【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【村の正しいソンクラーン】

2013年04月19日 | オムコイ便り

 暦の上でソンクラーン(タイ正月)はとっくに終わったのだが、わが村では昨日まで伝統行事が続いた。

 村の古老たちが集会所に一同に会して、村の衆の表敬水掛けを受けるのである。



      *

 観光客の多くは、テレビなどで見る水掛祭り、というよりも無茶苦茶な「水ぶっかけ合戦」をソンクラーンと思い込んでいるようだ。

 しかし、元々は仏教に根ざした仏像洗いに起源を発しており、それが正月の挨拶行事として人々の間にも定着したのだという。

 わが家では、まず家族で「髪洗い」の儀式を行う。

 使うのは、沸騰させたお湯にウコンと木の実を入れた「聖水」だ(寺の仏像を洗った水を回収して使うこともある)。

 過去1年間の苦難、不幸、争いごとなどをすべて洗い流し、心身を浄めて新たな年を迎えるのである。

 次に、竹籠に贈り物を入れて、母親や叔父、叔母、近隣の古老などを訪問する。

 聖水で彼らの髪や手を洗い、そのあとで糸巻きの儀式を行ってもらうのだ。

      *

 今回は、ちょうどブログ読者のJさん&ぷよよさんご夫妻がバンブーハウスに宿泊されていたので、一族の長老を表敬訪問する際に、お二人にもこの「髪洗い」と「糸巻き」を体験してもらった。

 彼らは、すでに何度もチェンマイを訪れているのだが、こうした伝統に根ざしたソンクラーン行事を体験するのは初めてのことだという。

 しかし、わが村の行事には焼酎がつきものだ。

 儀式用の焼酎は、その場で飲み干してしまわねばならないというしきたりがあり、献杯の嵐が押し寄せる。

 昼過ぎに、ご夫妻が山芋まで持参して作ってくださった「本格とろろそば」をいただいたあとは、急速に酔いが回って、そのままふとんに倒れ込んだ。

 献杯に律儀に付き合ったお二人も、午後は昼寝の時間になったようだ。

     *

 さて、冒頭に書いた今年最後の行事は、この古老表敬儀式を村全体で行うものである。

 テント張りの下の椅子にずらりと並んだ古老たちに、聖水を手にした村人たちが右回りで順繰りに挨拶を行ってゆく。

 「水掛け」は、手の平だけである。



これが終わると、村の衆が手に手に白い木綿糸を持ち、目当ての古老に糸巻きをしてもらう。



私も「古老」の部類に入ってもおかしくないのだが、誰も椅子に座れと言わないので、若い衆に混じって水掛けを行い、少しばかり年上の元村長と統括村長に糸巻きをしてもらった。

 あとは、村人同士での水掛けになるのだが、これも事前に「新年おめでとう」と声をかけ、肩口に少しだけ水を垂らすという上品なものである。

 決して、ぶっかけ合いなどしない。

     *

 昼飯どきになると、ビールや焼酎がふるまわれる(料理は村の衆の手作りだ)。

 少し酔いが回ると、若い男衆が太鼓や銅鑼や鉦を鳴らし始めた。

 すると、そのリズムに乗って古老たちが伝統の踊りを舞い始める。

 両手に竹の棒を持てば、それは剣の舞いだ。



 80歳に近い古老たちの動きは、驚くほどに激しい。

 角笛とみまがうほどに立派な竹笛の音が、ビョウビョウと響き渡る。

 吹いているのも、70代の古老。



 私も試してみたが、スースーという情けない音しか出ない。

 踊りを真似ると、数秒で息があがった。

      *

 終わってみれば、またまた飲み過ぎである。

 だが、これがわが村における本来のソンクラーンの姿だと実感することのできる、とてもいい伝統行事だった。

 こうして、姪っ子の結婚式に始まる長い長いお祭りが、ようやく幕を閉じたのだった。

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2 コメント

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Unknown (ぷよよ)
2013-04-19 18:45:13
クンター・ラー
楽しいひとときをありがとうございました。

本当に良いところでした。

ソンクラーンの意味は知っていたのですが、体験出来たのは貴重です。

この歳になって、その気になれば何でもできると再認識できたのも良かったです。

この2年程、オムコイに行きたい!ラーに会いたい!と熱望してましたが、遂にお会いしましたからね。

お二人の人柄に直接触れ、生活の体験が出来てより有意義な旅の思い出ができました。

また、お会い出来る日を楽しみにしております。
返信する
ラーからの伝言 (クンター)
2013-04-20 09:16:31
ぷよよさん

 こちらこそ、ありがとうございました。まだまだ、体験していただきたいことが一杯あったのですが。
 「次回は、ぜひ長期滞在を!」とラーも申しております。
返信する

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