川へ水浴びに行くのが、毎日の楽しみになってきた。
雨季に入ってからは、連日のスコールで川の水が泥を含んで真っ茶色になり、とても水浴びができるような状態ではなかったのである。
ところが、ここ1週間ほどまとまった雨が降らず、水はささ濁り程度に。
水かさも減って、ちょうどいい“水加減”になってきたのである。
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わが家から坂道を下って徒歩数分の水浴び場は、ちょうど小さな湾のようになっており、岸辺には衣服をかけるための竹竿も設置してある。
この湾内にいる限り、年寄りも子供も安全だ。
本来なら、この湾の下流脇から土嚢の堰が向こう岸まで積まれて、一帯はプールのような淀みになる。
だから、2月の乾暑季に入ると連日子供たちの歓声が響き渡る。
川岸には太い蔦が垂れ下がっており、ターザンごっこも楽しめるのである。
巻きスカートを胸まで引き上げた女たちは、この堰に腰掛けて髪を洗ったり、洗濯をしたりする。
堰の下に現れた砂の川床では、若い衆たちがネットを張ってビーチバレーならぬビーチタクロー(セパタクロー)を楽しむ。
だが、この堰は先の洪水ですっかり流されてしまった。
従って、湾から出ると強い流れに足元をすくわれそうになる。
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トランクス一枚になり、まずは湾内で身体と頭を手早く洗う(ついでに、トランクスにも石鹸を塗りたくる)。
全身泡だらけのまま、流れに逆らってやや上流まで歩き、顔面から川面に倒れ込む。
髪の毛をすすぎながら身体を反転させ、仰向けになって水に浮く。
あっという間に10メートルほど流されてしまい、あわててクロールで湾内に逃げ込む。
これを数度繰り返すと、入浴と洗濯が遊びながら完了する。
嫁のラーも巻きスカートを胸の上で縛って同じ遊びをするのだが、うつむけなのでスカートが空気をはらんで尻の上でパラシュートのように膨らみ、浮力がついてブレーキが利かない。
かなり下流まで流されて、浅瀬でやっと川岸にたどりついた。
どうするのかと思えば、裸足のままイバラの生えた土手を駆け登り、石ころだらけの道を湾まで走ってきて、また川に飛び込んでは同じ遊びを繰り返す。
洗った髪を額の上でだんごにしているので、すっかり悪ガキの顔だ。
今日は先客に叔母がいたので自粛しているけれど、これが私とふたりだけだと、巻きスカートも脱ぎ捨ててターザンごっこを始めるのだから、とても困ってしまう。
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10分も川に入っていると、さすがに身体が冷えてくる。
バスタオルを首にかけ、41歳のお転婆娘と手をつないで坂道を登りかけると、上流側の山の端に陽が落ちる。
30数年前には、この悪ガキ、裸んぼで近所の洟垂れどもを引き連れ、この坂道をのし歩いていたのだろうな。
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