わが村のお洒落なメインストリート「水牛の糞通り」には、3軒の雑貨屋がある。
ちょっとした買い物には事欠かないのだが、やはり品数や鮮度には限りがある。
特に、ゲストのある時は毎度毎度ナムプリック(唐辛子味噌)というわけにはいかないから、どうしてもまとまった生鮮食料品が必要だ。
そこで2キロほど離れた町の市場に買い出しに出るわけだが、なんとここには月曜日と木曜日の週2回だけしかチェンマイからの入荷トラックがやってこない。
ことほど左様に寂しい限りの買い物事情なのだが、これに多少の花を添えているのが、町のサッカーグラウンド脇で毎週開かれる水曜市である。
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人々の一番のお目当ては、山奥に住むカレン族はもとより、華やかな民族衣装をまとったムスゥ、メオなどの各山岳民族が売りにやってくる高原野菜である。
キャベツ、白菜、トマト、花野菜、蔓菜その他嫁のラーが驚喜する得体の知れないものなどなど、売り物はその時々によって異なるのだが、一応は有機栽培という触れ込みであり、何よりも値段が滅茶苦茶安いのだ。
そして、やはりチェンマイから入ってくるものに較べて、はるかに味がいい。
それから、大型の冷蔵車で運ばれてくるエビ、イカなどの海産物の数々。
村で手に入る魚といえば塩辛いプラトゥヌン(鯵に似ている)や干魚、市場で手に入るのはプラーニンなどの養殖魚くらいだから、これにはついつい目がくらむ。
カレン料理には欠かせない小粒のニンニクやミニ玉ねぎも、ここでは保存に適した茎付きのままでごっそりと手に入るのである。
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カノム(お菓子)、焼きもの、果物、各種の総菜など、露店も賑やかだ。
中には、地べたにゴザを敷いて、煙草の葉や檳榔、丸盆などの竹細工を売っている人もいる。
左手には、いつも市場で店を構えている豚肉屋が3軒。
解体したそのままに、豚の頭や豚足、骨、バラなどがどどんと固まりで置かれている。
注文すると、山刀で骨や肉を断ち切って秤に載せてくれるのだ。
広場のようなスペースを囲むようにしているこれらを冷やかしつつ歩いてゆくと、奥まった路地脇には日用品や衣料品を主体にしたテント張りの店がずらりと並んでいる。
目を引くのは、鉈、山刀など各種の作業用刃物の数々。
夜の作業には欠かせない各種ヘッドランプも、ずらり。
最近では、メモリーを差し込んで再生するステレオセットなんぞという洒落物を扱うところも出てきた。
90バーツのTシャツ、80バーツの作業用長靴、400バーツの敷きふとん、20バーツ均一のプラスチック製品。
眺めているだけで飽きがこない。
その背後に、なんとなく人々の暮らしぶりが浮かび上がってきて楽しいこと、この上ない。
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ひと巡りして、先ほどの露店のどこかで朝のおかずを買って家に戻るのがまた楽しみでもある。
バイクの座席前のフックには、パンパンに膨らんだビニール袋がいっぱい。
後部座席に座るラーの両手も、袋だらけだ。
ちなみに、バイクの駐車料金は2バーツ。
券をもらえば、何度出入りしても追加されない。
オムコイを訪れるなら、早朝に開かれるこの水曜市を目当てに予定を組むのも面白いだろう。
これまでに案内したゲストにとっては、やはり村で見ることのできないカレン族以外の民族の姿が珍しかったようだ。
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