1週間ほど前に、「バンブーハウス大変身?」と題した記事と写真を掲載した。
その図柄にびっくり仰天した既泊ゲストも多いことだろう。
きっかけを作ったのは、昨年に藤間さんと同宿になった大阪の真澄さんである。
期せずして今年もまた同宿となったのであるが、彼女が同行してくれたパートナーの一成(いっせい)さんが、なんとスプレーで壁絵などを描くグラフィティ・アーチストだったのである(彼ら自身はライターと呼んでいるらしい)。
もうひとりの同行者は、真澄さんの友人である鶴ちゃんこと葉月さんだ。
*
一成さんは、100キロを超える巨体である。
体はいかついが、笑顔は少年のように愛らしい。
ひと休みすると、一成さんは水浴びを済ませてさっそくスプレーの準備に取りかかった。
真澄さんは彼の半分の体重もなさそうだが、まるで敏腕マネージャーのようにテキパキと動き、ビデオ撮影の準備などを進めている。
水浴びをしてタイで買ったというミッキーマウス模様のパジャマ(?)に着替えた鶴ちゃんは、ホンワカとした空気を漂わせている。
さて、事前には作品の写真を送ってくれて「できれば大きな壁に描きたい」という話はもらっていた。
しかし、わが宿にも村にも、そんな大きな壁なんぞはない。
村の衆にも話はしたものの、今のところ確実に描いてもらえるのはわが宿のトイレくらいだ。
むろん、「ぜひぜひ」ということになって、さっそくお粗末なブロック積みの壁がキャンバスとなった。
*
女将ラーの注文は「花を描いてほしい」というものだった。
ついでに番頭さんは、「この村から感じた雰囲気を花の絵に活かしてほしい」とお願いした。
ちなみに、彼のライターズネームは「キャスパー」と言い、そのキャラクターマークも見せてもらった。
「これも描こうかなあ」という呟きがあったので、サイン代わりに小さく入るのかと思っていた。
壁の前に立った一成さん、下絵も描かず、いきなり緑色のスプレーで線を描き始めた。
「ふむふむ、これは花の茎かなあ」
なんて思っているうちに、ネコの顔のようなものが現れ出した。
あれれ、これはさっき見たキャラクターマークではないか。
女将のラーが近寄って来て、「花はどこにあるの?」
うーむ。
番頭さん、ちょっと焦ったものの、すでに遅い。
*
そのうちに赤い花がその周囲を囲い始め、右側にバンブーハウスの文字が浮き上がり始めた。
うーむ、なるほどなあ。
これはこれで、なかなか面白いではないか。
キャスパーというキャラクターについても全然知らない番頭さんではあるが、殺風景だったトイレの壁が、ぱっと明るくなったのは確かな事実である。
しかも、制作料は無料。
そこで制作が終わると、村の焼酎をしこたま飲んでもらったことは言うまでもない。
*
晩飯のおかずは、プラーニンのトムソム(レモン味)スープ。
一成さんは体格がいいだけに、飲む量も食べる量も気持ちがいいほどに凄い。
同宿の藤間さんとビールを酌み交わしながら、制作にかける姿勢などについて話が弾んでいる様子だ。
食後に全員でホタル見物に出かけたのだが、あいにくわずかな光のまたたきしか見えず。
これが幻想的なまでにたくさんの光に包まれていたら、また別の制作のヒントになったかも知れないのになあ。
☆今日も、応援クリックをよろしく!