一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

ムリヤリの旅・8

2013-01-21 01:23:50 | 旅行記・その他の地域
次の会津バスは17時05分である。このまま待合室でバカみたいに待つわけにはいかない。ここは駅まで歩いて帰る一手だ。私は半分放心状態のまま、観光案内所に入る。駅への方角を聞くと、中から「なんなら送っていきましょうか?」のありがたい言葉があった。もちろん、お言葉に甘える。
精悍なおじさんが運転を買って出てくれた。これから会津若松に向かうらしい。しかしクルマを用意するのに時間がかかり、私は気が気でなかった。
車中、芦ノ牧温泉の歴史を聞く。数十年前までは山に架かる橋がなく、人々は阿賀野川を行き来していたそうだ。新道ができたが旧道にも集落は残っており、路線バスは1日に数本、旧道を通るのだという。行きにバスが通った道が正にそうだった。
「今回は立ち寄り湯で来ました」と言うと、「次回はぜひ宿泊で」と返されてしまった。私は曖昧に頷くしかない。
駅の猫の話題になり、「いまは遊びに出ていて、いませんでした」と言うと、「巡回中です」と訂正された。駅長さんだから、猫ちゃんといえどもしっかり働いているというわけだ。
姉妹駅の「那珂湊にも行ってきました」と言うと、奥さんは那珂湊の出身とのこと。今回はどこまでも偶然が重なっている。
クルマは快調に飛ばし、5分足らずで駅に着いた。ときに16時21分。
駅舎に入り、おじさんには心からの礼を言う。北千住までの切符を買うが、3,930円だった。意外に高い。おじさんは駅の女性に一声掛けた後会津若松に向かったが、こんなにお世話になったのだから、ちゃんと外に出て最敬礼をすべきだった。
ホームに出ると、16時26分発の列車が来た。乗れると思わなかっただけに、感激もひとしおである。
17時14分、会津田島着。会津鉄道は、たいていここで列車を乗り換える。2分の連絡で出発する。会津高原尾瀬口から野岩鉄道になり、18時24分、東武鉄道・鬼怒川温泉に着いた。
ここから2分の連絡で、「特急きぬ138号」が接続している。これに乗れば20時22分、北千住に着く。しかし有料で、いくらかかかる。しかしこれに乗らねば、9時からの「ATARUスペシャル・第2部」は観られないのだ。
向かいのホームに、特急きぬ138号が入線した。中はガラガラである。特急券は乗車してから買えばいいから問題ないが、どうするか。しかし私は、そのまま列車内に残った。特急料金を惜しんだのだ。
18時26分、特急きぬのドアが閉まる。この瞬間、「ATARU・第2部」は冒頭から観られないことが確定した。
(おわり)
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ムリヤリの旅・7

2013-01-20 00:24:14 | 旅行記・その他の地域
6日(日)は朝8時半にアラームをセットしたが、8時ごろに目が覚め、けっきょくそのまま食堂に向かった。無料の朝食も善し悪しで、無料だから食べにいくが、有料なら素泊まりとし、その時間も睡眠に充てたいところである。
朝食は焼きたての菓子パンが数種類。ドリンクはファミレスのセルフ方式だった。パンを3つ取って、コーヒーで食事。美味しくいただいて、9時すぎにチェックアウトした。
表は雪がうっすらと積もっていた。東北地方まで来たことを実感する。
駅までは徒歩で20分余。駅前のホテルに泊まった場合の損得計算は、微妙なところだった。
きょうは会津若松を回ろうと思う。会津若松といえば鶴ヶ城、飯盛山、さざえ堂などが有名だが、私は恥ずかしながら、鶴ヶ城しか観光したことがない。
さざえ堂は江戸時代に造られたもので、堂内が回廊になっているのが特色だ。外観も螺旋状で、このような建築物は世界的にも珍しい。歴史的建造物は私も興味があるので、今回は見ておきたいと思った。
駅構内のJR料金表を見ると、ここ郡山から会津若松までは1,110円、そのふたつ先の西若松まででも、同じ1,110円だった。ちなみに白河から郡山までは650円。郡山から西若松までは通しで買って1,890円だったから、これでは損をしているようにも思える。だが会津若松から西若松までは180円だから、ここまで来てようやくトクになる仕組みだ。
9時45分発の磐越西線に乗る。列車が進むごとに雪が深くなり、旅情が高まる。10時58分、1分遅れで会津若松に着いた。
初日の鹿島神宮と、きょうの会津若松。このふたつの駅名を見て何となくピンときた人は、40代以上だ。あだち充の名作「みゆき」に登場するヒロインが、若松みゆきと鹿島みゆきだった。
駅中の観光案内所で、さざえ堂までの道順を聞く。旅先では、駅の観光案内所が便利だ。周辺の観光パンフレットが充実しているし、滞在時間を告げれば、それに見合ったプランニングもしてくれる。
さざえ堂は駅から一本道で、飯盛山の中腹にあるとのことだった。どちらもかなり有名なのに、いままでその場所さえ知らなかった。さざえ堂近くまで観光用バスが通じていたが、私は徒歩で向かうことにした。
「きょうから『八重の桜』が始まりますので、ごらんください」
と、最後にお姉さんは言った。NHK大河ドラマはきょう6日から、会津出身の新島(旧姓・山本)八重の生涯を描く「八重の桜」を放送する。そう言われてみれば、駅構内は「八重の桜」一色だ。今年は会津若松が熱くなるだろう。
とはいうものの、ヒロインの綾瀬はるかはあまりタイプではない。W氏はファンだと思う。
駅を出て雪道をそろそろ歩くが、この感じ、嫌いではない。
飯盛山の麓に着く。中腹の墓地までは有料のエスカレーターが通じているが、私はもちろん徒歩である。お墓にお参りをした後、会津若松の街並みを眺めた。
そこから右手に下っていくと、さざえ堂があった。なかなか年季の入った建物で、大いに興味を引かれる。しかし拝観料が400円というのにのけぞった。
無料で中に入れるとは思ってなかったが、400円は私の予想を越えている。300円でどうか、というところである。かなり迷ったが、今回は拝観せず素通りした。
さて、そろそろ昼食である。行きの道すがら、うまい蕎麦を食べさせてくれそうな店があったので、入る。店頭にメニュー表がなかったのがアレだが、駐車場に多くのクルマが駐まっていたので、法外な値段は取らないだろう。
店の名は「そば御膳」。入口で靴を脱いで入る方式だ。ゆったりした掘りゴタツに入り、店の名と同じ「そば御膳」を頼む。突き出しに落花生が出てきたが、これは珍しい。「そば御膳」はざるそば、天ぷら盛り、茶わんむし、煮物、お新香、ごはん。主役のざるそばは手打ちで、一口すすると香りが高かった。そして甘い! ここの蕎麦は本物だと思った。天ぷらもカラッと揚がっていて、これで1,280円はお値打ちであった。
駅前に戻るが、東京までの高速バスがある。めんどうだから帰京しちゃう手もあるが、やはり温泉に入りたいところである。
会津若松からは只見線と会津鉄道に乗って、芦ノ牧温泉に向かおうと思う。いや本当は大内宿に行きたいのだが、最寄駅の湯野上温泉から路線バスがないため、タクシーを利用するしかない。それが数千円かかるとかで、どうしても二の足を踏んでしまうのだ。今回もそうだった。
車内で精算があった。JR西若松までの切符は持っているので、そこから乗り越しで、400円。芦ノ牧温泉駅には14時07分に着いた。構内は畳敷きの待合室もあり、風情がある。傍らのテーブルには猫の写真がいっぱい並べてあるが、ここの駅長は猫ちゃんらしい。
温泉街にはバスで行くが、バス停で時刻を確認すると、次は14時42分である。私は駅にもどり、一休みする。と、ここ芦ノ牧温泉は、茨城県の那珂湊と姉妹駅です、のお知らせがあった。那珂湊? おととい訪れた駅ではないか。これはずいぶんな偶然があったものだ。
嘱託の駅員さんに聞くと、「猫つながり」とのこと。何と那珂湊駅も、猫の駅長さんがいたらしい。私は構内に入らなかったので、気付かなかった。
さて、14時42分の会津バスに乗る。先客は3人しかいなかった。
バスは旧道を通る。集落があり、崖スレスレのところをバスは通る。温泉街までのバス料金は170円だが、運転手さんの高度なテクニックとスリルを味わえて、これは安いと思った。
14時59分、バスは4分遅れで、温泉街に着いた。立ち寄り湯を探すが、なかなかない。けっきょくいちばん最初に目についた、芦ノ牧プリンスホテルの温泉に入ることにした。
フロントで600円を払い、浴場に案内してもらう。脱衣所で裸になると、キン○マが縮み上がっていた。皮膚が厚くなって、中身を守っているのだ。
露天風呂に入るが、熱くもなくぬるくもなく、心地いい。浴室には誰もおらず、貸し切りだ。これを最高の贅沢という。
温泉から上がると、廊下に白牛乳の販売機があったので、反射的に買う。温泉と牛乳はセットで、「▲2四歩△同歩▲同飛」みたいなものだ。
「白牛乳 腰に手を当て 一気飲み」
美味しくいただきました。
傍らに、足ツボを刺激する機械が置いてあった。試してみるが、これが全身を刺激して、すこぶるよく利いた。
すっかりあったまって、あとは16時00分のバスで帰るのみである。ホテルの向かいに味のあるバス待合室があり、そこで待つ。しかし16時を過ぎても、バスが来ない。ここは始発の次だから、遅れるわけがないのに、おかしい。
芦ノ牧温泉駅からは16時26分の列車が絶対で、それに乗れば夜9時からの「ATARUスペシャル・第2部」が観られる。しかし時刻は、もう16時10分にならんとしている。私は時刻表に記されてあるバス会社に電話を掛けた。
「かくかくしかじか!」
「時刻の横に何か書いてありませんか? ◆とか…」
応対の女性が事務的に言う。
「ああ、書いてありますよ。でも◆は12月31日から1月3日までの運休ですよね。きょうは6日だからあるじゃないですか!」
「では『平』の文字はありませんか?」
「ありますよ! それが何か?」
「それは平日のみの運転で、土日は運休です」
「あっ!!」
ガチャ!
しまった、私としたことが!! 「平」は、沿線の集落名だと思っていた。これは平日の平か!! 何てこった!!
これで、次の列車までに駅に着くのは事実上不可能になった。私はうなだれる。
ところが16時26分、私は会津鉄道の上り列車に乗っていたのだった。
(つづく)
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1月16日のLPSA芝浦サロン(後編)・次回は2月15日

2013-01-19 02:04:14 | LPSA芝浦サロン
「まだ駒込(ジョナサン)に行ってるの?」
と藤森奈津子女流四段。
もちろんである。毎月開催していますと言ったら、不思議な顔をされた。ジョナサンの利点はいくつもあって、まず、恐る恐るながら将棋が指せるのが大きい。アルコールを除けば、お腹いっぱい食事をしても2,000円前後。料理はかわいいウエイトレスさんが運んでくれ、飲み物も数種類ある。誰の目も気にせず将棋界内外の噂話ができるし、24時間営業だから閉店を気にする必要もない。私は自宅からも近いし、本当にいいことづくめなのである。
きょうは中井広恵女流六段と大庭美樹女流初段の対局があった。LPSAに連絡があり、両者とも勝利を収めたという。まずはめでたい。
さて、Tod氏の将棋は。

(再掲)
上手(飛車落ち)・松尾女流初段:1二香、2四歩、3二金、3四歩、4四銀、4五歩、5三角、5四銀、6二金、6三歩、7二玉、7三歩、8一桂、8三歩、9一香、9四歩 持駒:銀
下手・Tod:1六歩、1七香、2六歩、3六歩、3七銀、3八玉、4七金、4八金、5六歩、7九飛、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:桂2、歩5
(△4四銀まで)

ここでTod氏は▲5五桂。一見して意味不明の手だ。以下△3五歩▲2八桂△3六歩▲同桂△3五銀▲2九飛△4六銀打と進み、松尾香織女流初段が攻め倒した。
感想戦。▲5五桂のところで、私は▲7四歩を提示した。▲7三歩成△同金▲7四歩は許せないので△7四同歩だが、▲同飛△7三歩▲5四飛で銀得。以下△4三金▲5三飛成△同金(△同銀)で、「角、銀、桂2」を持ってどうか。
これは意外に下手もむずかしいか…というところで松尾女流初段が、▲5三飛成で▲5五歩を示した。飛車を取れ、という手だ。△5四金なら▲同歩△7五角▲4四角で下手一手勝ち。飛車を取らなければ▲5六桂の追撃があり、下手は手に困らない。なるほどこれはいい手があったものだ。
▲7四歩と▲5五歩。私と松尾女流初段のコンビネーションで、下手を優勢に持っていったのだった。
「どうもヒトの将棋は手が見える。どうして自分のときは、指した直後に好手に気付くんだろう」
とひとりごちたら、藤森女流四段が大きく同意してくれた。そこで私は考える。
これからは下手多面指しのとき、下手がお互いに隣の人の駒を動かすようにしたらどうか。これなら局面も客観的に見えてよいのではなかろうか。
「次は15日だから」
と松尾女流初段。来月の芝浦サロンの担当日らしい。「次も来てください」だとこちらも曖昧に頷くことになるが、具体的な日時を指定されると断りにくいものだ。
15日はバレンタインデーの次の日だから微妙だが、松尾女流初段がチョコレートを持ってくる可能性もある。私の気力の問題もあるが、精神的に参っていなければ、来月も参加しようと思う。そして松尾女流初段のほうもそのころまでには、対局で勝ち星を稼いでおいてもらいたい。
藤森女流四段が、W氏やHon氏が元気かどうか聞いてくる。両者とも金曜サロン時代のレギュラーだったが、最近は芝浦に顔を見せてないようだ。私は貧乏だから将棋教室のかけもちはできないが、ふたりは違う。彼らがサロンに戻ってくることを祈る。
これにてきょうの対局は終了。Tod氏と軽く食事をすることにした。Tod氏の意向で、芝浦サイゼリヤに出向く。当然サイゼリヤも久しぶりだ。
店ではミートソースパスタとドリンクを頼んだ。ふたりとも偶然同じメニューで、それを向かい合わせで黙々と食べている図は冴えない。
横のテーブルでは、男子高校生2人と女子高生1人がテーブルを囲んでいる。青春真っ只中だ。それに比べて私たちは、お互い未来がないね、などと愚痴をこぼしあっている。本当に冴えない。
と、先の女子高生が突然スクッと立った。いまの女子高生はミニスカートだから、腿の裏側がハッキリ見える。そのまま向かいの男子のほうに屈んでいく。
ええ!? そのままスカートがズリ上がる。腿が…腿が…このままいったら下着が見えちゃうんじゃないか!?
というところで、私はなぜか目を伏せてしまった。この位置からではTod氏に彼女が見えず、私だけ愉しんでは申し訳ない、という思いもあったが、単純に、このお宝は見てはいけないと思ったのだ。
このあたりが、私の甘いところなのだろう。高校時代の文化祭で、某女子校の将棋部員に声を掛けられなかった。あのときから私は、ちっとも成長していないのだった。
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1月16日のLPSA芝浦サロン(前編)・松尾香織女流初段復帰

2013-01-18 00:04:31 | LPSA芝浦サロン
一昨年12月2日のLPSA芝浦サロンは、松尾香織女流初段の担当だった。私もお邪魔して指導対局を受けたが、松尾女流初段は調子が悪そうで、そのとき行っていた「芋焼酎勝負」も、「もう私の負け」と投げやりになっていた。
松尾女流初段が休場を表明したのはその直後。びっくりした半面、あの体調ならやむなしと、妙に納得したところもあった。
その松尾女流初段が昨年末に休場を解いた。私は松尾女流初段がこのまま休場を続けるか、最悪引退も覚悟していたので、これはうれしい誤算だった。
そして松尾女流初段は今月の16日に、芝浦サロンの指導対局にも名を連ねたのである。
松尾女流初段は、「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」の5位である。「松尾香織復帰記念」として、これは芝浦サロンに行かねばと思っていた。
さて当日になったが、外は2日前の雪が残りすこぶる寒い。仕事を終えてからこの寒空を田町まで向かうのが億劫に感じ、予約の電話を入れるのに躊躇した。サロンに入れば現実的に出費もあるし、いっそのこと自宅でテレビでも観る方が賢明では…の思いもよぎった。
しかし、私は昨年の12月2日から駒を触っていない。どうせ指し初めをするなら、「大野教室」の大野八一雄七段より、女流棋士のほうが縁起がいい。
後悔するなら行ってからでよい。私はLPSAに電話を入れた。6時ごろ入る予定ですと言うと、聞き覚えのない声の女性から、では7時半の回にお越しください、と返された。ちょっと杓子定規な応対だな、と思った。
午後5時に仕事を終え、芝浦に向かう。芝浦サロンは昨年の3月以来、実に9か月ぶりである。田町駅で下車したがサロンには直行せず、「小諸そば」に入った。芝浦の小諸そばも久しぶりである。二枚もり・290円はもちろん健在で、これをチョイスする。
ゆでたてを冷水でしめた、つやのある蕎麦が出された。立ち食い蕎麦とは思えぬ完成度だ。蕎麦にワサビをつけ、そばつゆに付けてズルズルッ。うまい!! この蕎麦が毎日食べられる芝浦の人は幸せである。
いよいよサロンに入るが、緊張の極みだ。ドアを開けると、セミロングの髪をストレートに伸ばした女性が、初老の男性に指導対局中だった。貞子にも見えるが、あれが松尾女流初段だろうか?
時刻は6時5分。きょうの手合い係は藤森奈津子女流四段。3,500円の席料を払うと、あの彼女がこちらを見た。やはり松尾女流初段だった。懐かしい! 彼女はもともと快活なふうではなかったからアレだが、一応は元気そうで安心した。
予約は7時半の回だが、ほかに客もいないので、前倒しして対局をお願いする。
「髪、ストレートにされました?」
「私クセっ毛だから…」
松尾女流初段はそう答えつつも、うれしそうだ。髪型の変化を褒めると女性はよろこぶらしいが、確かにそうだ。
と、しばらくして松尾女流初段が
「少しふくよかになられました?」
と付け加えた。
ギクッ!! 再会早々ご挨拶ではないか。しかしこれが厳しい現実なのだ。
「アイスクリームを食べすぎまして…」
私は妙な言い訳をする。でも、頭の毛に言及されないだけマシだった。肥満は痩せる可能性があるが、抜け毛はよほどのことがない限り再生しない。
対局開始。松尾女流初段はブルーのアイシャドーを引いている。落ち着いた雰囲気だが、精気が抜けたようにも見えてしまう。
藤森女流四段がクジ箱を持ってきた。今月はキャンペーンとして、お年玉くじがあるのだ。1等は榧卓上盤である。1枚引いたら6等だった。いわゆる末等で、私はグッズ箱の中からAKB48の「永遠プレッシャー」のCDをいただいた。
「マッカラン勝負はどうなったっけ?」
と松尾女流初段。
「もちろんやってますよ。この将棋もそうですから」
松尾女流初段とは芋焼酎を懸けて一昨年から12番勝負を始めた。だがおととしは松尾女流初段に金曜日の登板があまりなく、昨年はお互い「休場状態」だった。だが私の中では、まだ芋焼酎勝負(その後、ワインに変更)は続いているのであった。私は改めて、松尾女流初段に継続の宣言をした。
その後も当たり障りのない会話をしながら指し手を進める。松尾女流初段は休場中、何をしていたのか。東京にいたのか。故郷の下蒲刈島に帰っていたのか。それとも各地を放浪していたのか。
ここでそれを聞く絶好のチャンスではあるのだが、それはヤボというものである。
将棋は私の大作戦負け。投了も考えていたのだが、それはあんまりなので指し継いでいたら、一瞬だけ逆転のチャンスが訪れた。しかしそれを見逃して、最後は無残な負け。松尾女流初段は、「大沢さんにお年玉をいただいちゃいましたー」とか無邪気によろこんでいるが、こっちはおもしろくない。
感想戦をやっていると、Tod氏が現れた。Tod氏は私を見るなり「帰らないでよー」と言う。もとより私も、1局だけで帰るつもりはない。おかわりの1,000円を出して、2局目をお願いした。ちなみにこの時点で、「大野教室」の席料を上回った。
Tod氏もお年玉くじを引く。やはり6等で、彼は歯ブラシを選んだ。しかしこれは未使用である。渡部愛女流3級か島井咲緒里女流二段が一度でも使用してくれたら、特等になるのだが…。そんな意味のことを言うと、藤森女流四段が「まだそういう話題をする時間じゃありません」とばかり、「シーッ」のポーズを取った。
私の将棋は、序盤の作戦が当たって優勢。しかし▲2四歩の突き捨てを怠ったため、意外に難しい戦いになった。最後は粘りを欠き50手までで投了。
スタッフのS氏も交えた感想戦が終わると、7時50分である。いま帰れば「相棒」が観られるのだが、Tod氏を置いて帰るわけにもいかない。
そのTod氏の局面は、下のようになっていた。

上手(飛車落ち)・松尾女流初段:1二香、2四歩、3二金、3四歩、4四銀、4五歩、5三角、5四銀、6二金、6三歩、7二玉、7三歩、8一桂、8三歩、9一香、9四歩 持駒:銀
下手・Tod:1六歩、1七香、2六歩、3六歩、3七銀、3八玉、4七金、4八金、5六歩、7九飛、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:桂2、歩5

△4四銀まで。ここで下手の次の一手は。
(つづく)
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ムリヤリの旅・6

2013-01-17 00:10:05 | 旅行記・その他の地域
「チャンネルが設定されていません」
な、何ィィィ!? 黒い画面に白抜きの文字でそう表示され、私は目を剥いた。バ、バス旅が観られないの!?!? 私は愕然としつつ、何回も「7」を押したが、当然ながら結果は同じだった。ややややや…何てこった!!
旅先でのテレビは地方局も乱立しているので、観られない番組があるのは覚悟している。東京キー局の中で、最も不安なのがテレビ東京であった。しかし「バス旅」は全国を踏破しているし、前日の宿でもテレ東系は観られた。よってここ福島県でも安全とフンでいたのである。それが甘かった。
いつもならこんな事態も想定して、自宅でビデオの録画予約をしていたのだが、今回は年末年始の番組を予約しすぎて、ハードディスクが満杯になってしまい、それが適わなかったのだ。まったく間が悪いとしかいいようがない。
しかしそれでも不満は残る。このホテルはエレベーター前に新聞が置かれており、客は無料で一部いただける。そのテレビ欄を見ると、テレ東系の番組はしっかり掲載されていた。とするならば、ちゃんと設定をしていないホテル側の怠慢ではないのか!? 駅前の「郡山東口」だったら設定されていたのではないか!?…とグチはどんどん出て来るが、詮無い。
とにかくこうなってはお手上げである。まさかフロントに電話して文句を垂れるわけにもいかない。私はただただ、自分の愚かさを呪うしかないのだった。
またこういうときに限って、ほかの番組もおもしろくない。となれば、有料ビデオを観るしかない。喉が渇いたので飲み物を買いに行くことにしたが、表に出たついでに、カード(実際は、4ケタの暗証番号が書かれた印画紙)も購入した。
部屋に戻って、番号を入力した。例によって、ハードディスクに記憶された番組をチョイスして観るという方式である。今回も一般映画と成人映画があり、成人映画は「今月の入荷作品」「女優」「バラエティ」「フェチ」に分かれ、それぞれ6本、32本、33本、35本が収録されていた。ただ実際は、重複している作品もあるので、実数はもっと少なかった。
早速1本観てみるが、まず、画質が悪いのに閉口した。現在テレビはほとんどが薄型で画質も格段によい。しかし肝心のソフトがそれに対応しておらず、画質の悪さばかりが目立ってしまうのだ。
リモコンでは32倍速だったが、これも頗る動きが遅い。こっちは女優のどうでもいい会話はすっ飛ばし、メインを観たいのだ。しかしそこまでいくのにけっこう時間がかかる。
また女優の質もよくない。別に名のある女優を出せとは言わぬが、十人並くらいの女優は揃えられないものか。ちょっとブサイクすぎる!
話のスジもどうかと思う。たとえば痴漢バスの映画で、乗客のほとんどが痴漢で、女性が脱がされてしまうのがあるが、こんなこと実際はありえないでしょう!? ウソでしょう!? いくらフィクションでも、それなりのリアリティは出してもらいたいのである。
失敗だった…。これなら、ビデオなど観ないほうがよかった。そもそもパソコンがあるのだから、たっぷりある夜の時間を利用して、将棋ペン倶楽部用の原稿でも書けばよかったのだ。
またテレビだって、9時からは「西村京太郎のトラベルミステリー」や「ダブルフェイス」など、おもしろい番組がたくさんあったのだ(もっともこれらは、自宅のビデオに予約録画済み)。しかしここでも話が戻るが、ビデオ券を購入してしまったため、出費のモトを取るべく、成人映画を観続けるしかなくなってしまったのだ。
さらに書けば、全国の「α-1」グループの無料パソコンのほとんどが、パソコン画面はテレビ画面と共用になっていて、ここ「郡山」もそうだった。つまり成人映画を横目で観ながらブログを書くこと、という裏技さえ適わなくなってしまったのである。テレ東が観られないせいで、完全に歯車が狂った。
私は数あるビデオソフトの中から観賞に堪えうるものを選び、無聊を慰めたのだった。
けっきょくきょう(5日)は、午前3時に就寝した。
(20日につづく)
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