだ唾液が引き起こしつつある炎症の前兆かもしれない。

「自力での咀嚼と飲み込みができなくなったら、それは寿命であるという考え方も外国にはあります」

 若い医師の淡々とした病状説明が、頭の中でぐるぐると渦巻いている。

         *

 3ヶ月ぶりのわが家。

 庭とアプローチを覆い尽くした雑草に溜め息をつきつつ玄関の鍵をあけると、カビの匂いが鼻をついた。

 溜まりにたまった郵便物の山に手をつける気にもなれず、座イスに座り込んでただぼんやりと煙草をふかすばかり。

 
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