まさか、正月早々に訃報を聞くことになるなんて。
しかも、それが親しかったミスターOKとなると、言葉もない。
彼は、いわば私が村で暮らす上での水先案内人のような存在だった。
*
かと言って、別に何かを教わったわけではない。
彼は、ひたすら酔っ払っていただけだ。
そして、そのたびに私に向かって「クンター、OK?」ととろけるような笑顔と優しい声で問いかける。
こちらとしては、何がオッケーなのかさっぱり分からないのだが、とりあえず「うん、OK、OK」と答えるしかない。
すると、彼はホッとしたような顔でニッコリと微笑むのである。
そして、そのやりとりが数分おき、時には数秒おきに延々と繰り返される。
この珍問答を耳にするまわりの連中も、ひたすら笑っている。
その笑顔に導かれるようにして、私は慣れない村での暮らしに溶け込んでいった。
*
彼が体調の急変を訴えたのは、年末に行われた彼の長男の新築祝いの場であったという。
私はゲストがあったので長男を代理に出したのだが、あとで訊けば誰もが深く酔っていたために彼の急変に対する対応が遅れた気配がある。
なんとか病人には担ぎ込んだものの、彼は新しい年を迎えることなく空に昇ってしまった。
享年58。
その余りにも早い死に、私はまだ茫然としているだけだ。
ともあれ、ミスターOKよ。
天国ではいくら酒を飲んでも、誰も文句は言わないだろう。
あなたを深酒に走らせた現世のもろもろからも、もうすっかり開放されたはずだ。
何の憂いも無く、思う存分やってくれたまえ。
私が空に昇るのも、さほど遠い先ではあるまい。
そのときにはまた、あのとろけるような甘い声で「クンター、OK?」
そう呼びかけてくれろよなあ。
合掌。
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