昨日の晩飯どき、羽蟻の乱舞とともに降り出した雨が、明け方までやまなかった。
朝6時の室温は、20℃。
長袖Tシャツの上に、薄手の中間着と厚手のフリースジャケットを羽織った。
*
「あ、鶏をつぶすのを忘れていた!」
これは昨日の朝のことだが、ラーがまたお参りをすると言って騒ぎだした。
「またか?この間、先祖供養をしたばかりじゃないか」
「あれは、父の命日。今日は、クンターが村に戻ってきてくれたことに対するお礼参りだよ」
なんでも、私が家出をしている間に隣家のプーノイに頼んで“夫婦仲の修復”に関するお祈りをしてもらったらしく、今日はそのお礼参りにふさわしい吉日なのだという。
店を飛び出していくと、入れ替わるように2羽の鶏を小脇に抱えた甥っ子のジョーと従兄の長男ゴンが駆け込んできた。
例によって、「すぐに庭の鶏を絞めて、料理しろ!ほれ、今すぐ、今すぐ!」と邪知暴虐な命令を下したらしい。
ゴンが両手に鶏の首をつかんで力を込め、ジョーが手早く火を熾す。
羽をむしって全身をあぶり、丸ゆがきだ。
そうする間に、ジャイローン(せっかち)な女王さまが供物の焼酎をあがない、庭から採ったウコンやハーブなどを両手いっぱいに抱えて戻ってきた。
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そのうちにプーノイもやってきて、例によってバナナの葉っぱで米を包んだり、粒状の白い花をちぎってきたりして、供物の準備を始める。
鶏がゆがきあがったところで、お参りである。
しかし、前述のような趣旨のお礼参りなので、私には特にお祈りすることもない。
まあ、祭壇の前で食す茹でたての鶏レバは相変わらず美味であったけれど・・・。
鶏鍋を仕立て、供物の焼酎を飲み始めたところで、親戚連中やミスター・オッケーをはじめとする村の衆がぽつぽつと集まってきた。
「今日のお参りのことは誰にも話していないんだけど、こうしてみんなが集まってくれる。ありがたいことだね。みんな、クンターのことを心配してくれていたんだよ」
・・・それは、お前さんの大声が村中に響きわたったからだ。
と言いたいところだが、まあ、今日はいびるのはよしにしておこう。
そのうちに村長はやってくるわ、オボートー(地区行政事務所)の副所長はやってくるわ、いつの間にやら大宴会と相成った。
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「さて、店を開けるか」
鶏鍋と飯を平らげてみんなが去ったところで、腰をあげた。
「あ、ルクチンムー(豚肉つみれ団子)がない!」
「バ、莫迦もの!なんで、昨日のうちに手配しておかない?」
「昨日市場に行ったけど、売り切れだったの。入荷は、明日。仕方がないから、今日は店を閉めて茸狩りに行こうよ。雨のあとだから、大猟間違いなしだよ」
そこへ、いったん姿を消していたジョーとゴンが山行きの身支度を整えて現れた。
どうやら、べろべろに酔ったミスター・オッケーに私が捕まっている間に、話はすっかりまとまっていたようである。
また、謀られたか・・・。
いつもなら、星一徹に変身して店のテーブルをひっくり返すところであるが、昨夜食した茸料理の味の余韻が残っているので、気持ちは急速に久々の山歩きに傾いていく。
私も素早く身支度を整えて、2台のバイクに分乗した。
キノコ狩りの様子は、また明日にでも。
*冒頭の写真は、またもや愛妾と息子の命を奪われて悲嘆にくれる雄鶏ジャラケー。
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悲嘆に暮れるジャラケー,見るからにおいしそうな鶏ですよね.
日本で言えば地鶏で,自然農法で育成された高級鶏肉ですね.しっかりした味でしょうねぇ.それこそ,このこと一緒に炊き込みご飯とか,鶏鍋とか,いいですね.
ジャラケーに成り代わって、お礼申しあげます。
ラーが言うには、カレン族の地鶏とミャンマーから入ってきた闘鶏とのかけあわせで、カイクルン(ハーフ鶏)と呼ばれているそうです。私は“カレン軍鶏”と命名しています。