2週間ほど前にその話を聞いた時は、まさに頭をガーンと殴られたような感じだった。
雨季のダニ騒ぎで世話になったタイ人医師が、今月末でオムコイの診療所を畳むというのである。
彼はランプーンの出身で、老いた両親の面倒を見るために実家のそばに診療所を移すことにしたのだそうな。
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彼の良医ぶりは、すでに何度も書いた。
町の病院と違って、待ち時間も少ない。
病院恐怖症のラーやジョーですら、「クリニックになら行ってもいい」というほどの惚れ込みようなのだ。
ふんぞり返っている日本の医者や、山奥からやってくる山岳民族を小馬鹿にしているような他のタイ人医者に見習わせたいくらいである。
せっかく、家族ぐるみで相談に乗ってもらえる主治医を見つけたと思ったのに、そりゃあないだろうと愚痴りたくもなってくる。
ちなみに、僻地医療を志す後継者がやってくるのかどうかは、まだ定かではないという。
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診療終了日は、今月末。
4月になって、またぞろ出始めたダニ被害の症状がなかなか改善しないこともあって、昨日、挨拶がてらに顔を出してみた。
「ああ、血圧は落ち着いていますね。胸の音も、問題なしと。あ、でもダニの方はかなりやられていますね。前回は注射もしてみたけど、その後の経過はどうでしたか?」
「一時的には収まったんだけど、このところ毎日新しい咬み痕が出てきます。雨季のときとは、違う種類のような気もしますねえ」
咬み痕を丁寧に見てから、首をひねった。
「うーん、やっぱりダニなんだろうなあ。4月に入っても、オムコイは雨ばかりで湿気が多いから。前にも聞いたけど、以前にアレルギー症状はなかったんですよね?」
「ええ、まったく。ダニに刺されるのも、オムコイにいるときだけです」
「そうなると、ダニのシーズンにはオムコイを離れた方がいいのかなあ」
「たとえば、あなたがいるランプーンとか」
「あ、それはいい考えだ」
大笑いになった。
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パソコンでこれまでの処方歴を調べてから、しばらく考え込んだ。
「それじゃあ、こうしましょう。新しい薬も交えて、3種類。これを試して、もしも効果が出なかったら、別のもう1種類を追加する。最後の奴はかなり強い薬なので、あくまで効果が出なかったらということを忘れないでください」
「念のために、塗り薬もたくさんもらえますか?病院の薬は、待ち時間が長い割りにほとんど効果が出ないんで」
「もちろんです。薬がなくなったら、このパッケージを薬店に見せて取り寄せてもらってください」
雨季に備えて数十個は買い溜めしたかったのだが、あいにく在庫は6個しかなかった。
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支払いをしようとすると、「料金はいらない」という。
「あなたは、わがクリニックの一番いい顧客でしたから」
驚いた。
家族も含めかなりの回数は通ったにしろ、外国人の私からも医療登録をしている現地の人たちと同じ安い料金しか取らないのだから、支払った金額などたかが知れている。
ここまでサービス業に徹している医療人も、珍しいのではあるまいか。
「短い間でしたけど、忘れかけていた英語でいろんな話もできたしね。とても楽しかったですよ」
そういえば、彼はアメリカ留学の経験があるのだった。
「こちらこそ、本当に親切に診ていただきました。家族も、残念がっています。それじゃあ、また何かあったら、ランプーンの診療所に駆けつけますから」
「ぜひ、そうして下さい。待ってます(笑)」
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チェンマイからなら、ランプーンも近い。
機会があったら、新しい診療所を覗いてみることにしよう。
*写真は、無料にしてくれた飲み薬と塗り薬。払ったとしても、診療費込みで200バーツと実に安い。顔写真は、照れて撮らせてくれなかった。
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でも、サヨナラですね。
私にも「ありがとうございました。」と
言わせてください。
お医者さん(と獣医さんも..)かかってみないとわからないですからねぇ.また,良い先生が見つかるといいですね.
ちなみに,布団セットを新しくするのはいかがでしょうかね.あるいは,布製品は一度全て煮沸するのもいいかと思います.卵まで死にますよね.
受付にはカレン族の女性もいたので、タイ語が話せない高齢者も喜んでいたのですが。残念です。
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ishiさん
その医師とは布団の話もしたのですが、咬み痕が両腕と顔(耳とまぶた)だけに集中するのを不思議がっていました。
とりあえず、枕を煮沸してみようかな。