タカちゃんの絵日記

何気ない日々の感動を、スケッチと好きな音楽と、そして野鳥写真を。。。

 ~~「四海波静」  (茨木のり子詩集より)~~

2016-12-16 | 風景

 

 

冬の日本海

今日は少し暖かい日となりましたが、季節は冬、海辺に出て行くと風も強く、海は結構時化ています。        これが冬の日本海、北の国ではもっと厳しい海が広がっていることだろうな~と思いつつ。         これは、先日の雨風の強かった日に、久し振りに「時化の海でも見に行って見るか。」と思い立って海に向かった。        その際に、車窓から眼下の荒れ狂う海を眺めながら、一時間ほどかけて、パステルで一気に描き上げた絵です。        今日は、その絵を取り出して、少し加筆して仕上げました。        ちょうど今、あるブロガーさんの愛読書である、茨木のり子さんの詩集を読んでいますが、その中から、海に関る詩を二題取り上げて味わってみた次第です。

波の音   (茨木のり子)
酒注ぐ音は とくとくとく だが
カリタ カリタ と聴こえる国もあって
波の音は どぶん ざ ざ ざァなのに 
チャルサー チャルサー と聴こえることもある                                                                                                                                                澄酒を カリタ カリタ と傾けて
波音のチャルサー チャルサー 捲き返す宿で
一人 酔えば                                                           なにもかもが洗い出されてくるような夜です
子供の頃と少しも違わぬ気性が居て
哀しみだけが ずっと深くなって

茨木のり子さんの詩は、人々の日常の一コマ一コマを丁寧に、優しい言葉ながらも、その事象の深奥、核心を鋭く突く詩が多い様な気がします。        さて、そんな中でこの「波の音」は、ひとり徳利を傾けながら、想いに耽る様を波によせて率直に心情が詠み込まれているのではないでしょうか。


「四海波静」  (茨木のり子)

戦争責任を問われて
その人は言った
そういう言葉のアヤについて
文学方面はあまり研究していないので
お答えできまねます
思わず笑いが込みあげて
どす黒い笑い吐血のように
噴きあげては  止り  また噴きあげる
三歳の童子だって笑い出すだろう
文学研究果さねば  あばばばばとも言えないとしたら
四つの島
笑(えら)ぎ笑(えら)ぎて  どよもすか
三十年に一つのとてつもないブラック・ユーモア
野ざらしのどくろさえ
カタカタカタと笑ったのに
笑殺どころか
頼朝級の野次ひとつ飛ばず
どこへ行ったか散じたか落首狂歌のスピリット
四海波静かにて
黙々の薄気味わるい群衆と
後白河以来の帝王学
無音のままに貼りついて
ことしも耳すます除夜の鐘

茨木のり子さんは、大正15年の生まれと言いますから、多くの国民が「天皇陛下万歳」と叫んで尊い命を落として行った、正にあの過酷な戦争の体験者なのです。        (その人:天皇)~「そういう言葉のアヤについては、私はそういう文学方面はあまり研究もしていないのでよくわかりませんから、そういう問題についてはお答えが出来かねます」(朝日新聞1975/11/1)         この天皇の言葉を茨木のり子さんは真正面から捉えて揶揄し、「四海波静」の中で天皇発言への憤りを・・・野ざらしのどくろさえカタカタとと笑ったのに・・・と、嘲笑と渾身の力を込めて批判を詩に詠んだのでしょうか。        戦争体験の世代が年々少なくなって行く中、まして今の若い人たちには想像すらできない「戦争」、人間の最も侵し、繰り返してはならない愚行だと、改めて教えてくれる詩だと思います。        奇しくも、昨夜はあの戦争の責任を問う『東京裁判』をTVで観ました。
 
 
 

「黒いオルフェ」:小野リサ

        


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (kao)
2016-12-16 10:24:34
茨木のりこさんはすごい
詩を読まれるのですね。
ドキドキしました。・
政治のこともまっこうから・・
すごいな~。戦争はだめですよね。
なにがあっても。
しけの海もすごい迫力でした・
詩にあっていました・お見事でした!!
返信する
kaoさん、こんにちは! (takaちゃん)
2016-12-16 13:57:05
茨木のり子さんは、素晴らしい詩人です。
もしkao さんが読まれていなかったら、
是非一読をお勧したいです。
私もブログで出会い、読んでみた次第で
す。
返信する
こんにちは。 (ゴマメのばーば)
2016-12-16 16:36:05
冬の日本海は、「ドドーン ドドーン」と、波が打ち寄せるのでしょうか。
海難事故があったようですが、不明の方々が早く見つかってほしいと、祈っています。
返信する
ば~ばさん、こんばんは! (takaちゃん)
2016-12-16 20:28:02
茨木のり子さんの詩集、ぽつらぽつらと
読み進めています。
読み応えがあるの言うか、強くに心に染
みて来る詩です。
返信する

コメントを投稿